「人生100年時代」が現実のものとなり、シニアの生き方そのものが多様化しています。

博報堂生活総合研究所が発表した最新の調査結果によると、いまや60歳代は「お年寄り」ではなく、「ミドル以上、シニア未満」のライフステージとされ、集団よりも「ひとり」の時間を楽しむなど、そのライフスタイルは大きく変化しています。

そうした自分らしいセカンドライフを満喫し、安定した生活を送るうえで、「公的年金」と「就労による収入」の2本柱がこれまで以上に重要性を増しています。

厚生労働省が公表した「令和7年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性が81.35歳、女性が87.33歳と、老後の期間が長くなっていることがわかります。

その一方で「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の4割超が収入のすべてを公的年金に頼っているという厳しい現実もあります。

物価高が続くなか、自分らしい生活を守るための対策への関心は高まる一方です。

このような状況下で、年金以外の収入確保のために「働く」という選択をするシニアが増えています。内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によれば、65歳~69歳の就業率は男性が6割超、女性は4割超にのぼります。

しかし、60歳を過ぎると賃金が低下するケースも少なくありません。現在、このように長く働きたいと考えるシニアを経済的に支援する国の制度が複数あり、特に雇用保険には働くシニアを対象とした手厚い給付金制度が用意されています。

ここで重要なのは、これらの給付金はすべて「自ら申請手続きをしなければ受け取れない」という点です。

この記事では、新しいシニアの生き方と働き方に触れつつ、見過ごされがちな「3種類の給付金」に焦点を当てて解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  60代は「ミドル以上、シニア未満」。自分らしい「ソロ活」などを楽しむには「公的年金」と「就業収入」の2本柱が重要
  •  雇用保険には働くシニアを対象とした3つの手厚い給付金があるが、すべて「要申請」
  •  健康なうちに制度をうまく使い長く働くことで、貯蓄を切り崩すタイミングを先延ばしにすることが、老後の生活防衛の鍵となる

 
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。

2. 筆者からのコメント

熊谷 良子

「定年後は家でのんびり」という時代は終わり、自分らしい生き方を模索するシニアが増えています。

その基盤となるのが「少しでも長く働く」という選択ですが、今回ご紹介するような手厚いサポートを知っているかどうかは、家計のゆとり、ひいては人生の自由度を大きく左右しますよ。

3. 働くシニアが申請できる!雇用保険の給付金3種類を徹底解説

働く意欲を持つシニア世代を経済的にサポートするために、雇用保険から支給される3つの給付金について、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

3.1 再就職手当:65歳未満の早期再就職を後押しする給付金

再就職手当は、失業状態にある方が一日でも早く安定した職業に就けるよう支援する制度です。このため、再就職までの期間が短いほど、給付内容が手厚くなる設計になっています。

再就職手当の支給要件

  • 対象となる方:雇用保険の基本手当を受け取る資格をお持ちの方
  • 受け取るための条件:基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っている状態で、雇用保険の被保険者として再就職するなど、所定の要件をすべて満たすことが求められます。

再就職のタイミングで変動する給付率

  • 給付額:就職日の前日における基本手当の支給残日数によって給付率が変わり、計算結果の1円未満は切り捨てられます。
    • 支給日数が所定給付日数の3分の1以上残っている場合:「支給残日数の60%」
    • 支給日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合:「支給残日数の70%」

再就職手当の計算式

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再就職手当の額

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

再就職手当を受け取った後、新しい職場で6カ月以上勤務し、その間の給与が離職前よりも低くなった場合には、「就業促進定着手当」の対象となる可能性があります。

3.2 高年齢雇用継続給付:60歳~65歳未満で賃金が減少した方向け

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で就労を継続する方を対象とした給付金制度です。

60歳時点の賃金と比較して、現在の賃金が75%未満に低下した場合、その低下した分の一部が支給される仕組みです。

高年齢雇用継続給付の対象者と条件

  • 対象となる方:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の方
  • 受け取るための条件:60歳時点の賃金と比べて75%未満の賃金で働き続けていること

高年齢雇用継続給付の支給額と支給率

  • 支給額:各月に支払われる賃金の最高10%(※)に相当する額が支給されます。
    ※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%

【2025年4月1日以降】高年齢雇用継続給付の支給率早見表

注意点として、老齢年金(厚生年金)を受け取りながらこの給付金を受給した場合、在職老齢年金制度による支給停止とは別に、年金の一部が支給停止となることがあります。その額は最大で標準報酬月額の4%(※)に相当します。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%

3.3 高年齢求職者給付金:65歳以上で離職した際に受け取れる一時金

高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険被保険者が離職し、失業状態になった場合に一時金として支給されるものです。

高年齢求職者給付金の受給に必要な2つの条件

  • 対象となる方:65歳以上の雇用保険加入者(高年齢被保険者)で、現在失業中の方
  • 支給される条件:次の2つの条件を両方満たす必要があります。
    1. 離職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あること
    2. 働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず、就職できていない「失業の状態」にあること

高年齢求職者給付金の支給額

  • 支給される金額
    • 雇用保険の加入期間が1年未満の場合:基本手当の30日分
    • 雇用保険の加入期間が1年以上の場合:基本手当の50日分

この給付金の大きな特徴は、一時金として一括で支給される点にあります。

これは、65歳未満の方が受け取る基本手当(いわゆる失業手当)が、原則として4週間に1度、失業認定を受けてから支給される仕組みとは異なります。