4. 見直しで変わる4つのポイント
今回の見直しによって、現行制度から変わる主なポイントは次の4点です。
4.1 ①60歳未満の死別は「原則5年の有期給付」に、男女差も解消へ
現行制度では、子どものいない妻は30歳未満のみが5年間の有期給付、30歳以上は無期給付です。一方、子どものいない夫は55歳未満だと受給権自体がなく、55歳以上でようやく60歳から無期給付となります。見直し後は、60歳未満で死別した場合は男女とも原則5年間の有期給付(給付額は有期給付加算により現行の約1.3倍)に、60歳以上は無期給付に統一されます。男性については2028年4月の施行と同時に適用され、女性については現在の受給者への影響を抑えるため、2028年4月から20年かけて対象年齢が段階的に引き上げられます。
4.2 ②有期給付の収入要件(年収850万円未満)を撤廃
現行制度では年収850万円以上の世帯は遺族年金を受け取れませんが、見直し後は収入にかかわらず受給できるようになります。高収入世帯にとっては、給付の対象が広がる変更です。
4.3 ③子の加算額が引き上げ、対象となる年金の種類も拡大
子どもがいる場合の加算額も見直され、1人目・2人目は1人あたり年額23万4,800円から28万1,700円へ引き上げられます(3人目以降は年額7万8,300円で変更なし。2024年度価格)。この引き上げは、すでに受給している方にも適用されます。加算の対象となる年金の種類も広がり、老齢基礎年金や遺族厚生年金など新たに加算の対象になる年金が増えます。
4.4 ④「死亡時分割制度」の新設で、老後の年金が上乗せ可能に
共働き世帯で従来から課題とされていたのが、「自分自身の老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」のうち高い方しか受け取れない仕組みでした。見直し後は、亡くなった配偶者の年金加入記録の一部を分割し、自分の年金に上乗せできるようになります。婚姻期間が短いほど上乗せ額は小さくなる点は覚えておく必要があります。
5. 影響を「受ける人」と「受けない人」を整理する
今回の見直しによって、実際にどのような人が影響を受けるのかを整理してみましょう。
5.1 給付が変わる可能性がある人
2028年度末時点で40歳未満の女性(子どものいない場合)は、対象年齢の引き上げに応じて、これまで65歳まで受け取れていた遺族年金が、有期給付に切り替わる可能性があります。給付額自体は現行より約1.3倍に増える設計ですが、収入が十分にある場合は5年で給付が終了します。
5.2 新たに給付を受けられるようになる人
子どものいない20〜50代の男性は、現行制度では55歳未満だと受給対象外でしたが、見直し後は2028年4月から5年間の有期給付を受けられるようになります。これは男女差を解消する拡充であり、給付が縮小される変更ではありません。
5.3 今回の見直しの影響を受けない人
- すでに遺族厚生年金を受給している方
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
- 18歳年度末までの子どもを養育している間の方(給付内容は現行のまま)
- 2028年度に40歳以上になる女性
なお、子どもがいる期間については年齢を問わず加算額が引き上げられるため、子育て世帯はどの世代でも見直し後のほうが手厚くなります。
6. まとめ
2028年4月の遺族厚生年金の見直しは、子育て世帯や男性への支援を広げる一方で、現役世代の中長期的な保障を縮小する方向性を持った改正です。影響の大きさは、年齢・性別・家族構成によって大きく異なります。
まず確認しておきたいのは、自分がこの見直しの影響を受ける側なのか、受けない側なのかという点です。40歳未満の女性や共働き世帯にとっては、子どもが独立した後の数十年間について、収支の設計を見直す必要が出てくる可能性があります。
公的年金だけでカバーしきれない部分は、生命保険の保障額や貯蓄で補っておくのが基本的な考え方になります。「万が一のとき、公的年金がどこまで支えてくれるのか」を把握したうえで、ご家庭に必要な備えを一度整理してみてはいかがでしょうか。
すべてを公的年金だけで備える必要はありません。民間の生命保険や貯蓄、就労継続の計画などを組み合わせて、ご家庭ごとに無理のない形で備えを検討してみてください。
6.1 参考:遺族厚生年金の平均受給額
参考資料
和田 直子


