日本マクドナルドホールディングスやワークマン、セリアなど、私たちの生活に密着した有名企業。誰もが知る大企業でありながら、実は現在、日本の代表的な株価指数である「TOPIX」に採用されていない銘柄が多数存在します。
しかし、東京証券取引所が進めるTOPIXの大改革により、こうした企業が新たに指数へ組み入れられる可能性が浮上しています。一体なぜ、これまで選ばれなかった企業が採用候補に挙がり、どのような仕組みで評価されるのでしょうか。
この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏が独自の試算をもとに、各社の事業構造や株式の保有実態を分析し、新規採用候補の本当の強みを解説します。
1. この記事のポイント
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TOPIXの新たな選定基準は「年間売買代金回転率」と「浮動株時価総額」の2つを満たす必要がある -
日本マクドナルドHDや半導体関連など、約30社が新規採用の基準を満たす可能性がある -
宇宙産業など話題性が高く売買が活発な企業は、回転率の基準をクリアしやすい -
採用期待による飛びつき買いは危険であり、最終的には企業の「稼ぐ力」を見極めることが重要
※本記事のリストは2026年8月末を基準日と想定した独自の試算であり、JPXの確定リストではない
2. TOPIX改革の全貌:新規採用のハードルとは?
東京証券取引所は現在、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄について、段階的な見直しを進めています。これまでTOPIXは、主に東証一部(現在のプライム市場の前身)に上場している企業を中心に構成されていました。しかし、今回の改革では「投資対象としての機能性」を向上させるため、プライム市場だけでなく、スタンダード市場やグロース市場の企業も対象に含め、流動性を重視した銘柄の入れ替えが行われます。
インタビュワーから「流動性とは何か」という疑問が投げかけられると、泉田氏は次のように説明します。
「誰もが売りたい買いたいって思った時にできるもの、それを流動性と言ってるんだけども、そこを重視した銘柄選定になっていくという話です」
特定の株主(創業家や親会社など)が長期にわたって保有し続けている株式は、市場に出回らないため「流動性がない」と見なされます。今回の改革では、そうした固定株を排除した「浮動株(市場で実際に売買できる株式)」をベースに企業が評価されるのが最大のポイントです。
2.1 流動性を測る「2つの厳しい基準」
新たなTOPIXの選定において、企業は以下の「2つの基準」を両方(AND条件)満たさなければなりません。どちらか一方だけでは不十分です。
基準1:年間売買代金回転率
直近12ヶ月間で、その企業の株式がどれだけ活発に売買されたかを示す指標です。すでにTOPIXに採用されている企業が「継続」して残るためには、この回転率が「0.14以上」である必要があります。一方、新たにTOPIXに「新規追加」される企業には、より厳しい「0.2以上」というハードルが課せられます。
基準2:浮動株時価総額の累積比率
基準1をクリアした企業群の中で、浮動株時価総額(市場に出回っている株式の総価値)が大きい順に並べた際の累積比率です。継続企業は「上位97%以内」、新規追加企業は「上位96%以内」に入らなければなりません。
泉田氏はこの新規追加の厳しさについて、次のように指摘します。
「下4%の人は入れませんと。97%までって言ってるわけだから、継続基準そうなってくるよね」
泉田氏の非公式な試算目安によれば、継続基準である「上位97%以内」に入るには、浮動株時価総額が約400億〜500億円程度必要になると推測されます。そして、新規追加の「上位96%以内」に入るには、約600億円以上が一つの目安になると考えられます(※公式の表現はあくまで「上位◯%以内」であり、金額は相場変動によって変わる試算上の目安です)。
2.2 試算の前提とスケジュール
ここで重要な注意点があります。実際に銘柄の入れ替えが始まるのは2026年10月末ですが、その評価の基準となるのは「2026年8月末」のデータです。その後、2028年7月にかけて四半期ごとに全8段階でウエイト(指数に占める割合)が調整されていきます。
本記事で紹介する候補銘柄は、泉田氏が有価証券報告書などのデータをもとに独自に算出した「試算」です。JPX(日本取引所グループ)が公表する公式な確定リストは2026年9月頃に発表される予定であり、現時点で確定しているものではないことをあらかじめご承知おきください。
3. 新たにTOPIX入りが期待される企業群
厳しい基準をクリアし、新たにTOPIXへ採用される可能性があるのはどのような企業でしょうか。泉田氏の試算によって浮かび上がった約30社の新規採用候補の中から、いくつかの代表的なテーマを見ていきましょう。
有名リテール・外食の新規採用候補(時価総額・浮動株比率・浮動株時価総額・回転率/試算)2/4
出所:JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」・各社有価証券報告書を基にイズミダイズム作成(試算基準:2026年5月末)
3.1 身近な消費・外食関連
最も意外性があるのは、私たちが普段よく利用する消費・外食関連の有名企業です。
例えば、日本マクドナルドホールディングスは、かつて店頭市場(ジャスダック)の代表的な銘柄であった歴史もあり、現在もTOPIXには採用されていません。しかし、同社の浮動株比率は約65%と高く、浮動株時価総額は約6,300億円に達しています。これは新規採用の目安を大きく上回る水準です。
また、作業服からアウトドアウェアまで展開するワークマンは、浮動株比率こそ約25%と低めですが、企業全体の時価総額自体が大きいため、浮動株時価総額の基準を満たすと試算されています。100円ショップのセリア(時価総額 約2,200億円)や、ディスカウントストアを展開し西友の買収でも話題になったトライアルホールディングスなども、有力な採用候補としてリストアップされています。
3.2 注目を集める半導体・宇宙・新興株
投資家の注目度が高いテクノロジー分野からも、多くの企業が候補に挙がっています。
本命とも言えるのが、半導体の製造装置や材料を手がける企業群です。フェローテック(時価総額 約5,000億円)や上村工業(同 約4,400億円)、santec Holdings、AIメカテック、東洋合成工業などが挙げられます。AIやデータセンター関連として市場の注目を集めるテーマであり、総じて浮動株の規模も大きいのが特徴です。
また、新興市場の銘柄が新規採用の基準を満たす上でカギとなるのが「話題性」です。宇宙ゴミ(デブリ)除去に取り組むアストロスケールホールディングスは、年間売買代金回転率が約38倍という驚異的な数字を記録しています。同様に、医療・半導体レーザを展開するQDレーザも回転率が約28倍に達しています。
泉田氏は、企業が市場で活発に売買されるためには、投資家の関心を惹きつける努力が不可欠だと語ります。
「やっぱりちゃんとニュース出すとか、株式市場のテーマにうちも絡んでるぞっていうのをちゃんと発信していかないとこうはならないんで、そういった攻めたIR今後必要だね」
新興株(宇宙・BTC・ギグ)の新規採用候補――アストロスケールは回転率38.7倍と極めて活発(試算)4/4
出所:JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」・各社有価証券報告書を基にイズミダイズム作成(試算基準:2026年5月末)
3.3 多様な業種に広がる優良企業
半導体や新興株以外にも、幅広い業種から採用候補が挙がっています。歯科用精密機器で世界的なシェアを持つナカニシや、香辛料でおなじみのヱスビー食品、スポーツ用品のヨネックス、アニメ制作の東映アニメーションなど、私たちの生活に身近な優良企業も、浮動株時価総額と回転率の基準を満たすと試算されています。

