結局、お姉ちゃんは父方の祖父母が住む街から近い大学に進学し、実家を離れました。祖父母と同居しながら学生生活を送り、そのままその近隣で就職したそうです。一方、母方の祖母から愛情を一身に受けていた弟ですが、このままではいけないと心配した両親の配慮なのか、かなり遠くの大学に進学し、周辺の大都市圏で就職しました。

このことにおばあちゃんは怒りを露わにし、筆者の母など近所の奥様方に娘夫婦の悪口を言いふらしましたが、ほとんどの奥様は事情を知っているので、内心呆れながら聞いていたそうです。

子供や孫への偏愛で良いことはひとつもない

他の家庭のことをあれこれ詮索するのは好きではありませんが、近所に越してきた初老夫婦を介して色々と考えさせられることがありました。

ある一人に愛情が偏ってしまうと、他の兄弟姉妹の心には大きな傷となり、家族間の関係にも悪い影響を及ぼします。間近で見続けている筆者の母にも孫と接する際の良い教訓となっている様子です。「同じ孫なのに、なんでああも差別するのか分からない」と3人の子供を持つ筆者に断言しています。

伴侶に押し切られる形で孫のために住み慣れた街を離れたおじいちゃんの方は、かれこれ25年近くたった今でも、「昔の仲間が多く住んでいるあっちに戻りたいよ」と冗談めかしく近所の人にぼやきますが、それが本心なのかもしれません。

中山 まち子