3. 【高額療養費制度】8月から何が変わった?ポイントは「月額上限」と「年間上限」

将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとするため、高額療養費制度は大きく生まれ変わります。ここでは大きく2つの改正ポイントを解説します。

3.1 ① 医療費の自己負担「月額上限」はどう変わる?所得に応じた見直しと配慮

医療費の伸びや所得に応じて、月単位の自己負担限度額が引き上げられます。実は、令和8年(2026年)8月からすでに第一段階の引き上げがスタートしています。

例えば、「70歳未満」で「年収約370万円〜約770万円」の方が、ひと月に100万円の医療費(窓口3割負担で本来30万円)かかった場合、以下のように負担額が変わりました。

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高額療養費制度「月額上限」の見直しについて

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」

  • 令和8年7月まで: 月額上限のベースが8万100円で自己負担の上限額は約8.7万円でした。
  • 令和8年8月以降: 月額上限のベースが8万5800円に引き上げられ、自己負担の上限額は約9.3万円(8万5800円+(100万円−28万6000円)×1%)となっています。

さらに、令和9年(2027年)8月からはこの所得区分が3段階(約370万円〜約510万円、約510万円〜約650万円、約650万円〜約770万円)に細分化され、より負担能力に応じた仕組みへと移行します。

その一方で、急激な負担増を防ぐため、以下のような配慮措置が講じられます。

  • 低所得者への配慮: 住民税非課税世帯などの低所得者については、引き上げを行わず月額上限の金額が据え置かれます。
  • 長期療養者への配慮: 長期に継続して治療を受ける方の負担を増加させないよう、年に4回以上高額療養費の対象となる「多数回該当」の金額についても、現行のまま据え置かれます。

3.2 ②新たに導入される「年間上限」とは?長期療養のセーフティネット強化

自己負担の引き上げに伴う患者の負担増に配慮し、今回新たに医療費の「年間上限」が導入されました。

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高額療養費制度「年間上限」の新設

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

上限額に達した後は支払いが不要に

月ごとの自己負担額が積み上がっても、年単位の上限額(年収約370万円〜約770万円の方なら年間53万円など)に達した後は、その年においてそれ以上の医療費の支払いは不要となります。

医療費負担が軽減されるケース

これまで「多数回該当」に当てはまらなかった長期療養者や、極めて高額な医療を受けた方にとっては、この上限新設によって自己負担額が大きく軽減される場合があります。

70歳以上(外来)の方への配慮

70歳以上で住民税非課税の方の外来医療費についても年間上限が新設され、毎月上限額まで利用される方の経済的負担が現在よりも増加しないよう設計されています。

4. まとめにかえて

今回は「高額療養費制度」の基礎知識から、今後の法改正による変更点まで解説しました。公的制度は社会情勢に合わせて常に変化しています。今回の改正のように「負担が増える部分(月額上限の一部引き上げ)」がある一方で、「手厚くなる部分(年間上限の新設)」も同時に用意されています。

大切なのは、制度の全体像を正しく把握することです。「国の制度でどこまで守られるのか」を知っていれば、「差額ベッド代や先進医療には民間の医療保険で備えよう」「月々の上限額までは十分な貯蓄があるから保険は最小限でいい」といった、ご家庭ごとの無駄のない対策が見えてきます。

この記事をきっかけに、ご自身やご家族にとっての「最適な備え」を見直してみてはいかがでしょうか。

参考資料

村岸 理美