6. 8月送付開始、公金受取口座登録の「意向確認書」とは?

年金のデジタル化に関わる話題として、実家に届く紙の通知にも触れておきましょう。

2026年8月から、日本年金機構が「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」を簡易書留で発送し始めました。

年金受給中で一定の条件を満たす人を対象に、2026年8月から2027年2月にかけて順次送付されることになっています。

内容は、いま年金を受け取っている口座を、そのままマイナンバーに紐づく「公金受取口座」として登録してよいかを確認するものです。仕組みはオプトアウト方式で、

  • 同意する場合は、返送も手続きも不要です
  • 同意しない場合は、同封の「公金受取口座登録不同意申出書」を、意向確認書を受け取ってから45日以内に返送します
  • 期限までに返送がなければ、同意したものとして扱われます

ここで注意したいのが問い合わせ先です。「よく分からないから」と、暑いなか市区町村の役場や年金事務所に書類を持って行っても、この意向確認書については窓口で対応していません

ねんきんダイヤルやマイナンバー総合フリーダイヤルも対象外です。

個別の照会先は、意向確認書照会専用フリーダイヤル 0120-74-0011(050-3524-7372/受付は月曜8:30〜19:00、火〜金8:30〜17:15、第2土曜9:30〜16:00)です。ねんきんチャットボットでも案内があります。

帰省したら、親の郵便受けや机の上にこの通知が届いていないか確認し、次のサポートをしておくとよいでしょう。

  1. 公金受取口座として登録することに同意するかどうか、意向を確認する
  2. 同意するなら、何も提出しなくてよいことを伝え、書類は保管しておく
  3. 同意しない場合は、不同意申出書の記入と、期限内の返送を手伝う

あわせて、詐欺への注意も伝えておきたいところです。日本年金機構は「日本年金機構、厚生労働省およびデジタル庁から、電話・SMS・メールで口座番号等の提供を求めることはありません。

手数料などの金銭を求めることもありません」と明記しています。「口座の暗証番号を教えてほしい」「ATMへ行ってほしい」といった連絡は、公的機関からのものではありません。この点は口頭で念を押しておきましょう。

公金受取口座の登録手続き、および「意向確認書」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

【年金】8月から送付開始「意向確認書」の簡易書留《届く人・届かない人》の条件とは?公金受取口座の登録手続きと注意点を解説
【年金】8月から送付開始「意向確認書」の簡易書留《届く人・届かない人》の条件とは?公金受取口座の登録手続きと注意点を解説

7. 親が亡くなったとき ― 年金が「止まる」ことと「受け取る」ことは別

7.1 年金を止める手続きは、原則不要になっている

年金を受給していた親が亡くなった場合、「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出は、法令上は厚生年金保険が死亡から10日以内、国民年金が14日以内とされています。

ただし現在は、日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば、市区町村に死亡届を出すことで情報が連携されるため、この死亡届は原則として省略できます。これはデジタル化による明確な負担軽減です。

問題は、ここで「年金の手続きは全部終わった」と思ってしまうことです。年金の支給が止まることと、遺族が受け取るべきお金を受け取ることは別の手続きです。

7.2 未支給年金と遺族年金は、実質的に紙の手続き

年金は後払いのため、亡くなった月までの分(未支給年金)が必ず発生します。

これを遺族が受け取るには「未支給年金の請求」が必要で、未支給年金を請求する場合は、マイナンバーが収録されていても死亡届の省略はできず、「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」(様式514)の提出が必要です。

前述のとおり、この請求書はe-Gov電子申請でも受け付けられていますが電子証明書が必要で、実際には窓口または郵送での提出が中心です。

必要な書類は次のとおりです。

  • 亡くなった方の年金証書
  • 請求する方のマイナンバーが確認できる書類
  • 亡くなった方と請求する方の続柄が確認できる書類(戸籍謄本、法定相続情報一覧図の写しなど)
  • 生計を同じくしていたことがわかる書類(世帯全員の住民票の写し、住民票の除票など)
  • 受け取りを希望する口座番号等が確認できる書類

このうち、請求する方が配偶者または遺族年金を請求する子であればマイナンバーの記入で戸籍謄本を省略でき、世帯全員の住民票の写しも同様に省略できます。

公金受取口座を指定する場合は通帳の写しも不要です。別世帯だった場合は「生計同一関係に関する申立書」が追加で必要になります。

8. 監修者からのコメント

熊谷 良子

なお、年金手帳や基礎年金番号通知書は提出書類には含まれていません(年金手帳は令和4年4月に新規発行が終了しています)。

ただし基礎年金番号自体は手続きの前提になるため、どこに記録があるかは把握しておくと安心ですね。

また、未支給年金を受け取れるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族で、順位は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族です。請求できる権利は5年で時効消滅します。

こうした書類集めと記入を、葬儀の準備や役所の手続きと並行して進めることになります。

しかも近年は、相続する側も高齢というケースが珍しくありません。内閣府「令和6年度 年次経済財政報告」によれば、2022年の相続人の8割が50歳以上で、被相続人のうち80歳以上の割合は1989年の4割弱から2019年には7割超に上昇しています。いわゆる「老老相続」です。

遺族の負担を減らすのは、アプリよりも「どこに何があるか」を書き出したメモです。

9. お盆の帰省「15分でできる親孝行」わが家の年金メモを作ろう

難しい準備は要りません。親と一緒にテーブルを囲み、ノートに次の3点を書き出しておくだけで、もしものときの手間はかなり減ります。

9.1 ステップ1:基礎年金番号のありかを確認する

年金の手続きの起点になるのが「基礎年金番号」(4桁+6桁の10桁)です。マイナポータルにログインできなくなっても、この番号があれば年金事務所で相談できます。

青い「年金手帳」、ハガキサイズの「基礎年金番号通知書」、毎年届く「ねんきん定期便」、年金証書のいずれかに記載されています。実家のどの引き出し・どの箱に保管されているかを、親と一緒に現物で確認しておきましょう。

9.2 ステップ2:年金の受取口座と印鑑の保管場所を共有するt

未支給年金の請求や、預貯金口座の凍結に備えて、年金がどの金融機関のどの口座に振り込まれているかを把握しておきます。

  • 通帳の現物を確認し、金融機関名・支店名・口座番号を控える
  • キャッシュカードや届出印の保管場所について、家族の間で共有しておく(封筒にまとめて保管し、場所だけ伝えておく方法もあります)

9.3 ステップ3:管轄の年金事務所を書き留めておく

親の住所地を管轄する年金事務所の名称・電話番号・所在地を調べて、同じメモに書き写しておきます。

相談先が分かっているだけで、いざというときの混乱をかなり防げます。

10. まとめにかえて ― デジタルとアナログを使い分ける

マイナポータルとねんきんネットの連携は、日々の確認や将来設計にとって有用な仕組みです。親のスマホの設定を手伝うことには十分な意味があるでしょう。

大切なのは、「オンラインでできること」と「紙と窓口が必要なこと」の境目を、家族が正しく把握しておくことです。

日常の確認はスマホで、受給開始時期の選択や障害年金・遺族年金の請求といった判断を伴う場面では、書類とプロの助言、そして家族間の情報共有を使う。この使い分けが、結果的にいちばん確実です。

年に数回しかない家族が集まる機会に、少しだけ話しておきましょう。

本記事の内容は、日本年金機構・デジタル庁・厚生労働省・内閣府の公表情報をもとに、2026年8月時点の制度を整理したものです。年金の受給要件や併給の可否、繰上げ・繰下げの取り扱いは、個人の初診日・加入履歴・家族構成によって結論が変わります。実際のお手続きにあたっては、日本年金機構(ねんきんダイヤル・年金事務所)や市区町村の担当窓口、社会保険労務士など、適切な窓口に必ずご確認ください。

11. 監修者からのコメント

熊谷 良子

マイナポータルや自治体の各種アプリだけでなく、タクシーの配車アプリ、音楽などの趣味を楽しむアプリ、そしてスマホ決済など、スマホに入れておくことでシニア世代のフットワークが軽くなり、日々の暮らしがぐっと楽になるツールはたくさんあります。

文明の利器を上手に使いこなし、いきいきとしたシニアライフを送ってもらえるように設定をサポートするのも、現代ならではの立派な親孝行ですよね。

一方で、私自身も両親を看取った経験がありますが、人生の「まさかのとき」に直面したあとの事務処理には、普段の生活では全く意識しない基礎年金番号やいくつもの公的書類、そして金融機関の通帳などがどうしても必要になります。

心身ともに余裕のない状況で、ゼロからこれらを探し出して手続きを進めるのは本当に骨の折れる作業です。

全てをデジタルで完結させることはまだ難しくても、日頃からスマホを通じてコミュニケーションを取りつつ、親と上手に連携してアナログな重要情報を共有し、一緒に「もしも」に備えていけたらいいですね。

参考資料

  • 日本年金機構「マイナポータルを利用した電子申請(年金等の受給関係)」
  • 日本年金機構「年金Q&A 老齢年金請求書の電子申請はどのような人が利用できますか」
  • 日本年金機構「障害厚生年金を受けられるとき」「障害基礎年金を受けられるとき」「遺族厚生年金を受けられるとき」
  • 日本年金機構「年金の併給または選択」「年金の繰上げ受給」「年金の繰下げ受給」
  • 日本年金機構「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書の送付」
  • 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」「年金の時効」
  • デジタル庁「年金口座(年金振込口座)で給付金等が受け取れます」「行政機関等経由登録の特例制度FAQ」
  • 厚生労働省「障害基礎年金 お手続きガイド」「年金制度の仕組みと考え方」
  • 内閣府「令和6年度 年次経済財政報告」第3章第1節

池上 翠