町内会での集まりなどで初老の夫婦と顔を合わせる筆者の母は、会合のたびにいつも孫息子自慢をされると苦笑いを浮かべていました。

「おじいちゃんのほうは無口だし平等なんだけど、おばあちゃんの方がね」と漏らすのです。どうやら大人しく慎重な性格の孫娘とは合わないらしく、陽気で明るい孫息子の話ばかりしてくるので、周囲にいる人は適当に話を聞き流していると教えてくれました。

習い事に関してもあれこれ口出しをしているらしく、「お金は出すから孫息子に色々習い事をさせて才能を引き出したら? と娘に言っても意見を無視される」とそのおばあちゃんが不満顔で嘆いてたそうです。筆者の母は、「私たち他人にも話をしているくらいだから、本人たちの前だとさらに態度はハッキリしているだろうね」とお姉ちゃんのことを気にかけていました。

祖父母の家に寄りつかなくなったお姉ちゃん

筆者が大学進学で実家を離れると、初老の夫婦と孫たちのことを耳にする機会もなくなりましたが、たまに思い出すこともありました。数カ月経って大学1年の夏休みに帰省すると、母が表情を曇らせて私に近づいてきて突然言うのです。「今年は、お姉ちゃん来てないみたい」と。