6. 【75歳以上 後期高齢シニア】老後資金はどれくらいある?平均貯蓄額と金融資産の内訳を読み解く
年金だけでは不足する生活費を支えるうえで、大きな役割を果たすのが貯蓄や金融資産です。
総務省「家計調査 貯蓄・負債編 2025年〔二人以上の世帯〕」によると、世帯主が75歳以上の無職世帯における平均貯蓄額は2392万円となっています。
貯蓄:2392万円
金融機関:2383万円
- 通貨性預貯金:763万円(31.8%)
- 定期性預貯金:775万円(34.5%)
- 生命保険など:396万円
- 有価証券:449万円(18.4%)
- 貸付信託・金銭信託:10万円
- 株式:223万円
- 債券:45万円
- 投資信託:171万円
金融機関外:9万円
負債:24万円
資産全体の約6割を預貯金が占めており、安全性を重視した資産構成となっていることが分かります。
一方で、物価上昇が続く環境では、預貯金だけでは実質的な資産価値が目減りする可能性もあります。
老後資金を長く維持するためには、資産運用や自宅の有効活用(リバースモーゲージなど)も含め、「資産寿命」を延ばすという視点を持つことが重要になるでしょう。
7. 【75歳以上 後期高齢シニア】働く人が増える理由とは?年金以外の収入を求める背景
老後の生活を支える収入の柱は公的年金ですが、「年金だけでは生活費が足りない」と感じる人は少なくありません。
総務省の統計(2024年)によると、65~69歳の就業率は53.6%、70~74歳は35.1%、75歳以上でも12.0%となっています。
75歳以上の後期高齢者でも、一定数の人が仕事を続けています。その背景には、生活費を補うためだけでなく、健康維持や社会とのつながりを保ちたいという思いもあるようです。
7.1 高齢者が働く理由とは
同調査では、高齢者が仕事を続ける理由についても分析されています。
理由①家計のため
ここまで見てきたように、後期高齢シニア夫婦世帯の家計は、平均すると毎月赤字となっています。公的年金は老後生活を支える大切な収入ですが、医療費や生活費を含めたすべての支出をまかなえるとは限りません。
不足する生活費を補う方法としては、貯蓄を取り崩すだけでなく、「働いて収入を得る」という選択肢もあります。
特に物価高が続く現在では、毎月数万円の収入でも家計を支える大きな助けになるでしょう。
理由②高齢者のライフスタイルにフィットする働き方
近年では、「週に数日だけ働く」「体力や健康状態に合わせて無理なく働く」といった柔軟な働き方が広がり、自分の生活スタイルに合わせて仕事を続ける人が増えています。
高齢期は体力や健康状態に個人差があるため、誰もが同じ働き方を選べるわけではありません。大切なのは、フルタイム勤務にこだわることではなく、自分に合った無理のない範囲で収入を確保することです。
短時間勤務や、これまでの経験や資格を生かせる仕事、地域での軽作業など、自分に合った働き方を選ぶことで、家計だけでなく生活全体の安定にもつながるでしょう。
理由③「支出抑制」と「資産寿命」への効果
高齢期に働くメリットは、収入を得られることだけではありません。家計全体で見ると、さまざまなプラスの効果が期待できます。
たとえ毎月数万円の収入であっても、家計の赤字を減らすことができれば、貯蓄を取り崩すペースを抑えられます。その結果、老後資金をより長く維持する「資産寿命」を延ばすことにもつながるでしょう。
理由④健康面への影響
実際には生活費を補う目的で働く人が多い一方で、仕事を通じて生きがいや人との交流が生まれ、社会とのつながりを維持しやすくなるというメリットもあります。
働くことで生活リズムが整い、外出する機会が増えるため、健康維持につながる可能性も期待できます。その結果として、将来的な医療費や介護費の増加を抑えることにもつながる可能性があり、こうした間接的な効果も決して小さくありません。
75歳を過ぎると、同じ年齢であっても健康状態や家族構成によって家計の状況は大きく変わります。
例えば、同じ夫婦世帯でも、次のようなケースでは必要となる生活費や支出の内容が異なります。
- 夫婦ともに健康で自立した生活を送っている世帯
- 夫婦のどちらか一方が要介護となっている世帯
- 配偶者を亡くし、実質的に単身に近い生活を送っている世帯
健康状態は老後の家計を左右する大きな分岐点の一つです。
介護が必要になると、医療費だけでなく介護サービスの自己負担や生活支援サービスなど、新たな支出が発生しやすくなります。
また、実質的に一人暮らしとなった場合でも、住居費や光熱費などの固定費は想像ほど減らず、結果として家計への負担が重くなるケースも少なくありません。
8. 【75歳以上 後期高齢シニア】医療費は何割負担?1割・2割・3割の判定基準を整理
75歳になると、原則としてすべての人が後期高齢者医療制度へ加入します。この制度では、前年の所得などをもとに、医療機関で支払う窓口負担割合が決まります。
基本となる自己負担割合は1割ですが、医療費の増加などを背景に、2022年10月からは一定以上の所得がある人を対象に2割負担が新たに導入されました。
8.1 負担割合と判定基準
- 1割:現役並み所得者、2割該当者に該当しない方
- 2割:一定以上の所得がある人:下記1、2の両方に該当する場合
- 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の人がいる
- 同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。(1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は合計320万円以上)
- 3割:現役並み所得者
- 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上のかたがいる場合(注)一定の基準・要件を満たす場合、窓口負担割合が1割又は2割になるケースがある
なお、2割負担の急激な負担増を抑えるために設けられていた配慮措置は、2025年9月末で終了しています。
今後は所得状況によって2割負担となる人が増える可能性もあるため、自身の負担割合を定期的に確認しておくことが大切です。
医療費の自己負担が増えれば、その分だけ貯蓄を取り崩すペースも早まります。老後資金を長く維持するためにも、自分がどの負担区分に該当しているのかを把握しておきましょう。
9. 筆者からのコメント
高齢期の医療費不安を和らげる強い味方が「高額療養費制度」です。これは入院や手術だけでなく、慢性疾患などの通院時でも、1カ月の医療費が所得ごとの自己負担限度額を超えた場合に超過分が払い戻される心強い仕組みです。
ただし、活用する上で注意すべきポイントもあります。入院時の食事代や差額ベッド代など「保険適用外の費用」は全額自己負担となります。また、8月にも制度の見直しが行われていますが、今後も自己負担限度額などの変更が行われる可能性があります。
「制度があるから安心」と過信せず、定期的に最新の情報を確認し、ご自身がどの所得区分に該当するのかを把握しておくことが大切です。
公的制度の適用範囲を正しく理解し、対象外となる支出も見込んだ上で医療費を見積もることが、より現実的で安心できる老後の家計設計につながるでしょう。
10. まとめにかえて|長寿時代を安心して暮らすための家計管理術
後期高齢シニア夫婦の多くは、公的年金を中心に生活しながら、不足する生活費を貯蓄の取り崩しによって補っているのが実情です。
長い老後を安心して過ごすためには、「いくら資産を持っているか」だけではなく、「その資産でどれだけ長く生活を支えられるか」という資産寿命の視点を持つことが欠かせません。
現在の家計状況を把握したうえで、公的制度を上手に活用し、必要に応じて就労や資産管理を取り入れることが、これからの長寿時代における家計防衛の大切なポイントになるでしょう。
参考資料
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省「家計調査 家計収支編 2025年〔二人以上の世帯〕」(第3-2表)
- 総務省統計局「家計調査 用語の解説」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書〈特集①〉高齢者の経済生活をめぐる動向について」
- 生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」
- 厚生労働省年金局「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2025年 〔二人以上の世帯〕」(第8-10表)
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」




