利益の源泉はどこにあるのか、事業構成から見る

リクルートの稼ぐ力を理解するには、事業ごとの利益率の違いを押さえる必要がある。2025年3月期のセグメント別営業利益率を見ると、HRテクノロジー事業がおよそ33%と際立って高く、マーケティング・マッチング・テクノロジー事業も25%前後と高い。一方、売上規模が最も大きい人材派遣事業は6%程度にとどまる。

つまり、売上の約半分を占める人材派遣が利益率の低い土台を担い、HRテクノロジーが高い利益率で全社の利益を押し上げる構造だ。今回の上方修正がHRテクノロジー主導だったことは、利益の質という観点でも意味を持つ。売上が増える以上に、高採算の事業が伸びることが、利益を大きく動かす。

積極的な自己株買いと、見えてきたリスク

株主還元にも動きがある。会社は総額3,500億円を上限とする自己株式の取得枠を設定しており、7月末までにおよそ1,200億円分を取得済みだ。発行済み株式を減らす動きは、1株当たりの価値を高める方向に働く。前期のROEは31.0%と、サービス業の中央値であるおよそ8.6%を大きく上回っており、資本効率の高さも際立つ。

一方で、注意すべき材料もある。会社は2026年6月、日本の人材派遣事業の子会社が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けたことを開示した。会社は検査に協力中で、現時点では財務的な影響額を合理的に見積もることは難しいとしており、業績予想には織り込んでいない。好調な業績の裏で、こうした不確実性も抱えている。

筆者コメント

リクルートを見るとき、私はいつも「派遣の会社」という古い像と、実際の姿とのずれに引き戻される。売上の柱は今も人材派遣だが、利益をつくっているのは求人プラットフォームを握るHRテクノロジー事業だ。今回の上方修正は、その利益構造の非対称さを改めて浮かび上がらせた。

面白いのは、この会社が成長と還元を同時に進めている点だ。HRテクノロジーで稼ぎ、その果実を大規模な自己株買いで株主に戻す。高いROEは、その循環がうまく回っていることの表れだと読み取れる。

ただし、市場がすでに高いPERとPBRを許容している以上、次に効いてくるのは期待との差分だ。上方修正の勢いが下期も続くのか、そして公正取引委員会の検査がどう着地するのか。強い決算の余韻の中でこそ、こうした持続性と不確実性の両面に目を配っておきたいと考えている。

参考資料

免責事項

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石津 大希