2026年も下半期に入り、日々の生活で物価の上昇を実感する場面が引き続き増えていますね。

総務省の最新の発表によると、2020年を100とした消費者物価指数の総合指数が113.6に達し、前年同月比で1.7%上昇しました。また、生鮮食品を除く総合指数(前年同月比+1.6%)や、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(同+1.7%)もそろって上昇を示すなど、私たちの生活に直結するインフレ傾向が続いています。

さらに帝国データバンクの調査によれば、6月の飲食料品の値上げは1078品目にのぼりました。中東情勢の悪化や原油高を背景に、夏以降も広範囲な値上げラッシュが続く見通しです。

一方で、今年度の公的年金は国民年金が+1.9%、厚生年金が+2.0%と4年連続のプラス改定となり、直近の6月15日支給分(4・5月分)からいよいよ増額された年金の受け取りが始まりました。しかし、年金額の伸びは物価高のペースには追いついておらず、実質的な価値は目減りしているのが実情です。

長寿化が進む現在、ゆとりのある老後を迎えるためには、年金制度の現状を正しく理解し、早めに老後資金の準備を始めることが不可欠です。

本記事では、公的年金の基本的な仕組みや、働き方別の受給額モデルケース、シニア世帯のリアルな家計収支などの最新データに加え、同じ年収でも「共働き」は貯蓄が少なめになる背景など、データで読み解く「今の貯蓄力」と「将来の年金力」についても詳しく解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  働き方や性別で将来の年金額が大きく変わる:厚生年金か国民年金かで月10万円以上の差が生じることも。男女の平均受給額にも約6万円の開きがあります。
  •  シニア無職世帯は月平均「約4.2万円の赤字」:収入の大半を年金に頼る世帯では、毎月の生活費の不足分を貯蓄で補うのが現実です。
  •  同じ年収でも「共働き」は今の貯蓄が少なめ?:目先の「貯蓄力」は片働き世帯が多い傾向にありますが、共働き世帯には一生涯続く「将来の年金力」という強力な武器があります。

2. 国民年金と厚生年金、制度の基本をおさらい

日本の年金制度は2階建て1/6

日本の年金制度は2階建て

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」をもとにLIMO編集部作成

日本の公的年金制度は「2階建て」の構造になっています。

  • 1階部分:国民年金(基礎年金) 日本国内に住む原則20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務があります。保険料は全員一律です。
  • 2階部分:厚生年金 会社員や公務員などが、国民年金に上乗せして加入する制度です。現役時代の給与や賞与などの報酬額に応じて保険料が変わり、将来の受給額も変動します。

3. 最新データで確認!公的年金の平均受給額と男女差

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、実際に受給している方の平均月額を見てみましょう。

3.1 国民年金の平均月額(男女差は約4000円)

男女別グラフ:国民年金の平均・個人差2/6

男女別グラフ:国民年金の平均・個人差

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 全体平均…5万9310円
  • 男性…6万1595円
  • 女性…5万7582円

3.2 厚生年金の平均月額(男女差は約5万8,000円)

男女別グラフ:厚生年金の平均・個人差3/6

男女別グラフ:厚生年金の平均・個人差

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 全体平均…15万289円
  • 男性…16万9967円
  • 女性…11万1413円

国民年金は保険料が一律のため男女差は小さいですが、厚生年金では約5万8000円もの大きな開きがあります。

これは、女性が結婚や出産、育児などのライフイベントで離職・時短勤務を選ぶことが多く、厚生年金の加入期間や現役時代の収入に影響しているためだと考えられます。

4. 【働き方別】将来の年金はいくら?5つのモデルケース

平均額だけでなく、より自分に近い状況をイメージするために、厚生労働省の「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」から、5つの働き方別モデルケースを紹介します。

ライフコース別年金額例5パターン4/6

ライフコース別年金額例5パターン

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(色枠は筆者加筆)

4.1 【パターン1】会社員として長く勤務した男性(厚生年金中心)

想定:平均収入(月額換算)約50.9万円で約40年就業 年金月額の目安:17万6793円

4.2 【パターン2】自営業・フリーランスの男性(国民年金中心)

想定:厚生年金への加入期間が約7.6年と短く、大部分が国民年金 年金月額の目安:6万3513円

4.3 【パターン3】キャリアを重ねて長く勤務した女性(厚生年金中心)

想定:平均収入(月額換算)約35.6万円で約33年就業 年金月額の目安:13万4640円

4.4 【パターン4】自営業・フリーランスの女性(国民年金中心)

想定:厚生年金への加入期間が約6.5年と短い 年金月額の目安:6万1771円

4.5 【パターン5】専業主婦の期間が長い女性(第3号被保険者中心)

想定:扶養内で過ごした期間が長く、厚生年金の加入期間は約6.7年 年金月額の目安:7万8249円

この結果から、同じように長く働いていても、厚生年金への加入期間や現役時代の収入によって、将来の受給額に月額10万円以上の差が生じることがわかります。

5. 筆者からのコメント

熊谷 良子

50歳代になり「ねんきん定期便」を見ると、年金はまさに「働き方の履歴書」だと痛感します。

私自身もフリーランス経験があり、受給見込額には身につまされます。

自営業の方は、月額400円の納付で将来の年金が手軽に増やせる「付加年金」やiDeCoを活用し、自ら「2階部分」を作る工夫が欠かせませんね。

また、かつて認知症の家族を介護しながら働いた経験から、老後には見えない出費が潜むと実感しています。

生命保険文化センターの調査でも、介護に要する費用の月額は平均9.0万円、期間は平均4年7カ月という結果が出ています。

早いうちから年金知識を備えることで、自分らしいキャリアと遠い将来の安心を両立する第一歩になるかもしれません。