5. 上期決算のハイライト:営業利益は約2.3倍、最終利益も約3.1倍へ

2026年1月〜6月期(2026年12月期第2四半期累計)におけるIFRS基準の連結業績は以下の通りです。

  • 売上高:4,989億6,500万円(前年同期比で6.2%増加)
  • コア営業利益:444億3,200万円(同90.1%増加)
  • 営業利益:419億2,500万円(前年同期比131.8%増、金額にして約2.3倍)
  • 最終利益(親会社の所有者に帰属する中間利益):296億9,700万円(前年同期比211.4%増、金額にして約3.1倍)

売上高が増加した要因の大部分は為替の円安による底上げであり、為替変動や事業譲渡の影響を取り除いた実質増減率は▲0.2%と、実質的には足踏み状態が続いています。それにもかかわらず利益面が飛躍的に伸びた背景には、後述する構造改革に伴う経費圧縮が大きな力となったことが挙げられます。

5.1 資生堂のビジネスモデル:5つの拠点でリスクを散らすグローバル経営

資生堂は、日本、中国・トラベルリテール、アジアパシフィック、米州、欧州という5エリアを報告セグメントとして設定し、各地域の管轄責任者が売上と利益の権限および責任を担うマトリクス型の経営構造を採用しています。

SHISEIDO、クレ・ド・ポー ボーテ、NARS、エリクシールといった複数のブランドを全世界で横断的に展開することで、仮に特定の国やブランドが落ち込んでも他のエリアやブランドの成長で埋め合わせができるポートフォリオ型の収益モデルを強みとしています。実際、今回の決算でも長期間赤字から抜け出せずにいた米州が黒字へ転換する一方で、日本や中国・トラベルリテールが全社の収益を支える格好となりました。

5.2 業績拡大の要因:構造改革による経費削減が利益増を牽引

上期においてコア営業利益が前年同期比90.1%増の444億3,200万円にまで跳ね上がった最大の原動力は、グループ全体で進めた厳格なコストコントロールです。売上原価をはじめ、マーケティング費用、人件費、その他の経費を合わせたコスト削減額は上期実績で160億円規模に達しており、年間では250億円を超える削減計画を掲げています。とりわけ米州エリアでは、人員整理などの構造改革を推し進めることで2026年に75億円のコスト抑制を見込んでおり、上期のコア営業利益は前年同期の58億円の赤字から20億円の黒字へと大きく好転しました。

5.3 セグメント別の状況:米州が黒字化した一方、欧州は投資が先行して減益

地域別のコア営業利益における上期実績は次の通りです。

  • 日本事業:209億円(前年同期比7.2%増)
  • 中国・トラベルリテール事業:476億円(同22.7%増)
  • アジアパシフィック事業:22億円(前年同期は1億円の赤字)
  • 米州事業:20億円(前年同期は58億円の赤字)
  • 欧州事業:34億円の赤字(前年同期は26億円の赤字)

中国・トラベルリテール事業の上期売上高は1,914億円(前年同期比10.0%増)と伸長したものの、為替変動の影響を除いた実質ベースでは▲0.1%と横ばいで、円安によるかさ上げ効果が大きかったことが分かります。それでも、毎年6月に中国で約2週間にわたって実施される「618」セールにおいて主要な「ヒーロー商品」への「選択と集中」を実施したことが実を結び、コア営業利益率は24.6%まで向上しました。

対照的に、欧州事業の赤字は前年同期の26億円から34億円へと拡大しています。この点について同社はマーケティングへの先行投資が理由であるとしており、下期以降での利益回収を進めていく考えです。

6. 記者コメント

今回の決算では、「コストマネジメント」への意識の強さがうかがえました。実質ベースでは上期の売上高はほぼ横ばいにとどまっており、増収の大部分は円安によるかさ上げによるものです。それでも、最終利益を前年同期の約3.1倍まで伸ばしたのは、米州事業を中心とした“構造改革によるコスト削減”を進めたためであり、同社は通期のコア営業利益についても計画超過を目指すとしています。

株価の動きに注目すると、同社は決算直後に(上下どちらにも)大きく動くケースが多く見受けられます。急上昇の直後に元の位置付近まで戻ってくる「往って来い」な動きとなることもあり、なかなか高値圏で安定しない局面が続きました。今回の好決算で足元の水準が定着するかが、注目ポイントの一つになるとみられます。

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  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
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参考資料


高原 祥子