6. 【筆者からのアドバイス】"取り崩し"を計画的に行うためにできること
筆者はこれまで、退職後の資産の取り崩しについて相談を受ける機会が数多くありました。
そこで感じたのは、「資産を増やす」ことには関心が高い一方、「資産をどう取り崩していくか」については、驚くほど無計画な方が多いという実感です。
記事の冒頭で試算したとおり、貯蓄の中央値1178万円は、毎月の赤字ペースが変わらなければ約23年で目安を下回ります。
しかし、実際には「毎月いくら赤字が出ているか」を正確に把握していない方が少なくありませんでした。取り崩しのペースがわからなければ、資産が何年持つのかも当然わかりません。
そこで、筆者が実際の相談でお伝えしていたアドバイスを、3点に整理してご紹介します。
まずは「昨年の同じ時期」と口座残高を比べてみる
家計簿を細かくつけるのが難しくても、銀行口座の残高を、1年前の同じ時期と比較するだけで、実際の年間の取り崩し額がわかります。
想定より減っていた場合は、生活費の見直しが必要なサインです。
「守る資産」と「使う資産」を分けて管理する
すべての貯蓄を同じ財布として扱うと、取り崩しのペースが把握しにくくなります。当面の生活費に充てる分と、医療・介護費や緊急時のために残しておく分を、あらかじめ分けておくと管理がしやすくなります。
取り崩す順番を決めておく
預貯金、株式や投資信託、生命保険など、資産の種類によって取り崩しやすさや税金の扱いは異なります。
相場が悪いタイミングで金融商品を売却せざるを得ない、といった事態を避けるためにも、どの資産から使うか、あらかじめ順番を決めておくことをおすすめします。
貯蓄額そのものと同じくらい、「どう使っていくか」の計画性が、老後の安心感を左右します。まずは、ご自身の毎月の赤字額を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
7. 監修者のコメント:「守る資産」と「使う資産」を分けて管理して
銀行員時代、窓口では資産を「増やす」ご相談は多い一方、実際に取り崩しながら生活されているお客様の「減らし方」に関するご相談は、想像以上に手探りで進めている方が多いという印象を持っていました。
加藤さんのアドバイスにもあるとおり、まずは毎月の赤字額を正確に把握することが第一歩です。銀行口座の残高を1年前と比べてみるだけでも、実際の取り崩しペースが見えてきます。
「守る資産」と「使う資産」を分けて管理する考え方も、窓口での相談経験から非常に納得感があります。当面の生活費用の口座と、まとまった資産を運用・保管する口座を分けておくだけで、心理的な安心感も大きく変わります。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
加藤 聖人
