誰のことなのか分からず母に聞き直してみると、初老夫婦の孫たちのうち弟だけ泊りにきているようだと主張するのです。「スーパーでね、お姉ちゃんとお母さんが買い物をしているのを見かけたの」と詮索好きな主婦らしく、あれこれ語り始めるので、少々うんざりした気分に。その一方で、冷たくあしらわれる祖母に会わなくてすむから清々しているのでは…、とお姉ちゃんの気持ちに思いを巡らしたりもしました。

習い事などで忙しくて泊まりに来れない、というほど孫たちの自宅と祖父母宅は離れた距離ではありません。車で5分もかからないと母も口にしていましたし、小学生になったお姉ちゃんなら自転車で来れる距離です。「やっぱり嫌なのかしらね」と筆者の母は探偵のように推理をし始めました。

そんな勝手な憶測をするのは馬鹿げたことです。しかし、これまでのおばあちゃんの言動を見聞きしてきた身として、お姉ちゃんが祖母に寄りつかなくなるのも仕方がない、と感じました。

小学生になり、自分の意思を持ち始めて「行きたくない」と口にしたのでしょうか。そんなお姉ちゃんの気持ちを尊重したお母さんが、無理に行かせなかったのかもしれません。その年以降、お姉ちゃんが祖父母宅に泊りに来る姿を見たことはありません。

あれだけ可愛がっていた孫息子も離れてしまい…

越してきた時は初老だった夫婦も、時の流れとともに老いていきました。あれだけ顔を出していた孫息子も、中学生になった頃からパッタリ姿を見せなくなったと、帰省のたびに筆者の母は一方的に報告してきます。お年玉などお金に絡むときには顔を出すので感じが悪いなどと、他人様の子に文句を言うのには正直疲れるところがありました。

しかし、そのおばあちゃんは相変わらず町内の会合では、「孫息子は勉強や部活で忙しいから大変」「孫娘は相変わらず愛想がなくて性格がキツイ」と偏愛ぶりを披露していたそうです。同い年の孫を持つ、近所のおばあさんやおじいさんの話によれば孫の印象は真逆で、「大人しいけど後輩にも優しいお姉ちゃん」と「わがままな弟」という評判でした。