7. 定年間近の世帯に多い「退職金でローン一括返済はアリか」という悩みにFPが伝える注意点

インフレが進む中で、預貯金のまま置いておくのも不安に感じます。
物価高や消費支出の減少が進むなか「定年後の収入激減で今の暮らしを維持できるのか」「退職金をどう扱えばいいのか」と悩みを抱える方が増加傾向にあります。
とくに定年直前は、収入が減る一方で、見直していない保険料や住宅ローンの残債などが重くのしかかりやすい時期です。
7.1 【ファイナンシャルアドバイザーからのアドバイス】老後の家計防衛&資金寿命を延ばす3つのステップ
老後資金への不安から「退職金でローンを全額返済する」「慌ててリスクの高い投資を始める」といった極端な行動に走る前に、まずは家計の全体像を冷静に整理することが大切です。
ステップ1. 保険料などの「毎月の固定費」を適正化する
現役時代と同じ手厚い保障や高い保険料を定年後も続けるのは、家計を大きく圧迫する原因になります。
今のライフステージに必要な保障だけに絞り込み、毎月の固定費を削ることが、即効性のある家計防衛になります。
ステップ2. 「住宅ローン返済」と「手元に残す生活資金」のバランスを取る
退職金でローンを一括返済すると金利負担は消えますが、手元の現金が一気に減り、急な病気やリフォーム等の出費に対応できなくなるリスクが生じます。
「返済に充てるお金」と「手元に残す生活防衛資金」の線をしっかり引き、時間軸を分けて管理しましょう。
ステップ3. インフレ対策として「無理のない範囲での運用」を取り入れる
物価上昇が続くなか、資金をすべて現金や預貯金で持ち続けると実質的な価値が目減りしていきます。
生活に必要な資金は確保したうえで、余剰資金の範囲内で少しずつ新NISAなどを活用した資産運用を取り入れることが、資産寿命を延ばす選択肢として期待できます。
8. 【監修者シミュレーション】新NISAを活用すると老後資金はどう変わる?銀行預金と比較
インフレ対策や資産寿命を延ばす手段として運用が有効と分かっていても、「実際にいくら・どれくらいの期間運用すると、老後資金にどう影響するのか」という具体的なイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
そこで、手元に残した資金や無理のない毎月の積立額でどれほどの効果が期待できるのか、監修者による「新NISAを活用した資産形成シミュレーション」で具体例を見ていきましょう。
物価高によってお金の価値が目減りする現状において、「今の方法のままで本当に効率よく資産を増やせているのだろうか」と疑問を抱くこともあるかもしれません。
毎月の積立額が全く同じであっても、現金のまま手堅く貯めるか、それとも税制優遇制度を活用して投資に回すかによって、将来的に手元に残る資産額には大きな開きが出る可能性があります。
仮に10年間という期間で積み立てを継続した場合、その選択の違いによって最終的な資産額に数百万円もの決定的な差が生じるケースも珍しくありません。
豊かな老後を目指すには、家計や資産状況にあった資産運用を心がけることが大切です。
富裕層の多くは、比較して物事を選択する傾向にあります。
毎月5万円を10年間積み立てるケースを想定し、「銀行預金」と「新NISAによる積立投資」の2つのアプローチで将来の資産額がどのように変化するのか、具体的なシミュレーションを交えて分かりやすく比較・解説します。
8.1 「月5万円」を10年続けた場合の預金額はいくら?
結論からお伝えすると、毎月5万円を銀行預金として積み立てた場合、10年間での元本は合計「600万円」となります。
近年は日本銀行の利上げの影響もあり、定期預金は年0.6%まで上昇しているケースもありますが、資産を大きく増やすには十分とはいえない水準です。
この条件で10年間預け続けた場合、得られる利息は約18万円(税引前)にとどまり、最終的な資産額はおよそ618万円となります。
ただし、利息には約20%の税金がかかるため、実際に手元に残る金額はこれより少なくなります。
加えて注意したいのがインフレの影響です。
たとえば、年2%の物価上昇が続いた場合、10年後には同じ商品を購入するのに現在の約1.2倍の金額が必要になります。
そのため、預金額自体は増えていても、お金の実質的な価値は下がる可能性があります。
このように、預金は元本が減りにくいという安心感がある一方で、利息は限定的であり、インフレの影響によって実質的な資産価値が目減りする可能性もあります。
では、同じ「月5万円」を積み立てる場合、より効率的に資産形成を目指す方法はないのでしょうか。
そこで注目されているのが、税制優遇を受けながら投資ができる「新NISA」という制度です。
新NISAの詳しい制度内容については「新NISAの上限額と非課税期間まとめ」で確認できます。
8.2 【利回り別】新NISAで積立投資した場合、10年後の資産額はいくらになる?
新NISAを活用して「毎月5万円」を10年間積み立てた場合、いくらになるのかシミュレーションしていきます。
利回り3%で運用した場合の資産額
毎月5万円を積み立て、期間を10年間、想定利回りを年3%とした場合の将来の資産額は、以下のとおりです。
- 投資元本:600万円
- 運用収益:97万円
- 資産合計(元本+収益):697万円
8.3 資産差はいくら?「貯金 vs 投資」の決定的な違い
ここまで見てきたとおり、毎月5万円を10年間積み立てた場合、年0.6%の銀行預金では最終的な資産額は約618万円にとどまります。
一方で、新NISAを活用した積立投資では、利回りによって大きな差が生まれます。
たとえば、年利3%で運用した場合は約697万円となり、預金と比べて79万円の差が生じます。
このように、将来に向けた資産形成においては、スタートするタイミングの早さや、運用を継続する期間の長さが成果を大きく左右する鍵となります。
とりわけ「長期間にわたって運用を続けること」は、投資のリスクを安定させ、複利の効果を最大限に引き出すために不可欠な要素と言えます。
今後の市場動向や具体的な運用成果を確約することは不可能ですが、長期的な視点を持つことで、ただ預金するよりも効率的に高いリターンを得られる可能性が高まります。
新NISAを上手に日々の生活へ取り入れるためには、無理のない金額を設定し、じっくりと腰を据えて運用を継続していく姿勢が大切です。
【免責事項】
- 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
- 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
- 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
参考資料
- 総務省「家計調査報告 2026年(令和8年)6月分」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「国民年金付加年金制度のお知らせ」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
- 金融庁「つみたてシミュレーター」
横野 会由子



