4つの事業に分けて見える増収減益の構図

富士フイルムホールディングスは4つの事業部門を持つ。1Qの中身を分けて見ると、増収減益の構図がはっきりする。
最も足を引っ張ったのがヘルスケアだ。売上高は2,568億円と前年同期比12.4%増で伸びたにもかかわらず、営業損益は127億円の赤字に転じた。前年同期は43億円の黒字だった。会社の説明では、米ノースカロライナ拠点の稼働拡大などバイオCDMOの固定費増加が重くのしかかった。成長投資の入り口で、費用が先に立つ局面といえる。

対照的に強いのがエレクトロニクスである。AI半導体向けの先端材料需要を取り込み、売上高1,277億円(前年同期比25.0%増)、営業利益311億円(同38.2%増)と伸びた。世界トップシェアを持つ研磨材料や現像液の販売が伸長したという。イメージングもインスタントカメラ「instax」やデジタルカメラが好調で、売上高1,688億円(同16.2%増)、営業利益434億円(同3.9%増)と堅調を保った。

一方、ビジネスイノベーションは売上高2,732億円とほぼ横ばいながら、体質強化の一時費用で14億円の営業赤字となった。強い事業と、投資や一時費用で沈む事業が同居している。多角化ポートフォリオの分散が、良い方向にも悪い方向にも同時に効いた四半期だったと読み取れる。連結の営業利益だけでなく、この明暗に着眼して観察していくことが大切だろう。

巨額投資とROE7%台、資本効率の局面をどう捉えるか

数年の流れで見ると、富士フイルムホールディングスは重い投資局面のただ中にいる。2026年3月期の設備投資は5,069億円に達し、営業キャッシュフロー4,105億円を上回った。投資キャッシュフローの支出が営業キャッシュフローを超え、フリーキャッシュフローはマイナスが続いている。バイオCDMOや半導体材料の能力増強に、稼いだ以上の資金を投じている姿だ。

その一方で、2026年3月期のROEは7.7%と、化学業種の中央値6%台をやや上回る程度にとどまる。増収基調でも資本効率が力強く伸びているとはいいにくい。装置を持たない情報企業のイメージが先に立ちがちだが、実際の同社は重い設備投資を抱えた資本集約的な一面を併せ持つ。この二面性が、PBR1倍割れという評価の背景の一つと考えられる。

もっとも、株主還元の姿勢は崩れていない。2027年3月期は1株当たり配当を75円と前期の70円から増やす計画で、増配は14期連続となる見込みだ。1Qには約300億円の自社株買いも実施した。投資と還元を同時に回しながら、投じた資本が利益として返ってくるまでの時間をどう見るか。ここが評価の分かれ目になる。

筆者コメント

好調な半導体材料と、赤字に転じたヘルスケア。同じ会社の中で正反対の数字が並ぶ1Qを、どう読むか。表面の営業利益3割減だけを取り出せば失望決算に映る。だが中身は、成長事業の投資が費用として先に出た局面という色合いが濃い。

見逃せないのは、市場がその投資を今のところ額面どおりには評価していない点だ。増収を上方修正しても利益計画は据え置き、PBRは1倍を割れたまま。投じた資本が利益に変わる時間軸に、市場がまだ確信を持てていないことの表れだろう。

だからこそ、バイオCDMOの固定費が売上でどこまで回収され、半導体材料の勢いがどこまで続くか。その二つを四半期ごとに分けて追っていく見方をおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希