もうすぐ10月。上半期の区切りを控えて、金融機関から届く残高のお知らせや運用報告に目を通す機会が増える時期です。数字を並べてみて、始めたころに決めた割合とは違う姿になっていることに気づく、という声をうかがうのもこの時期に多くなります。

そもそも、まとまった金融資産を持つ世帯そのものは増えています。野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産1億円以上の世帯が165万3000世帯と推計され、推計が開始された2005年以降で最多となりました。全世帯に占める割合はおよそ3%です。

この記事では、この推計がどのような区切りで世帯を分けているかをまず確かめ、世帯数と資産総額が2005年からどう動いてきたか、調査が新しく名づけた2つの層がどのような人たちか、そして世帯年収ごとに資産の中身がどう違うかを順に見ていきます。手元の割合をどう扱うかを考える前に、数字の全体像をつかんでおくための記事です。

筒井 亮鳳
残高のお知らせが届く時期は、日頃の相談でも「思っていた形と違う」というお話をうかがう機会が増えます。金額が増えていても減っていても、気になるのは中身の割合のほうだ、とおっしゃる方は少なくありません。統計の数字は、自分の位置づけを測るためというより、割合という見方があることを思い出すための材料としてご覧いただくとよいかもしれません。

なお、純金融資産の区切り方や、資産を積み上げてきた世帯の特徴に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】

1. 純金融資産の区切りは5つ|1億円以上は165万3000世帯で全体の約3%

手元の資産の割合をどう扱うかを考えるとき、手がかりの1つになるのが、世の中でどのくらいの規模の金融資産がどう分かれているかという全体像です。資産を積み上げてきた世帯にどのような共通点があるかについては、LIMOの記事「資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】」でも取り上げています。

野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産保有額に応じて、世帯を5つの層に分けています。この純金融資産保有額は、世帯が持つ預貯金や株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの金融資産を合計し、不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた金額のことです。

1.1 区切りごとの世帯数と保有資産の規模を図で確かめる

5つの区切りは、親記事から次のとおり引用します。

  • マス層(3000万円未満)
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満)
  • 富裕層(1億円以上5億円未満)
  • 超富裕層(5億円以上)

この分け方では、純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義したうえで、世帯数や保有資産の規模についての推計データが公表されています。呼び名は統計をまとめるための区切りであって、暮らし方や家計の中身を表したものではありません。

このうち上位2つの層を合計すると165万3000世帯となり、全世帯に対する比率はおよそ3%と推計されています。推計が始まった2005年以降でみて、この合計値は最も多い水準にあたります。層ごとにみた世帯数についても、2013年以降は増える傾向が続いていると報告されています。

筒井 亮鳳
この5つは、統計を集計するために引かれた線です。どの区切りに入るかで、資産の中身をどう組み立てるかという考え方が変わるわけではありません。相談の場でも、確かめる順番は金額の大小によらず同じところから始まります。そのお金をいつごろ使う予定なのか、どのくらいの値動きまでなら受け止められそうか。その2つが、割合を考えるときの土台になります。

2. 世帯数と資産総額は2005年からどう動いたか|下がった年を挟みながら469兆円へ

純金融資産1億円以上を持つ世帯について、世帯数と資産総額が長い目でどう変わってきたかを見ていきます。ある一時点の数字よりも、並べて動き方を見たほうが読み取れることが増えます。

  • 2005年:86万5000世帯・213兆円
  • 2007年:90万3000世帯・254兆円
  • 2009年:84万5000世帯・195兆円
  • 2011年:81万世帯・188兆円
  • 2013年:100万7000世帯・241兆円
  • 2015年:121万7000世帯・272兆円
  • 2017年:126万7000世帯・299兆円
  • 2019年:132万7000世帯・333兆円
  • 2021年:148万5000世帯・364兆円
  • 2023年:165万3000世帯・469兆円

推移をたどると、世帯数と資産総額のどちらにも、世界金融危機や東日本大震災などの影響で一時的に数字が下がった局面が見られます。それでも期間全体を通してみれば、増加の方向に動いてきました。伸び幅がとくに大きいのは2021年から2023年にかけてで、同調査レポートはその要因として、株価上昇や円安による資産価値の増大などを挙げています。

この並びで目を留めておきたいのは、2009年と2011年に世帯数と資産総額の両方が前回を下回っている点です。まっすぐ増え続けてきたわけではなく、下がった時期を挟みながら今の水準に至っている、という読み方になります。値動きのある資産を持っていれば、割合も金額も一方向には動かないということが、この推移からも確かめられます。

2.1 【一覧表】2023年時点の階層別 世帯数と純金融資産の保有規模

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯・333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯・282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯・711兆円

純金融資産1億円以上の2つの層が持つ資産の合計は、前回調査より約3割ほど増加して469兆円になりました。全世帯の保有資産額の26.1%が、この2つの層に集まっている計算です。世帯数では約3%、資産額では26.1%という開きが、この分布の形をつくっています。

筒井 亮鳳
推移の表をご覧になって、下がった年があることに気づかれる方は多いです。手元の割合が今どうなっているかを確かめるとき、この下がった年に自分の資産がどう動いていたかを思い出しておくと、話が進みやすくなります。増えた年の記憶だけで組み立てた割合は、下がった局面で受け止めきれなくなることがあるためです。

3. 調査が挙げた新しい2つの層|働きながら資産を積み上げてきた人たち

今回の調査では、これまでとは経歴の異なる新しいタイプの層の出現が指摘されています。呼び名だけを見ると特別な人たちのように感じられますが、中身を読むと、勤め先の給与とその運用から資産を積み上げてきた人たちが中心です。

3.1 「いつの間にか富裕層」と「スーパーパワーファミリー」はどのような人たちか

一つ目の「いつの間にか富裕層」として挙げられているのは、40歳代後半から50歳代の一般の会社員が中心となる層で、株式投資などを重ねて資産を積み上げてきたタイプです。金融に関する知識は高い水準にあるものの、大口の資金を前提とした専門的な金融商品や高度な資産管理については不慣れな面もある、と指摘されています。

もう一つの「スーパーパワーファミリー」として挙げられているのは、年収3000万円を超える都市部の共働き世帯を代表例とする層です。20歳から30歳代のうちは教育費や住宅ローンなどの支払いに苦労するものの、昇格・昇給を経て40歳前後から資産が急速に増加する傾向がみられ、収入の高さを背景に50歳前後で純金融資産1億円以上へ届く可能性が高いとされています。

この2つの層に共通するのは、相続や親の資産に頼らずとも、自分自身のキャリア形成や金融知識によって資産を築いている点です。言い換えれば、長い時間をかけて積み上がった資産であるほど、始めたころに決めた割合と現在の姿とがずれている場面も生まれやすい、ということでもあります。

筒井 亮鳳
続けてきた期間が長い方ほど、増やす側の判断には慣れていても、いったん整える側の判断は経験が少ない、ということがあります。買い足すかどうかを決めることと、今ある割合をどう扱うかを決めることは、材料の集め方から違うからです。慣れていないこと自体は困った状態ではなく、時間をかけて確かめてよい部分だと考えています。

4. 年収の区分ごとに見た資産の内訳|値動きのある部分の割合が変わる区分はどこか

続いて、金融資産の中身が世帯年収によってどう変わるのかを見ていきます。参照するのは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」の結果で、そのうち世帯年収別の金融資産内訳にあたるデータを確かめます。

4.1 種類ごとの保有額を年収の区分で見比べる

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額3/3

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

金融資産保有額の合計を年収の区分ごとに見る

全国:1940万円

  • 収入はない: 634万円
  • 300万円未満: 858万円
  • 300~500万円未満: 1431万円
  • 500~750万円未満: 1755万円
  • 750~1000万円未満: 2222万円
  • 1000~1200万円未満: 2725万円
  • 1200万円以上: 5635万円
  • 無回答: -

値動きのない置き場としての「預貯金」

全国:745万円

  • 収入はない: 385万円
  • 300万円未満: 368万円
  • 300~500万円未満: 631万円
  • 500~750万円未満: 693万円
  • 750~1000万円未満: 908万円
  • 1000~1200万円未満: 1028万円
  • 1200万円以上: 1649万円
  • 無回答: -

発行体に貸す形をとる「債券」

全国:78万円

  • 収入はない: 7万円
  • 300万円未満: 36万円
  • 300~500万円未満: 54万円
  • 500~750万円未満: 58万円
  • 750~1000万円未満: 67万円
  • 1000~1200万円未満: 91万円
  • 1200万円以上: 343万円
  • 無回答: -

値動きを受け入れて収益を狙う「株式」

全国:433万円

  • 収入はない: 33万円
  • 300万円未満: 191万円
  • 300~500万円未満: 235万円
  • 500~750万円未満: 365万円
  • 750~1000万円未満: 434万円
  • 1000~1200万円未満: 572万円
  • 1200万円以上: 1792万円
  • 無回答: -

「投資信託」はどの区分でどれだけ持たれているか

全国:216万円

  • 収入はない: 153万円
  • 300万円未満: 79万円
  • 300~500万円未満: 167万円
  • 500~750万円未満: 189万円
  • 750~1000万円未満: 238万円
  • 1000~1200万円未満: 292万円
  • 1200万円以上: 682万円
  • 無回答: -

値動きのある3種類を合計すると全体の何割になるか

全国:37.5%

  • 収入はない: 193万円(30.4%)
  • 300万円未満:306万円(35.7%)
  • 300~500万円未満:456万円(31.9%)
  • 500~750万円未満: 612万円(34.9%)
  • 750~1000万円未満:739万円(33.3%)
  • 1000~1200万円未満: 955万円(35.0%)
  • 1200万円以上: 2817万円(50.0%)
  • 無回答: -

「債券・株式・投資信託」に回している金額そのものは、世帯年収とある程度連動しています。ただし、金融資産保有額の全体に占める割合で見ると、年収1200万円未満の層はおおむね30%台に収まっており、区分が上がるほど割合も上がるという形にはなっていません。値動きのある資産を持つこと自体は、一部の世帯だけのものではなくなっている様子がうかがえます。

一方で、割合がはっきり変わるのは年収1200万円以上の区分です。ここでは50.0%となっており、預貯金の側と値動きのある側がおおよそ半々という形になっています。金額でも割合でも他の区分と開きが出るのはこの層で、全体の分布の形をつくっている部分でもあります。

この50.0%や30%台という数字は、あくまで調査時点での平均的な姿です。同じ割合であっても、そのお金を使う時期が近いか遠いかで、値動きから受ける影響はまったく変わります。目標として合わせにいく数字ではなく、割合という切り口で自分の資産を眺めてみるきっかけとして見ておくとよいところです。

そのまま持ち続けた場合の推移は、【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開で確認できます。

5. 【独自試算】崩れた割合をそのままにした場合と当初の割合に戻した場合で、値動きの振れ方はどう変わるか

ここからは、始めたころに決めた割合が崩れたあと、そのまま持ち続けた場合と当初の割合に戻した場合とで、値動きの振れ方がどう変わるのかを試算で並べます。どちらが有利かを示すためのものではなく、条件を1つだけ動かすと結果の幅がどう変わるかを確かめるための計算です。

前提は次のとおりです。当初1000万円を、値動きのある資産に500万円、値動きのない置き場に500万円と、半分ずつ分けたところから始めます。値動きのある資産は年率5%で10年間増えたものとし、年1回の複利で計算します。値動きのない置き場は増減なし(0%)と置きます。年率5%も、このあと使う30%という振れ幅も、計算のために仮に置いた数字であり、こうなると見込んでいるわけではありません。税金・手数料は考慮していません。

5.1 10年後にできあがっていた割合(当初は50:50)

  • 値動きのある資産:約814万円
  • 値動きのない置き場:500万円
  • 合計:約1314万円(割合は約62:約38)

半分ずつだったものが、10年で約62対38になりました。合計額は増えていますが、値動きのある部分が資産全体に占める割合も一緒に大きくなっています。ここから先の1年について、2つの扱い方を並べます。1つは、この約62対38のまま持ち続ける場合。もう1つは、値動きのある資産を約157万円分売って、合計を当初と同じ半分ずつ(それぞれ約657万円)に戻す場合です。

5.2 値動きのある資産が仮に30%下がった場合の1年後

  • そのまま持ち続けた場合:約1070万円(10年後の合計から約244万円減・約18.6%の目減り)
  • 当初の割合に戻した場合:約1117万円(約197万円減・約15.0%の目減り)

5.3 値動きのある資産が仮に30%上がった場合の1年後

  • そのまま持ち続けた場合:約1559万円(約244万円増・約18.6%の増加)
  • 当初の割合に戻した場合:約1512万円(約197万円増・約15.0%の増加)

2つを並べると、そのまま持ち続けた場合は上にも下にも約18.6%、当初の割合に戻した場合は約15.0%と、振れ幅の大きさそのものが変わりました。下がった場面での目減りが小さくなる代わりに、上がった場面での増え方も小さくなっています。戻すという作業は、結果を良くするためというより、振れ幅を始めたころに想定していた大きさに近づけるための調整だと見ることもできます。

ここで併せて見ておきたいのが、戻す側では約157万円分の売却が生じるという点です。売買を行うと費用がかかる場合があり、利益が出ている部分については税がかかる場合もあります。この試算にはそれらを含めていないため、実際の手取りはここで示した金額より小さくなることがあります。取り扱いは改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報や、口座を開いている窓口でご確認ください。

なお、この試算は10年後という一時点だけを取り出したものであり、どのくらいの間隔で確かめるべきか、どれだけずれたら動くべきかを示すものではありません。崩れた割合をそのまま持ち続けるという選び方も、振れ幅が当初より大きくなることを承知したうえであれば、1つの方針として成り立ちます。また、この置き方では10年分の値上がりを前提にしているため合計は当初の1000万円を上回っていますが、値動きのある資産には価格の変動があり、下落の幅や時期によっては投じた額を下回る、いわゆる元本割れとなる可能性も残ります。金額はいずれも仮に置いた条件のもとでの目安であり、将来の結果を約束するものではありません。