2. 社会保険に加入する「2つの大きなメリット」
社会保険に加入すると給与から保険料が天引きされるため、「手取りが減って損をする」と感じる方が多いのも事実です。しかし、FPの視点でお伝えすると、目先の手取り減以上に大きな「保障のメリット」があります。
2.1 1. 将来の「年金」が手厚くなる
厚生年金に加入すると、基礎年金(原則すべての人がもらえる年金)に加えて、次の「3つの年金」の保障が手厚くなります。
- 老齢厚生年金:老後の生活費として、基礎年金に上乗せして受け取れます。
- 障害厚生年金:万が一、病気やけがで障害状態になった場合、障害基礎年金に加えて受給できる場合があり、対象となる障害の範囲も広くなります。
- 遺族厚生年金:加入者が亡くなった場合、残された家族の生活を支えるため、一定の要件を満たす遺族が受け取れます。
2.2 2. 現役時代の「医療・休業」の保障が手厚くなる
勤務先の健康保険に加入すると、業務外の病気やけがで長期間働けず給与がもらえない場合に「傷病手当金(生活を保障するための給付金)」を受け取ることができます。また、出産のために仕事を休んだ場合には「出産手当金」を受給できる場合があり、ライフイベント時の大きな安心に繋がります。
3. 厚生年金の平均受給額、男女でいくら変わる?
ここで、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、実際に今のシニア世代が受け取っている年金事情を見てみましょう。
3.1 《老齢年金の平均月額(令和6年度末時点)》
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
男女の平均受給額には、月額約5万8000円の差があります。さらに、女性の受給権者540万5752人について詳しく見ると、最も人数が多いのは「10万円以上11万円未満(81万3990人)」の層です。月10万円未満の方を合計すると約206万人となり、これは女性全体の約38.2%にあたります。
この背景には、女性が家事や育児、介護などのために退職したり、短時間労働(パートタイム)を選ばざるを得なかったりする社会的な事情が大きく影響しています。決して個人の努力不足ではなく、ライフスタイルの変化によって厚生年金に加入する期間が短くなりやすいことが要因です。
4. まとめにかえて
今回は、2026年10月に予定されている「106万円の壁」撤廃の内容と、社会保険加入によるメリットについて解説しました。社会保険への加入は手取り減少だけでなく、将来の年金額や病気・出産時の保障など長期的な安心にもつながります。
今回の制度変更を機に、働き方を見直すための具体的なステップをご紹介します。
4.1 ステップ1:自分の労働時間を確認する
まずはご自身の「週の所定労働時間」を確認しましょう。2026年10月以降は、年収にかかわらず「週20時間以上」働くかどうかが社会保険加入の大きな分かれ道になります。
4.2 ステップ2:目先の手取りか、将来の安心かを家族で話し合う
社会保険に加入すれば手取りは減りますが、将来の年金や、病気・出産時の手当という「見えないお守り」が手に入ります。今の家計の余裕と、将来への備えのバランスをどう取るか、ご家族で相談してみてください。
4.3 ステップ3:働き方を調整するか、思い切って働く時間を増やすか決める
手取りを維持するためにあえて労働時間を週20時間未満に抑える選択肢もありますし、逆に「せっかく社会保険に入るなら、もっとシフトを入れてしっかり稼ごう」と働き方を広げる選択肢もあります。
社会保険への加入は、単なる負担ではなく「国が用意した有利な保険に入る権利」でもあります。ご自身のライフスタイルや健康状態に優しく寄り添いながら、もっとも安心できる働き方を選んでみてはいかがでしょうか。
参考資料
村岸 理美


