4. 機関投資家はどう動く? 泉田氏が語る投資の鉄則
ここまで様々な新規採用候補を見てきましたが、投資家はこうした情報をどのように活用すべきでしょうか。「TOPIXに採用されれば、インデックスファンドからの買いが入るから、今のうちに買っておけば儲かるのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、泉田氏はプロの視点から安易な飛びつきに警鐘を鳴らします。個人でもこうして採用候補を試算できるということは、裏を返せば、プロである機関投資家はとっくに同じ分析を終えているはずだ、というのです。
4.1 採用発表後の「セル・ザ・ファクト」に注意
株式市場には「セル・ザ・ファクト(事実で売れ)」という格言があります。機関投資家は、すでに独自の試算によって「どの企業が採用されそうか」を予測し、事前に行動を起こしている可能性があります。
泉田氏は、市場の織り込み具合について冷静な見方を示します。
「可能性としては一部織り込んでる可能性があるんで、単純に飛びつかない方がいいっていうのがまず1つ」
つまり、正式な採用リストが発表された瞬間、すでに買っていた投資家たちが利益を確定するために一斉に売りに出し、逆に株価が下落するリスクがあるということです。
4.2 最終的に問われるのは「稼ぐ力」
では、投資家はどのような基準で銘柄を選ぶべきなのでしょうか。インデックスへの採用はあくまで需給のイベントであり、企業の根本的な価値を変えるものではありません。
「基本的に組み入れられた後もやっぱり問題だから、ファンダメンタルズしっかり分析して、本当にいい銘柄を自分でリストアップした中から検討するっていうのが正攻法かな」
泉田氏が強調するのは、ROE(自己資本利益率)やWACC(加重平均資本コスト)といった、企業が効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。話題性や一過性の利益、あるいは株価指数のイベントに振り回されるのではなく、事業構造や財務体質をしっかりと分析し、「本業で稼ぐ力」を持つ企業を選別することが、投資の王道だと言えます。
5. まとめ
TOPIXの大改革は、日本の株式市場の流動性を高め、海外の機関投資家にも魅力的な市場を作るための重要なステップです。今回の試算で浮かび上がった新規採用候補のリストには、私たちの身近な企業から最先端のテクノロジー企業まで、多様な顔ぶれが並びました。
繰り返しになりますが、本記事で紹介した内容は2026年8月末を基準日と想定した「独自の試算」であり、JPXが公表する確定リストではありません。今後、各社が浮動株を増やすための資本政策を行ったり、業績変動によって時価総額が変わったりすることで、実際の採用結果は変動する可能性があります。
投資家の皆様は、指数採用というイベントだけにとらわれず、各企業が持つ本来の強みや成長性をしっかりと見極めた上で、投資判断を行っていくことが求められます。
【免責事項】
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
参考資料
- JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)
- JPX総研「東証指数算出要領(TOPIX編)」(2025年12月10日版)
- 各社 有価証券報告書(浮動株比率・大株主の確認に使用)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
※リンクは記事作成時点のものです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日