売上が前の年より減ったのに、営業利益は2倍以上に膨らむ。決算の見出しだけを見ると、首をかしげる人もいるだろう。
ゲーム機とソフトで世界を相手にする任天堂(7974)の、2027年3月期1Qがまさにその形だった。
一見矛盾した数字の裏には、同社ならではの稼ぎ方の特徴がある。株価の動きとあわせて順に見ていきたい。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
この記事の3つのポイント
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①2027年3月期1Qは売上高が前年同期比9.5%減の一方、営業利益は150.5%増、純利益も大きく伸びた。 -
②減収増益の背景には、利幅の大きいソフトの構成比上昇と、米国の関税還付という一時要因がある。 -
③自己資本比率76.5%と厚い財務を土台に、新型ゲーム機の普及が利益を押し上げる局面にある。
1カ月で上昇した株価と、高いバリュエーション
任天堂の株価は、この1カ月で一段と水準を上げた。7月中旬に7,000円台だった終値は、8月14日に8,900円まで上げている。1カ月で3割近い上昇だ。
8月14日は前日から7%近く上げた。この日は主力株に買いが広がった地合いも支えになったとみられる。
株価収益率(PER、株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標)は直近時点で33倍台、PBRは3.5倍と、いずれも高めの水準にある。利益の絶対額が大きい会社にこの倍率が付くのは、市場が新しいゲーム機の普及に期待しているからだと考えられる。
減収でも営業利益が2.5倍になった理由
2027年3月期1Qの売上高は5,178億円で、前年同期比9.5%減となった。ところが営業利益は1,425億円と、150.5%の増加である。経常利益は2,061億円、純利益は1,474億円と、いずれも大きく伸びた。
減収と増益が同居したのはなぜか。会社の説明によると、ソフトウェアの販売が堅調で、売上高に占める構成比が高まったことが効いた。加えて、売上原価に計上していた米国の関税の還付を受けたことも利益を押し上げたという。
数字にもそれは表れている。売上総利益は2,813億円で、粗利率は54.3%と前年同期の32.4%から大きく改善した。ソフト中心の売上構成が、利益率を一段引き上げた格好だ。
新しいゲーム機は発売から2年目に入り、ソフトの販売も積み上がっている。ハードを普及させ、利幅の大きいソフトで稼ぐ。任天堂の収益構造がはっきり出た四半期といえる。
筆者コメント
減収なのに増益、という一言だけを取り出すと違和感が残る。だが中身を開けると、任天堂の稼ぎ方がよく見える。
ハードは普及の入り口で、利益の本体は後から売れるソフトにある。だから発売直後より、2年目以降にじわりと利益率が上がることは珍しくない。
今回の粗利率の改善は、その典型と読み取れる。関税還付という一時的な追い風もあった点は、割り引いて見ておきたいところだ。
