「老後資金は足りるのだろうか」といった不安を感じている方もいるのではないでしょうか。このような不安を裏付けるように、65歳以上で生活に「ゆとりがある」と感じている高齢者はわずか1割未満とされています。

木内 菜穂子
老後の生活費への不安を実感として持つ方は多い印象があります。今回は公的なデータを通じて、実際の生活実態を確認していきましょう。

主な収入が年金になる65歳以上の無職夫婦世帯では、毎月約4万2000円の赤字となっているのが現実です。

物価高が家計を直撃する現在、高齢者世帯の平均的な生活費や年金月額はいくらなのか、詳しく解説していきます。

なお、シニア世帯の家計収支や年金受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?60歳代以上の平均額と、無職世帯のリアルな家計収支を公開
「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?60歳代以上の平均額と、無職世帯のリアルな家計収支を公開

1. この記事を読むとわかる3つのポイント

  •  65歳以上高齢者世帯で生活に「ゆとりがある」と感じる人は約6.2%、1割に満たない
  •  65歳以上の夫婦のみ無職世帯は、毎月約4万2000円の赤字が発生している
  •  厚生年金の平均月額は15万289円、国民年金は5万9310円だが個人差は大きい

2. 生活に「ゆとりがある」高齢者は1割未満

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の高齢者世帯で生活に「ゆとりがある」と回答した方は1割未満となっています。

  • 大変苦しい:21.0%
  • やや苦しい:31.1%
  • 普通:41.7%
  • ややゆとりがある:5.4%
  • 大変ゆとりがある:0.8%

65歳以上の高齢者世帯で「ゆとりがある(大変ゆとりがある+ややゆとりがある)」と回答した割合は、合わせて約6.2%(1割未満)にとどまっています。

一方で、52.1%という半数以上が「苦しい」と感じており、「普通」と回答した約4割を合わせても、多くの高齢世帯が厳しい、または余裕のない生活を送っているのが現状です。

2026年度の年金額は、2025年度よりも国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げとなっています。しかし、それを上回る物価高の影響で購買力が低下し、生活感が「苦しい」「ゆとりがない」と感じやすくなっていると考えられます。

貯蓄がある世帯でも、「この貯蓄額で20年〜30年持つだろうか」という不安を感じるケースがあります。「貯蓄を切り崩す=経済的な安定がなくなる」というイメージから、「ゆとりがある生活とはいえない」と感じているかもしれません。

では、現在のシニア世代の毎月の生活費はどのくらいかかっているのでしょうか。次章で詳しく確認していきましょう。

木内 菜穂子
「普通」と回答した4割を含めても、多くの世帯が余裕のある生活とは言い難い状況です。貯蓄を取り崩すことへの不安から、実際の生活水準以上に苦しさを感じてしまう方もいるでしょう。

3. 65歳以上夫婦世帯では毎月約4万2000円の赤字

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上夫婦世帯では、毎月約4万2000円の赤字となっています。

65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計収支2/3

65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 実収入:25万4395円
  • 非消費支出:3万2850円
  • 可処分所得:22万1544円
  • 消費支出:26万3979円
  • 収支:▲4万2434円

厚生年金や国民年金などを主とした実収入が25万4395円で、そこから社会保険料や税金などの非消費支出が3万2850円差し引かれて、手取り額(可処分所得)は22万1544円となります。

食料費や住居費といった消費支出が26万3979円かかり、可処分所得から差し引くと4万2434円の赤字となる計算です。

毎月4万2000円が継続して不足する場合、1年間では50万4000円の赤字になります。仮に夫婦共に90歳まで生存した場合、65歳からの25年間で1260万円が不足する可能性があります。

したがって、老後の生活費の不足分を補填するだけでも、1000〜1500万円ほどの貯蓄が必要になるといえるでしょう。

木内 菜穂子
毎月の赤字額は一定ではなく、医療費や家電の買い替えなど、突発的な支出がある月にはさらに膨らむこともあります。平均値はあくまで目安として捉え、ご自身の家計に近い数字であらためて試算しておくことをおすすめします。