2026年7月に厚生労働省から「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」が公表されました。物価上昇のニュースが続く中、シニア世代の収入と生活費のリアルなバランスに改めて注目が集まっています。
今回は最新の公的データと年代別の家計収支を振り返りながら、老後の安心に向けた3つの準備ポイントを解説します。
- シニア世帯の収入における公的年金の割合
- 60代後半から75歳以上までのリアルな月の生活費
- 老後の不安を解消するための資産と保険の見直しポイント
1. 公的年金だけで暮らすシニア世帯は約4割?収入の実態とは
厚生労働省が公表した同調査から、高齢者世帯(65歳以上の人のみ、または18歳未満の人が加わった世帯)の収入の実態を見ていきましょう。高齢者世帯全体の平均的な所得構成を見ると、収入の61.3%を「公的年金・恩給」が占めています。次いで「稼働所得(お仕事による収入)」が25.9%、「財産所得(利子や配当などによる収入)」が5.8%となっています。
しかし、世帯ごとの状況を詳しく見ると少し景色が変わります。「公的年金・恩給を受給している世帯」のうち、総所得に占める年金の割合は以下の通りです。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
1.1 【総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成】
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:41.3%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:17.1%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:14.1%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:13.6%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:9.7%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.2%
このようにシニア全体で見れば稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に絞ると、その半数近くが公的年金収入のみに頼って生活しているという実態が浮き彫りとなっています。
2. 【年代別】60代後半から75歳以上までの月の生活費はいくら?
一口に65歳以上といっても、年代により生活費は変化します。総務省統計局の「家計調査報告(2025年平均結果)」から、年代別の1カ月あたりの収支を見てみましょう。
2.1 60歳代後半・70歳代前半・75歳以上の実収入
- 65~69歳:29万110円(うち社会保障給付20万6222円)
- 70~74歳:28万7725円(うち社会保障給付22万4980円)
- 75歳以上:25万2798円(うち社会保障給付21万1289円)
収入をみると、どの年代も年金は21万円前後となっています。
しかし年金は加入状況により個人差が大きいので、必ず自身についてねんきんネットなどで年金見込み額を確認しましょう。
2.2 60歳代後半・70歳代前半・75歳以上の支出合計(非消費支出・消費支出)
- 65~69歳:34万1397円(4万4400円、29万6997円)
- 70~74歳:32万4971円(3万9127円、28万5844円)
- 75歳以上:28万23円(3万1563円、24万8460円)
一般的には年齢が上がるにつれて支出が減る傾向にありますが、ご家庭の状況によって差が生じます。
3. 50代後半に多い「老後の生活資金や収入減への不安」への戸惑い。ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が伝えたいこと
還暦という節目が近づくにつれ、老後の生活資金に不安を感じるという方は少なくありません。十分な貯蓄がない、あるいは資産運用をどうすべきか迷っているという声は、実際の相談の場でもよく聞かれます。
3.1 50代後半に多いお悩み相談は「老後の生活資金や収入減への不安があるものの、どこから手をつけて良いか分からない」

将来の家計の全体像が見えないまま、ただ不安だけを抱え込んでいるという方は多いものです。
3.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が回答】資産と保険のバランスを整理し、安心できる老後へ
どの程度の資金を果たして老後に準備しておけば良いかわからないことが、漠然とした老後の不安に繋がっているという方が多いでしょう。将来受け取れる年金額や、今ある資産を把握することで、老後を迎えるまでにあとどのぐらい準備しておくと良いか見えてきます。
将来への資金計画を立てることや現在地を確認することが、安心できる老後への出発点になります。
3.3 ポイント1:運用資産と預貯金のバランスを見直す
まず見直したいのは、運用している資産と預貯金などのバランスです。この方はNISAで投資信託を運用していましたが、「年齢を重ねるほど、預貯金や債券といった安定資産をしっかりと持つことが重要になる」と気づいたように、リスクの取り方を見直すきっかけとなりました。若い頃は株式中心の運用で資産を増やすことを重視しがちですが、還暦前後からは、相場の下落リスクに備えて安定資産の比率を高めていく視点が大切になります。すべてをリスク資産に回すのではなく、ご自身の年齢や今後のライフプランに合わせて、預貯金などとのバランスを整えていくことが求められます。
3.4 ポイント2:長年加入している保険の現状を確認する
そのうえで、長年加入している保険の現状確認も欠かせません。この方は複数の保険に加入していましたが、「先のことすぎて分かりにくいものの、保障内容と保険料のバランスを考えて見直したい」と話すように、一つひとつの契約内容を紐解いていきました。加入したままになっている個人年金保険やがん保険について、現在の解約返戻金や保障内容を確認することで、残すべきものと見直すべきものの仕分けができるようになります。保険料の負担が将来にわたってどれくらいになるのかを把握し、本当に必要な保障を見極めることは、老後の家計をスリム化するうえで有効な手段となります。
3.5 ポイント3:保険料の総額に目を向ける
また、見直しを進める過程で、保険料の総額に目を向けることも大切です。この方も手続きを進めるなかで、「保険料の累計を見るとまとまった金額になるので、少し不安を感じる」と気づいたように、月々の支払いは少額でも、長期的に見れば大きな支出になります。保障の必要性と保険料の負担が見合っているかを冷静に判断することが、家計の改善につながります。
老後資金への不安は、全体像が見えないことから大きくなるという方が多いようです。漠然と焦る前に、まずは現在保有している資産のバランスや、加入している保険の内容を一つずつ整理してみることが、安心できる老後への出発点になります。
4. まとめにかえて
今回はシニア世帯の年金事情と家計収支、そして老後への準備について解説しました。
最新のデータからもわかるように、年齢とともに収入や支出のバランスは変化していくため、早めに現状を把握することが大切です。
漠然とした不安は、具体的な数字を知ることで少しずつ安心へと変わっていくはずです。一人で抱え込まず、必要に応じて専門家に相談するのもよい選択だと感じます。
参考資料
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
菅原 美優



