5. 【意外に多い】不動産の売却などで一時的に「3割負担」になるケースも
「3割負担なんて自分には関係ない」と感じた方もいるかもしれません。
ただ、窓口では「継続的な収入は多くないのに、なぜか医療費が3割負担になった」という相談を何度も受けていました。
5.1 一時的な所得も影響を受ける
年金生活に入ると、公的年金の受取額は基本的に大きく変動しないため、「所得もほぼ一定」というイメージを持ちがちです。
しかし、以下のような一時的な所得は、その年の総所得金額に上乗せされます。
- 自宅や相続した不動産を売却したときの譲渡所得
- 金融商品を売却したときの譲渡所得(特定口座・源泉徴収なしの口座など)
- 個人年金保険の一時金や満期返戻金
- 親族から受け取った一時的な報酬や給与
特に不動産の売却は金額が大きくなりやすく、たまたま所得が跳ね上がった年の翌年、窓口負担がいきなり3割に切り替わってしまうケースは少なくありませんでした。
「継続して収入が増えたわけではないのに」という戸惑いも一緒に窓口へ持ち込まれる、そんな相談です。
5.2 相談窓口は「広域連合」ではなく市区町村の役所・役場
後期高齢者医療制度の運営主体は都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合ですが、実際の窓口業務(保険料の賦課決定通知、資格確認書の交付、負担割合の相談など)は市区町村が担っています。
「負担割合が急に上がった」「判定の根拠を確認したい」という相談は、まずお住まいの市区町村の役所・役場の担当窓口(多くの自治体で「保険年金課」「後期高齢者医療係」などの名称)が入口になります。
電話や来庁の前に、判定根拠となった前年の所得の内訳(不動産売却の譲渡所得、年金収入など)を思い出しておくと、相談がスムーズに進みやすくなります。
6. 【医療費が高額になったら】高額療養費制度で自己負担を軽減
負担割合とあわせて確認しておきたいのが、高額療養費制度です。
これは、1か月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻される公的な仕組みです。
6.1 自己負担限度額は所得区分ごとに設定
後期高齢者医療の高額療養費制度では、外来(個人単位)と「外来+入院」(世帯単位)に分けて、所得区分ごとに毎月の自己負担限度額が定められています。
負担割合と同じく所得区分と連動しているため、8月1日の切り替えで区分が変わると、高額療養費の限度額もあわせて動く点に注意が必要です。
6.2 初回のみ手続きが必要なケースも
高額療養費制度は、多くの自治体で初回のみ申請が必要な仕組みです。
1度申請すると、次回以降は登録した口座に自動で払い戻される運用が一般的ですが、対応は自治体によって異なるため、案内が届いた際は放置せず確認しましょう。
マイナ保険証で受診すると、医療機関がオンライン資格確認システムを通じて所得区分を確認してくれるため、事前手続きをしなくても窓口の支払いを自己負担限度額までに抑えられます。
マイナ保険証を利用しない方や、オンライン資格確認に未対応の医療機関を受診する予定がある方は、事前に「限度額適用認定証」を保険者(後期高齢者医療広域連合)へ申請しておくと安心です。
高額療養費の申請と同様に見逃せないのが、高額介護合算療養費と、療養費の申請です。
前者は世帯内で1年間(8月〜翌年7月)に支払った医療と介護の自己負担を合算し、上限額を超えた分が払い戻される制度のことです。また後者は、やむを得ない事情で医療費を全額自己負担した場合などに、申請によってその一部が払い戻される制度です。どちらもたくさんの申請を受けつけていました。
該当項目がないか、ぜひ点検してみてください。
7. 後期高齢者医療の保険料改定は「負担割合の切り替え」と別のタイミング
ここまで見てきたのは「窓口負担の割合」の話でした。
混同されがちですが、実際に納める「保険料」の改定タイミングは、負担割合の8月切り替えとは別に動いています。
7.1 保険料は年度単位(4月〜翌年3月)で決まる
後期高齢者医療の保険料は、都道府県ごとの広域連合が2年ごとに保険料率を見直す仕組みで、年度単位(4月〜翌年3月)で改定されます。
保険料の内訳は、加入者一人ひとりに一律で課される「均等割額」と、前年の所得に応じてかかる「所得割額」の2つで構成されます。
7.2 一時的な所得増は保険料にも影響する
前段で触れた不動産売却などの一時的な所得増は、窓口負担割合だけでなく、翌年度の後期高齢者医療保険料の所得割額にも影響します。
ただし、後期高齢者医療保険料の所得割は「総所得金額等から基礎控除(原則43万円)を差し引いた額」を基準としているため、住民税で使う医療費控除や生命保険料控除などの所得控除の影響は受けません。
8. 【まとめ】8月1日の切り替えがあるかも?慌てずまず現状把握から
後期高齢者医療の窓口負担割合が毎年8月1日に見直されるのは、住民税の課税情報が確定する6月を待って判定するためであり、決して恣意的な時期ではありません。
負担割合は前年の所得を映しているので、不動産売却などの一時的な所得増があった翌年は、思わぬかたちで3割負担に切り替わることもあります。
「なぜ変わったのか」の根拠を知りたいときは、広域連合ではなくお住まいの市区町村の役所・役場の窓口が最初の相談先です。
負担割合の変更に加えて高額療養費制度の利用も視野に入れながら、慌てず、まず現状を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
【筆者からひとこと】
かつて自治体で国民健康保険と後期高齢者医療を担当していた立場からお伝えすると、8月1日の切り替えを機に「なぜ急に負担割合が上がったのか」と窓口を訪れる方は本当に多くいました。特に、不動産売却などで一時的に所得が増えた年の翌年は、本人が想像していない区分に切り替わることも少なくありません。判定根拠の説明や誤認の訂正は市区町村の窓口が担っています。まずはお住まいの役所・役場で相談してみてください。
参考資料
太田 彩子
