日経平均株価は前日比607円安の6万3,754円で取引を終えました。前週末にかけて主力企業の決算発表が集中し、上方修正が相次いだにもかかわらず、円高進行と高値警戒から幅広く売られる展開に。好決算を出したファナックがかえって急落する一方、ルネサスエレクトロニクスやキオクシアなど半導体の一角は逆行高となり、決算をめぐる明暗が鮮明に分かれました。
1. サマリー——上方修正ラッシュも「出尽くし」と円高で反落
主要指数はそろって下落しました。日経平均は0.94%安の6万3,754.90円、TOPIX(東証株価指数)は1.08%安の3,960.03で引けています。為替はドル円が円高方向に振れ、輸出・製造業の重しとなりました。
この日の特徴は、日経平均よりもTOPIXの下げ幅が大きかったことです。値がさ株の一部が踏みとどまった日経平均に対し、銀行・保険・輸送用機器など時価総額の大きい業種が広く下げ、市場全体を映すTOPIXがより深く沈みました。7月末にかけて決算が出て、上方修正が目立ったにもかかわらず売られたのは、決算という「材料の出尽くし」と、高値圏での利益確定売りが重なったためとみられます。
2. 大きく動いた主要銘柄——好決算でも売られ、半導体の一角だけ逆行高
まず売られた側です。象徴的だったのがファナック(6954)で、7月31日に発表した第1四半期の営業利益が前年同期比26%増、通期予想も上方修正しながら、株価は14.31%安と急落。好決算が事前に期待されていたものの、期待がさらに上回っていたと追う可能性があります。また、三菱電機(6503)が▲6.36%、ソニーグループ(6758)が▲5.23%、住友電気工業(5802)が▲5.56%と、いずれも「好決算なのに下落」という恰好でした。円高を嫌気したトヨタ自動車(7203)は▲3.37%です。
一方、逆行高となったのが半導体の一角です。ルネサスエレクトロニクス(6723)は7月31日発表の四半期決算で営業利益が急増したことを好感し13.45%高と急騰。キオクシアホールディングス(285A)は5.72%高となりました。フジクラ(5803、+2.83%)、HOYA(7741、+2.37%)、ファーストリテイリング(9983、+1.80%)も買われています。
3. この日の相場——「事実の良さ」より「期待との差」が値動きを決めた
この日を振り返ると、決算の良し悪しがそのまま株価に直結しなかった点が印象的です。ファナック・三菱電機・ソニーと好決算が並んだにもかかわらず、多くが売られました。
買い手は決算前にすでに強気の見通しを織り込んでおり、実際の数字が「期待どおり」でも材料出尽くしとして利益確定に押される——グロース優位の相場でしばしば起きる展開です。
資金は幅広く手じまわれ、ルネサスやキオクシアのように一部の銘柄だけが逆行高となりました。
4. セクターの動き——最大の電気機器が指数を圧迫、内部は二極化
TOPIXの約4分の1を占める最大業種の電気機器が、この日の指数を最も押し下げました。ただし中身は二極化しており、ファナック・三菱電機・ソニー・村田・富士通(6702、▲4.35%)が下げる一方、ルネサス・キオクシアは急伸。同じ電気機器でも「決算出尽くし組」と「新材料組」で明暗が割れています。
そのほかでは、円高を受けて輸送用機器(トヨタ、ホンダ▲3.60%)が軟調。構成比の大きい銀行業(9.8%、三井住友FG▲2.94%)や保険業(東京海上▲2.82%、SOMPO▲3.39%)、医薬品(中外製薬▲3.53%)も下げ、内需・金融を含む広範な業種が指数の重しとなりました。逆行高は半導体の一部と、小売の主役ファーストリテイリングに限られます。
5. NT倍率——16.1倍で横ばい、歴史的高水準圏が続く
NT倍率(日経平均÷TOPIX)は約16.10倍と、前日の約16.08倍からわずかに上昇しました。両指数がそろって下げるなかでも、日経平均が値がさのファーストリテイリングなどに支えられTOPIXほど下げなかったことが、NT倍率の横ばい〜微増につながっています。16倍超は過去10年でみて歴史的に高い水準で、値がさのハイテク・グロース優位の地合いが続いていることを示します。
6. 元機関投資家イズミダの視点:好決算が「売り」になる、期待相場の難しさ
私が最も注目したのは、上方修正を出したファナックが14%も急落したことです。ここに、いまの相場の性格が凝縮されています。株価は「決算の絶対的な良さ」ではなく「事前の期待とのギャップ」で動く。期待が高く積み上がった銘柄は、実際に良い数字を出しても「予想どおり」と受け取られ、材料出尽くしで売られます。私がいつも言うように、株式投資は「なんでも鑑定団」と同じで、勝負は値決めです。良い決算であることと、その良さがまだ株価に入っていないことは、まったく別の問題なのです。
もう一つの主役は円高でした。輸出・製造業には逆風で、好決算組の下げを増幅した面があります。半面、ルネサスやキオクシアのように「まだ織り込まれていない新材料」を出した銘柄には資金が集まりました。決算シーズンの後半は、数字の良し悪しだけでなく「どこまで期待が先行しているか」を併せて見る必要があります。上方修正の波が一巡したあと、相場が次に何を手がかりにするか。ここが当面の注目ポイントです。

