日立製作所が7月29日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月期)決算は、本業の実力を示す調整後営業利益が前年同期比39.5%増と大きく伸びました。電力インフラを担うエナジー事業が全社を牽引し、会社は通期の業績見通しと中間配当予想をそろって引き上げています。一方で最終利益(親会社株主に帰属する四半期利益)は微減。好調な決算のなかで最終益だけが減った理由に、この四半期の性格がよく表れています。
1. この記事の3つのポイント
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1Qは売上+20%、調整後営業利益+39.5%の増収増益
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エナジー牽引で報告4セグメントが全て増収増益
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通期見通しを上方修正
2. 売上収益20%増、調整後営業利益は4割増——利益率も改善
連結の売上収益は前年同期比20.0%増の2兆7,096億円。同社が本業の利益指標とする調整後営業利益は同39.5%増の2,943億円となり、売上収益に対する調整後営業利益率も9.3%から10.9%へ改善しました。増収を上回る増益で、事業の稼ぐ力が一段と高まっています。
ただし、より下の段階の利益は伸びが鈍ります。税引前四半期利益は8.5%増の2,951億円、親会社株主に帰属する四半期利益にいたっては▲1.4%の1,894億円と微減でした。本業が4割増益なのに最終益が減ったのは、前年同期に約726億円あった金融収益(保有株式の評価益などの一時的な収益)が今期は約86億円に減ったためです。裏を返せば、一時要因を除いた事業そのものの勢いは、最終益の見かけ以上に強いといえます。
3. エナジーが全社を牽引——4セグメントすべてが増収増益
事業別では、報告する4セグメントすべてが増収増益でした(同社は今期から従来の区分を見直し、エナジーとモビリティを分離した5区分としています)。まず各セグメントの売上収益(外部顧客向け、カッコ内は前年同期比)です。
- エナジー:9,082億円(+36.7%)
- コネクティブインダストリーズ:7,115億円(+14.9%)
- デジタルシステム&サービス:6,806億円(+10.1%)
- モビリティ:3,440億円(+20.6%)
セグメント損益(カッコ内は前年同期比/売上収益に対する利益率)は次のとおりです。
- エナジー:1,290億円(+64.5%/14.2%)
- デジタルシステム&サービス:855億円(+19.8%/12.6%)
- コネクティブインダストリーズ:834億円(+31.9%/11.7%)
- モビリティ:304億円(+40.2%/8.9%)
牽引役はエナジーです。パワーグリッド(送配電)を中心に、世界的な電力需要とデータセンター向け投資が追い風となり、損益は6割超の増益と際立ちました。鉄道システムのモビリティ、半導体製造装置や医用分析・ビルシステムを抱えるコネクティブインダストリーズ、システム構築やITプロダクツのデジタルシステム&サービスもそろって利益率を高めています。特定事業への依存ではなく、幅広い事業が伸びた点が今回の決算の特徴です。
4. 海外が伸びをリード——欧州・アジアが2桁増
地域別の売上収益を、全体に占める構成比(カッコ内は前年同期比)で並べると次のとおりです。
- 日本:構成比32%(+11%)
- 欧州:構成比23%(+25%)
- アジア:構成比20%(+27%)
- 北米:構成比17%(+21%)
- その他の地域:構成比8%(+28%)
海外は全体の68%を占め、比率は前年同期の65%から上昇しました。国内が2桁未満の伸びにとどまる一方、欧州・アジア・北米といった海外の主要地域はそろって2桁増。電力・鉄道といったインフラ需要が世界規模で拡大していることが、海外売上の伸びに表れています。
5. 通期見通しを上方修正
好調な出足を受けて、会社は通期見通しを引き上げました。売上収益は従来予想の11兆1,000億円から11兆7,000億円へ、調整後営業利益は1兆3,150億円から1兆4,080億円へ、親会社株主に帰属する当期利益は8,500億円から9,000億円へと上方修正。1株当たり利益の予想も188.78円から201.14円に引き上げています。
株主還元でも、中間配当予想を前年同期の23円から28円へ増額しました。第1四半期に約1,480億円の自社株買いも実施しており、業績と還元の両面で強気の姿勢がうかがえます。
6. 元機関投資家イズミダの視点:最終益の「微減」に惑わされず、エナジーの構造変化を見る
この決算で最も大事なのは、最終益が▲1.4%だったという表面の数字に引きずられないことです。減益の正体は前年にあった一時的な金融収益の反動であり、本業の調整後営業利益は4割増。会社が同じ日に通期見通しと中間配当を引き上げたことが、事業の実力への自信を何より雄弁に物語っています。決算は「どの利益段階を見るか」で印象が変わる——その典型例です。
注目すべきは、牽引役がエナジー、なかでもパワーグリッドである点です。生成AIの普及は語られがちですが、その足元では膨大な電力とそれを送る送配電網が要る。日立はAIの「インフラ側」で稼ぐ立場にあり、この四半期の64.5%増益は一過性ではなく、電力不足という世界共通の構造要因を映しています。もっとも、進捗率でみればまだ2割強を消化した段階で、為替や資材コストの前提が崩れれば景色は変わります。上方修正後の見通しを、次の四半期がどう裏づけるか。そこが次の確認ポイントです。


