決算の数字が悪いと、その会社そのものが傾いたように感じてしまうことがある。だが中身を開けると、事業ごとに温度差があることは珍しくない。富士フイルムホールディングス(4901)は2027年3月期1Q決算の後に、株価を大きく下げた。売上高は二桁の伸び、しかし営業利益は3割減。この対照的な数字は何を意味するのか。4つの事業に分けて追ってみたい。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

二桁増収でも営業利益3割減、株価が急落した2027年3月期1Q

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

富士フイルムホールディングスの株価は、8月7日終値で3,236円となった。前日の3,878円から642円安、率にして▲16.6%の急落である。直近1カ月では決算発表の前まで3,800円台へ水準を切り上げていただけに、下げ幅の大きさが目立つ。

急落は2027年3月期1Q決算の直後に起きた。株価が決算のどこに反応したのかを断定はできないが、市場が中身を厳しく見た可能性は高いだろう。

その1Qは、売上高8,265億円で前年同期比10.3%増と二桁の増収だった。ところが営業利益は512億円で前年同期比▲32.0%、税金等調整前四半期純利益は521億円で▲27.6%、当社株主帰属の純利益は374億円で▲30.4%と、利益は大きく落ち込んだ。

増収なのに営業利益が3割減った理由はどこにあるのか。会社の説明によると、ヘルスケアにおけるバイオCDMO(医薬品の製造受託)の固定費増加や、ビジネスイノベーションでの体質強化を目的とした一時費用の発生に加え、原材料高騰の影響が利益を押し下げた。売上の伸びを、費用の増加が上回った四半期といえる。

一方で会社は通期の売上高予想を3兆5,600億円へ上方修正した。半導体材料の販売好調と為替を織り込んだ形だ。ただし営業利益予想は3,650億円で据え置いている。1Qの営業利益512億円は、この通期計画に対して1割台半ばの進捗にとどまる。増収を上方修正しながら利益計画を据え置いた点が、市場の警戒を招いた可能性がある。

PBR1倍割れという市場評価をどう見るか

直近時点の富士フイルムホールディングスのPER(株価収益率、株価が1株利益の何倍か)は13倍台、PBR(株価純資産倍率、株価が1株純資産の何倍か)は0.99倍となっている。

PBRが1倍を下回るとは、株価が会社の解散価値とされる純資産の水準を割り込んでいるということだ。半導体材料でAI向けの先端需要を取り込み、バイオCDMOで大型投資を進める成長ストーリーで語られることの多い会社である。その物語と、純資産すら評価しきれていない市場のバリュエーションの間には、はっきりとした緊張がある。

もっとも、PBRの一点だけで水準の高低を語るのは早計だ。1倍割れは市場の慎重な評価を映すが、それ自体が事業価値の答えではない。市場がなぜ純資産を下回る値付けをしているのか。その問いの手前にある稼ぐ力と資本効率を、事業ごとに分けて確かめる姿勢が要るだろう。