2026年8月3日現在、外国為替市場では1ドル=156円台で推移しています。

わずか数週間前の7月24日には一時163.90円台をつけ、1ドル=164円の大台に迫る歴史的な円安水準を記録したばかりですが、そこから市場の潮目は大きく変わり、急激な揺り戻しを見せています。

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ドル円チャート(直近1カ月)

TradingView

この短期間での急激な相場の変化を受け、SNSやメディアでは投資家たちのリアルな声が飛び交っています。特に2024年の新NISA創設を機に資産運用をスタートし、これまで「円安・株高」の恩恵をダイレクトに受けて資産が右肩上がりに膨らんでいく様子しか経験してこなかった人たちの間からは、「このまま投資を続けて本当に大丈夫なのか」「資産が一気に減ってしまうのではないか」といった強い不安や動揺の声が相次いでいます。

このような激しい乱高下を目の当たりにすれば、すでに株や投資信託を保有している人が資産の目減りに恐怖を感じるのも、これから投資を始めようと考えていた人が「タイミングが悪すぎて大損するかもしれない」と躊躇してしまうのも無理はありません。

先行きが見通せない激動の為替・株式市場において、私たちは自らの資産とどのように向き合うべきなのでしょうか。中立的な観点から、冷静に投資を続けるためのヒントを紐解いていきます。

1. 運用の迷いをなくす3つの視点

  •  目先のノイズを排除する:予測不可能な短期の乱高下に惑わされず、長期のゴールを見据える。
  •  相場環境で手法の優劣が変わる:上昇局面で資産を急拡大させる「一括」、下落局面でダメージを抑える「積立」。
  •  自分の「心の許容度」を基準にする:絶対的な正解はないからこそ、下落時に自分が耐えられる心理的負担で決める。

2. 未来の予測は不可能。日々の値動きと距離を置くべき理由

資産運用を行う上で大原則として心に留めておきたいのは、「どれほど経験豊富な市場のプロであっても、将来の相場を完璧に言い当てることは不可能である」という事実です。

数ヶ月後にドル円レートがどこまで円高・円安に進むのか、あるいは日経平均株価や主要な株価指数がどこまで調整し、いつ反発するのかを正確に予言できる人は地球上に存在しません。

為替や株価というものは、各国の金融政策や金利差、発表される経済指標、さらには世界各地の地政学的リスクなど、無数の変数が複雑に絡み合って形成されているからです。

そのため、毎日のニュースやスマートフォンの画面に映る評価損益の上下に過度にとらわれてしまうと、恐怖や焦りから冷静な投資判断ができなくなってしまいます。

資産形成の本質は、目先の不規則な変動に右往左往することではなく、「自分が受け入れられるリスクの範囲をあらかじめ設定し、長期的な視点を維持すること」にあります。

和田 直子
大切な資産の運用。円高・円安、株高・株安など、日々の値動きが気になるのは自然なことです。

短期売買をしている投資家にとっては見逃せないものですが、「長期で資産運用をしている人」にとって、日々の値動きは気持ちの面において少しノイズになる可能性があります。

ここからは、長期運用の二大アプローチである「一括投資」と「積立投資」の特性について、具体的なシミュレーションをもとに比較・検証していきます。相場の動きによって、私たちの資産の推移はどう変わるのでしょうか。

3. 【一括 vs 積立】「1000万円」を「15年間」運用した際のシミュレーション

元手となる1000万円を、15年間(計180ヶ月)にわたって運用していくケースを想定します。

  • 一括投資:運用開始時点で1000万円の全額を一度に投資する
  • 積立投資:1000万円を180等分し、毎月約5万6000円ずつ均等に投資していく

この2つの手法に対し、「市場が順調に伸び続けたパターン」と「厳しい市場環境が長引いたパターン」という対極のシナリオを適用し、最終的な結果の違いを確認します。

15年間×1000万円「右肩上がり」「右肩下がり」だった場合のシミュレーション2/3

15年間×1000万円「右肩上がり」「右肩下がり」だった場合のシミュレーション

試算結果をもとにLIMO編集部作成

3.1 シナリオA:世界経済の恩恵を受け、順調に「右肩上がり」で推移した場合

仮に投資を開始した直後から世界経済が力強く成長し、年率5%で成長を続けた「右肩上がり」の相場では、元本を市場に置いた期間の長さが結果を大きく左右します。

  • 一括投資の最終資産額:約2079万円(運用益:+1079万円)
  • 積立投資の最終資産額:約1470万円(運用益:+470万円)

このケースでは、スタート時点で全額を投入していた一括投資が、積立投資に対して600万円以上の大差をつけて勝利する結果となりました。

まとまった資金が長期間市場で運用されることで、得られた利益がさらに次の利益を生み出す「複利効果」が最大限に発揮されたためです。将来的な市場の上昇トレンドが確実視できる局面であれば、一括投資の効率性は圧倒的です。

3.2 シナリオB:厳しい不況や下落が続いた「右肩下がり」の場合

一方で、多くの投資家が最も懸念する「投資を始めた途端に下落相場が長引いてしまったら」という最悪のシナリオ(年率▲5%で推移)を検証します。

  • 一括投資の最終資産額:約463万円(運用損益:▲537万円)
  • 積立投資の最終資産額:約696万円(運用損益:▲304万円)

このマイナス成長の局面においては、立場が逆転し、積立投資の方が損失額を約230万円も低く抑え込むことができています。

明暗を分けたのは、定額購入による「ドル・コスト平均法」の機能です。

ドルコスト平均法3/3

ドルコスト平均法

出所:金融庁「NISA早わかりガイドブック」

毎月一定の金額を買い続ける積立投資では、価格が高い時期には自然と少なく、価格が安く落ち込んでいる時期には多くの数量(口数)を自動的に仕込むことができます。

また、15年という期間の前半に投資された資金は、下落相場にさらされる時間が短くなるため、初期に全額を投じて全期間の下落ダメージをまともに受けた一括投資に比べ、資産の崩壊を防ぐ盾となってくれたのです。