「年金は将来もらえなくなるのではないか」という不安の声は、これまでも繰り返し話題になってきました。
しかし、2026年8月7日に厚生労働省が公表した「厚生年金保険・国民年金の令和7年度収支決算の概要」によると、年金積立金は時価ベースで前年度より42兆5,136億円増加し、過去最高となる302兆5,893億円に達したことが分かりました。
本記事では、この最新の決算データから「年金制度は本当に潰れないのか」を確認したうえで、実際に一人ひとりが受け取っている年金額の実態や、老後に向けて今からできる備えについて考えていきます。
この記事では一部以下の記事を引用しています。
この記事の3つのポイント
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年金積立金は時価ベースで302兆円、過去最高を記録 -
支え手となる厚生年金の被保険者数は前年度比63万人増 -
「制度の安心」と「個人の受給額・老後準備」は別の話
令和7年度決算、年金積立金は過去最高の302兆円に
厚生労働省年金局が公表した「厚生年金保険・国民年金の令和7年度収支決算の概要」(2026年8月7日公表)によると、令和7年度決算結了後の年金積立金は、次の通りとなりました。
- 簿価ベース:130兆2,837億円
- 時価ベース:302兆5,893億円(前年度比+42兆5,136億円、過去最高)
内訳を見ると、厚生年金保険は6年連続の増加(時価ベースで前年度比+41兆2,005億円)、国民年金は2年ぶりの増加(同+1兆3,132億円)となっています。運用利回り(時価ベース)は、厚生年金保険が15.85%、国民年金が16.18%と、いずれも15%を超える高い水準でした。
「年金がなくなる」といった不安の声を耳にすることもありますが、少なくとも積立金の規模だけを見れば、過去最高を更新している状況です。
なぜ年金は潰れないのか?「支え手」と「運用益」の両輪
年金積立金がここまで積み上がっている背景には、主に2つの要因があります。
1つは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などによる市場運用の成果です。株式や債券などで運用した結果、前述の通り15%を超える利回りとなったことが、時価ベースの積立金を大きく押し上げました。
もう1つは、年金制度を支える「支え手」の増加です。令和7年度の厚生年金保険の被保険者数(年間平均)は4,342万8000人となり、前年度の4,279万7000人から約63万人増加しました。共働き世帯の増加やパート・アルバイトへの社会保険適用拡大などを背景に、保険料を納める人の数自体が増えていることも、年金財政を下支えする要因の一つです。
ただし、ここで一つ注意しておきたいことがあります。302兆5,893億円という数字は、あくまで市場の時価で評価した金額です。実際に積み立てられた元本に近い「簿価ベース」で見ると130兆2,837億円であり、時価との差は172兆円ほどあります。時価は株価や金利など市場環境によって変動するものであるため、今後も同じペースで増え続けるとは限らない、という点は踏まえておく必要があります。
「年金積立金が過去最高」というニュースを聞くと、老後への不安が一気に解消されたように感じる方もいるかもしれません。ただ、この302兆円という金額は時価評価であり、市場が良い時期には膨らみ、悪い時期には縮む性質のものです。
大切なのは、「時価で最高額を更新した」という一時点の数字に一喜一憂するのではなく、簿価と時価の両方を確認しながら、長期的にどう推移しているかという視点で見ることです。制度全体の話と、ご自身の家計の話は、分けて考えるようにしましょう。



