老後の暮らしを支える柱となるのが、公的年金です。「自分は将来、いくら受け取れるのだろう」「平均と比べて多いのか、少ないのか」—年齢を重ねるほど、そんな関心が高まっていくのではないでしょうか。

年金は偶数月に2カ月分がまとめて振り込まれるため、通知や振込のたびに、ご自身の受給額をあらためて意識する方もいるでしょう。

この記事では、公的年金の基本的な仕組みから、令和8年度の改定内容、そして最新の平均受給額まで、具体的な数字を交えて確認していきます。ご自身のこれからの家計を考える手がかりにしていただければと思います。

※本記事は「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!」「年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説」の記事を引用のもと作成しています。

川勝 隆登
老後のお金の話は、まず「公的年金でどれくらい受け取れるのか」を知ることから始まります。年金は老後の家計の土台になるものですが、平均額や仕組みを正しく把握しないまま、「足りないかもしれない」と漠然とした不安を抱えている方は少なくありません。裏を返せば、受け取れる年金の目安がわかれば、そこから何をどれだけ備えればよいのかも見えてきます。今回は、公的年金の基本の仕組みと、令和8年度の改定内容、そして最新の平均受給額まで、順番に確認していきましょう。

1. 公的年金は「2階建て」。まずは仕組みを確認

日本の公的年金は、しばしば「2階建て」にたとえられます。1階部分が、すべての人に共通する「国民年金(基礎年金)」、2階部分が、会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」です。

厚生年金と国民年金の仕組み1/2

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 【第1階部分:国民年金(基礎年金)】

日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられているのが国民年金です。

自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが「第1号被保険者」として加入し、全員が一律の保険料を納めます。会社員に扶養されている配偶者(年収130万円未満など)は「第3号被保険者」となり、個別の保険料負担はありません。

1.2 【第2階部分:厚生年金】

厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員や公務員が加入するのが厚生年金です(第2号被保険者)。国民年金に上乗せされる形で加入するため、将来は「基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)」の2階建てで年金を受け取ることができます。保険料は給与額に応じて変動し、会社と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」が大きな特徴です。

出所:【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!

保険料や満額の水準は、年度ごとに改定されます。令和8年度の場合、国民年金の保険料は月額1万7920円、40年間欠かさず納めた場合の老齢基礎年金の満額は月7万608円です。厚生年金の保険料は収入に応じて変わり、将来は基礎年金に上乗せする形で受け取ることになります。

川勝 隆登
制度の話は難しく感じられがちですが、まず押さえたいのは「自分は何号か」です。会社員等なら第2号、その配偶者は第3号、自営業やフリーランス等なら第1号。ここがわかると、自分がどの年金をどれだけ受け取れるのかの見当がつく一つの材料となります。土台の形を知ることが、備えの第一歩になります。

2. 令和8年度(2026年度)の年金額はどう変わった?

公的年金の額は、物価や賃金の動きに応じて毎年度改定されます。令和8年度(2026年度)は、国民年金(基礎年金)が前年度から1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなりました。

具体的には、老齢基礎年金の満額は月7万608円(前年度から1300円増)、夫婦2人分の基礎年金を含む厚生年金の標準的な年金額は月23万7279円(同4495円増)です。

引き上げというと家計が楽になるように感じますが、この年、物価は3.2%上昇していました。年金の改定には、支え手である現役世代の賃金の伸び(2.1%)に合わせる仕組みや、将来世代のために給付水準を抑える「マクロ経済スライド」が働くため、改定率は物価の伸びより小さくなっています。年金額は増えても、物価の上昇には追いついていない—それが実情だといえるでしょう。

川勝 隆登
改定率だけをみると「増えた」と受け取りがちですが、大切なのは物価との比較です。令和8年度は物価が3.2%上がったのに対し、年金の伸びは1.9〜2.0%にとどまりました。つまり、実質的には目減りが続いているということです。年金の増額をあてにしすぎず、自分でも備えを積む前提で考えておきたいところです。

3. ふつうの人の年金月額は平均でいくら?厚生年金・国民年金の「平均受給額」

では、実際に受け取っている人の平均額はいくらなのでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、老齢年金の平均月額をみていきます。

厚生年金(国民年金部分を含む)の平均は、全体で月15万289円。男女別では、男性が16万9967円、女性が11万1413円と、6万円近い差があります。

国民年金(老齢基礎年金)の平均は、全体で月5万9310円。男性が6万1595円、女性が5万7582円です。

注意したいのは、これらはあくまで平均だという点です。とくに厚生年金は、現役時代の収入や加入期間によって、人により大きく変わります。「平均くらいはもらえるだろう」と思っていたのに、いざ見込み額を確認すると平均を下回っていた—そうしたケースも珍しくありません。ご自身の受給見込みが平均と比べてどのあたりに位置するのか、一度確かめておきたいところです。

川勝 隆登
平均額は目安になりますが、そのまま自分に当てはまるとは限りません。厚生年金は、現役時代の収入と加入期間で大きく変わるためです。「平均くらいはもらえるはず」と考えるより、ねんきんネットなどでご自身の見込み額を確認し、平均との差を把握しておくことが、現実的な備えにつながります。

4. 働き方で変わる年金—ライフコース別のモデル年金額はいくらになるか

平均だけでは見えにくい「働き方による差」は、厚生労働省が令和8年度の改定とあわせて示した「多様なライフコースに応じた年金額」からも読み取れます。厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」から確認していきましょう。

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】2/2

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

  • 厚生年金期間が中心の男性:17万6793円
  • 国民年金(第1号)期間が中心の男性:6万3513円
  • 厚生年金期間が中心の女性:13万4640円
  • 国民年金(第1号)期間が中心の女性:6万1771円
  • 国民年金(第3号)期間が中心の女性:7万8249円

厚生年金を中心に長く加入したかどうかで、年金額が2倍以上変わることがわかります。

国民年金が中心だった方は、受け取れる年金が生活費に届かないこともあり得ます。こうした場合の補いの一つが、所得が一定以下の年金受給者に上乗せされる「年金生活者支援給付金」で、令和8年度の老齢年金生活者支援給付金は満額で月5620円です。

どのような人が対象で、いくら受け取れるのかは、年金生活者支援給付金の仕組みをまとめた記事もあわせて確認しておくとよいでしょう。

ここまでみてきたように、公的年金は働き方によって差が大きく、平均や満額がそのまま自分に当てはまるとは限りません。「自分の働き方」が老後の年金受給額に反映されるので、ねんきんネットなどで自身の見込み額を確認してみましょう。

川勝 隆登
同じ年数を働いても、厚生年金が中心か国民年金が中心かで、受け取る額は大きく変わります。ご自身がどのタイプに近いかを踏まえ、公的年金で足りない部分を早めに見積もっておくと安心です。年金が少なめになりそうな方は、年金生活者支援給付金のような補完の仕組みもあわせて確認しておきましょう。

5. 平均額は参考に「自分の年金額」を確認し、どう備えるかを考える

川勝 隆登
ここまで、公的年金の仕組みと平均額をみてきました。数字を前にして、「思ったより少ない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ですが大切なのは、平均と比べて一喜一憂することではなく、ご自身の見込み額を出発点に、足りない分をどう備えるかを考えることです。考え方の基本は「年金は土台、その上に自分の備えを積む」です。まずは公的年金でいくら受け取れそうかを把握し、不足しそうな分を、無理のない範囲で準備していく。裏を返せば、土台の大きさがわかれば、必要な備えの量も具体的に見えてきます。とはいえ、いざ準備を始めようとすると、「保険は足りているのか」「預金だけで大丈夫か」「投資は怖い」と、迷いが次々に出てくるものです。次のページでは、実際に寄せられることの多いこうしたお悩みに現役IFAの筆者がお答えします。