制度は安全。では「あなた個人がもらえる額」はいくらか?

ここまで見てきたように、年金制度そのものが近い将来に破綻する可能性は低いと考えられます。しかし、「制度が破綻しない」ことと、「老後資金として十分な年金を受け取れる」ことは、まったく別の問題です。ここからは、実際に一人ひとりが受け取っている年金額を確認していきましょう。

令和8年度の年金額はいくら?

公的年金の受給額は、物価や賃金の動向を踏まえて年度ごとに見直されます。2026年6月支給分(4月・5月分)からは、国民年金(基礎年金)が前年度から1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。

  • 国民年金(老齢基礎年金・満額、1人分):7万608円(前年度比+1300円)
  • 厚生年金(夫婦2人分のモデル年金):23万7279円(前年度比+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(前年度比+1300円)
※厚生年金のモデル年金は、「男性の平均的な収入(平均標準報酬〈賞与含む月額換算〉45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金〈満額〉)の給付水準

このモデル年金23万7279円は、あくまで平均的な収入で40年間働いた世帯を想定した「例」であり、実際に受給者一人ひとりが受け取っている平均額とは異なります。次に、実際の受給者全体の平均額を確認してみましょう。

厚生年金・国民年金、実際の平均受給月額

ここからは、実際に年金を受け取っている全受給権者(60歳~90歳以降)の年金月額を、厚生労働省の統計から確認します。

厚生年金《平均月額の男女差・個人差》4/5

厚生年金《平均月額の男女差・個人差》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金(国民年金を含む)の平均月額

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

国民年金《平均月額の男女差・個人差》5/5

国民年金《平均月額の男女差・個人差》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

国民年金の平均月額

  • 全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

厚生年金は男女差が6万円ほどあるのに対し、国民年金の男女差は数千円程度にとどまります。これは、厚生年金の受給額が現役時代の収入や加入期間に大きく左右されるためです。

夫婦共働きで2人とも厚生年金を受け取る世帯もあれば、自営業などで国民年金のみの単身世帯もあり、実際に老後に受け取れる年金額は世帯の働き方によって大きく異なります。

鶴田 綾

「年金制度は破綻しない」という話と、「自分の年金だけで老後の生活が成り立つか」という話は、切り分けて考える必要があります。制度としての年金は、社会全体で支え合う仕組みとして今後も維持される可能性が高い一方、平均月額を見ると、それだけで現役時代と同じ水準の生活を続けるのは難しいという方が多いのが実情です。

「国が破綻させて年金がゼロになる」という極端な心配をするよりも、「平均的にはこのくらいの受給額になりそうだが、自分の場合は生活費とどのくらいの差があるか」を早めに把握しておくことのほうが、老後の安心につながります。

マクロの安心と、ミクロの準備は別に考える

ここまで見てきた通り、国全体で見た年金積立金は過去最高を更新しており、「国が意図的に年金制度を破綻させ、給付をゼロにする」といった極端な事態が近い将来に起きる可能性は低いといえます。

一方で、平均受給額だけを見ると、現役時代の生活費をそのままカバーできる水準とは言いきれません。本当の課題は、「制度が続くかどうか」ではなく、「平均月額と、自分が老後に必要な生活費との差(ギャップ)を、どう埋めるか」という点にあります。

特に50代など、老後が視野に入り始めた現役世代にとっては、次のような選択肢を早めに検討しておくことが、このギャップを埋める一助になります。

  • 年金の受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を検討する(受給開始を遅らせるほど、受け取る年金額は増額されます)
  • iDeCoやNISAなど、税制優遇のある制度を使って老後資金を計画的に準備する
  • 健康に配慮しながら就労期間を延ばし、年金以外の収入を確保する期間を長くする

年金制度そのものへの過度な不安に振り回されるのではなく、公的年金の実際の水準を正しく把握したうえで、自分に合った準備を少しずつ進めていくことが大切です。

参考資料

鶴田 綾