総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年」によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が11万8465円であるのに対し、1カ月あたりの生活費(消費支出)は14万8445円となっています。

このデータからは、標準的な単身シニア世帯において、平均で毎月およそ3万円(正確には2万9980円)の赤字が発生し、それを貯蓄の切り崩しで補っているという厳しい実情が明らかになります。

こうした収支状況を考えると、老後の生活を安定させるためには、年金収入に加えて、いかに他の収入源や資産を確保するかが重要な鍵となります。

しかし、実際に十分な額の年金を受け取れている人は、どのくらいの割合で存在するのでしょうか。

次回の年金支給日は8月14日(金)ですが、その支給額で生活をまかなえるのか、不安に思う方も少なくないでしょう。厚生労働省の資料を基に、現在のシニア世代における「年金受給の実態」と生活への意識について見ていきましょう。

1. この記事の3つのポイント

  •  単身シニアの家計は毎月約3万円の赤字:物価上昇の影響により、年金だけで生活費をまかなうのが難しく、ゆとりを感じられないシニア世代が増加しています。
  •  厚生年金「月15万円以上」は半数未満:男女合わせた厚生年金受給者のうち、月額15万円以上受け取っている人は全体の49.8%にとどまっています。
  •  早い段階での資産形成とキャリア設計がカギ:年金制度や改正動向を正しく理解し、長く働き続けることや計画的な資産運用など、早めの備えが不可欠です。

2. 60歳代単身の50.7%が「年金だけじゃ日常生活費も支払えない」厳しい現実

実際に年金を受給しているシニア世代は、日々の暮らし向きについてどのように感じているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」のデータからは、シニア世代が直面する厳しい実態がうかがえます。

2.1 「年金でさほど不自由なく暮らせる」と感じる人は少数派

60歳代と70歳代の回答を見ると、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と答えた人の割合は、二人以上世帯・単身世帯のどちらにおいても8%~12%台に過ぎません。

2.2 単身世帯で目立つ「日常生活費もまかなうのが難しい」との声

一方で、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した人の割合は、二人以上世帯では26%~33%台ですが、単身世帯では60歳代で50.7%、70歳代で35.5%にのぼります。

2.3 ゆとりがない最大の要因は「物価上昇」

年金生活にゆとりを感じられない理由として、すべての年代・世帯類型で「物価上昇等」がトップとなり、いずれも50%を超えています。次いで「医療費の個人負担増」や「年金支給額の切り下げ」といった理由が挙げられました。

この調査結果から、多くのシニア世帯が物価高による家計への圧迫を強く感じており、年金収入だけでゆとりのある生活を送ることが困難になっている状況が分かります。

3. 【60歳代以降】厚生年金と国民年金の合計「月15万円」の壁

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均月額は、男女全体で15万289円です。

この金額には、1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)の月額分も含まれている点に注意が必要です。

受給額ごとの人数分布は、以下のようになっています。

3.1 厚生年金の「受給額ごとの受給権者数」

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

データを見ると、厚生年金の受給額が月15万円以上の人は全体の49.8%であり、半数に達していないことが分かります。

さらに、厚生年金を受給していない人も含めて考えると、この割合はより一層低くなるのが実情です。

4. 筆者からのコメント

熊谷 良子

受給額の分布を見ると「年金加入履歴は現役時代の働き方の履歴」だと痛感します。

私自身、50歳代に入り「ねんきん定期便」の見込額を確認した際、フリーランス時代や、認知症家族の介護で働き方を模索した期間が長かった分、受給額の少なさにハッとしました。

そこで知っておきたいの制度の一つが「繰下げ受給」という選択肢。

年金の受け取り開始を1か月遅らせるごとに0.7%増額され、たとえば70歳まで5年遅らせれば42%も増額されます。

多様な働き方が広がる今、若いうちから定期便等で現状を把握し、長く働くことやNISA等を活用して自分らしい老後戦略を立てていきたいですね。