3. 【コラム】年金受給世代が直面する「地域別の高齢化格差」

3.1 お住まいの地域で、こんなに違う「高齢化率」

年金生活を考えるうえで、受給額と同じくらい目を向けておきたいのが「住んでいる地域の高齢化の進み具合」です。内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、都道府県ごとの高齢化率には大きな差があります。たとえば、秋田県と東京都ではすでに15ポイント以上の開きがあり、2050年(令和32年)には秋田県で約半数が高齢者になると推計されています。

都道府県別高齢化率の推移3/4

表1-1-10 都道府県別高齢化率の推移

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書」表1-1-10

令和32年には秋田県で約半数が高齢者になる一方、最も進行が緩やかな東京都でも約3割(29.6%)に達する見込みです。

3.2 大都市圏も「他人事じゃない」シニア世代の増加

「高齢化は地方の問題」と思われがちですが、実は今後の高齢化率の伸び幅が最も大きいのは、東京近郊などの「首都圏のベッドタウン」です。大都市圏とその周辺でもシニア人口が急増し、医療機関や介護施設の不足、交通インフラの維持といった問題が懸念されています。

都道府県別高齢化率の推移(首都圏箇所のデータ)3/4

表1-1-10 都道府県別高齢化率の推移(首都圏箇所のデータ)

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書」表1-1-10

月15万円という一定の年金収入が確保できたとしても、お住まいの地域によって利用できる行政サービスや生活を維持するためのコストは大きく変わる可能性があります。今後の年金生活は、手元の受給額だけでなく「どこでどう暮らすか」という環境面も含めて見据えておく必要があるのです。

3.3 老後の不安を解消する「今からでもはじめられる備え」

筒井 亮鳳
年金受給額の実態や将来の環境変化を踏まえ、今からできる備えを3つのステップで紹介します。

1. ねんきん定期便で「自分と配偶者の見込額」を知る

まずは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」やインターネットの「ねんきんネット」でご自身の正確な年金見込額を確認しましょう。ご夫婦の場合は、それぞれの見込額を世帯単位で合算することで、生活費のベースとなる金額が見えてきます。

2. NISAやiDeCoで「自分年金」を育てる

公的年金だけで生活費や医療費・インフラコストを賄うのが難しいと感じた場合は、私的年金の準備を始めましょう。NISA(運用益が非課税になる少額投資非課税制度)やiDeCo(掛け金が全額所得控除され、節税しながら老後資金を作る個人型確定拠出年金)を活用し、無理のない金額から資産を育てていくことが大切です。

3. 将来の「住まいと地域のインフラ」を見直す

老後も今の住まいで安心して暮らせるか、地域の医療や交通網はどう変わっていくかを元気なうちに考えておきましょう。必要に応じて、利便性の高いコンパクトシティへの住み替えなどを検討することも、年金生活を守る立派な自衛策となります。

4. まとめにかえて

今回は厚生年金の受給実態と、将来の年金生活を取り巻く地域格差の問題について解説しました。厚生年金を月15万円以上もらえる人は全体で49.8%にとどまり、男性68.8%に対して女性は12.3%と、これまでのライフスタイルの違いから大きな男女差が生じています。また、今後は首都圏近郊を含め全国的に高齢化が進み、住む地域によって生活インフラの維持コストが変わる可能性もあります。

年金の平均額という一時の数字に一喜一憂するのではなく、ご自身が受け取れる実際の見込額を把握した上で、世帯での備えや住環境の見直しを進めることが重要です。まずはねんきん定期便を開くことから、将来への第一歩を踏み出してみてください。

ご相談の現場でも、ご自身の年金見込額を知って「意外と少なかった」と驚かれる方は多くいらっしゃいます。特に女性は、ライフステージの変化によって厚生年金の加入期間が短くなる傾向にありますので、早めに現状を把握することが安心につながります。記事にある通り、老後の生活は受給額だけでなく、医療や介護サービスが受けやすい住環境であるかも重要です。お金の準備(NISAやiDeCoなど)とあわせて、ご家族で将来の暮らし方について話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。
村岸 理美

参考資料

筒井 亮鳳