フリーランスとして自由な裁量で働く30代・40代の皆さん。今の働き方にやりがいを感じる一方で、「老後のお金」についてふと不安になることはありませんか?
2026年7月15日に厚生労働省が公表した「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」によると、公的年金や恩給を受給している高齢者世帯のうち、それらが家計収入の「すべて」となっている世帯は実に44.0%にのぼります。
「準備が進んでいなくても、いざとなれば年金があるから大丈夫だろう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、フリーランスにとってこの考えは非常に危険です。会社員や公務員が加入する「厚生年金」の上乗せがないフリーランス(第1号被保険者)は、原則「国民年金のみ」となるからです。
実際に、1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)のみを受け取る場合、「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均受給月額は全体で5万9310円にとどまります。
最新の令和8年度の満額受給であっても、月当たり7万608円です。2026年度(令和8年度)の年金額は前年度からプラス改定(国民年金+1.9%、厚生年金+2.0%)されたものの、長引く物価高に追いついているとは言えません。
「今の生活費を考えると、月約6〜7万円ではとても心もとない…」と感じた方へ。まだ時間のある30歳代・40歳代からできる、老後に備える具体的な方法をご紹介します。
フリーランスは会社員のように厚生年金や退職金がないため、年金だけで生活するのは非常に困難です。
「まだ先のこと」と思わず、体力と時間がある30歳代・40歳代のうちに現状を把握することが大切。
今すぐできる備えを知って、将来のお金の不安を少しでも軽くしていきましょう。
1. 平均所得と中央値のギャップが示す家計の現実
老後資金など貯蓄を増やすための原資となるのが「所得」ですが、その実態を正確に把握するには「平均」と「中央値」の違いを知ることが大切です。
同調査によると、全世帯の1世帯当たり平均所得金額は575.2万円ですが、所得を低い順に並べたときにちょうど真ん中にくる「中央値」は451万円となっています。
実に平均所得金額を下回る世帯の割合は61.5%にのぼり、少数の高所得世帯が全体の平均を大きく押し上げていることが分かります。
「平均所得は約575万円」と聞くと焦るかもしれませんが、多くの世帯にとって実感に近いのは、平均値よりも約120万円低い約451万円(中央値)の方です。
まずは周りの平均データと比べて焦ることなく、身の丈に合った無理のない資産形成を始めることが大切です。
老後に向けた資産形成には「付加保険料」や「iDeCo」など、税制優遇を受けながらコツコツ準備できる国のお得な制度があります。
フリーランスだからこそ活用したい3つの制度をおさえていきましょう。
2. 付加保険料(国民年金付加年金制度)の活用
フリーランスなど「国民年金第1号被保険者」または「国民年金の任意加入被保険者」(65歳以上の方を除く)に該当する方は、毎月の年金保険料に加えて「付加保険料」を支払うことができます。
2.1 付加保険料とは
これは、月額400円を支払っておくことで、将来の老齢年金の受給額が増える制度です。付加保険料を納めた方が65歳以降に受け取れる「付加年金額」は、「200円×付加保険料納付月数」から算出できます。
2.2 【例:20~60歳の40年間納めた場合】
- 付加保険料の納付総額:19万2000円(400円×12カ月×40年)
- 付加年金額(年間):9万6000円(200円×12カ月×40年)
毎年の年金受給額が9万6000円もアップします。この制度の最大のメリットは、付加年金を「2年間」受け取ることで支払った保険料の元が取れる点です。
3年目以降もずっと増額分を受け取れるため、非常に効率の良い制度といえます。
※「第1号被保険者」…日本に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者(フリーランス)や農業・漁業者、学生や無職の方、その配偶者の方のこと。厚生年金保険や共済組合等に加入している方は除きます。
※「任意加入被保険者」…保険料を納める期間や加入者である期間が短いなどの理由から、60歳以降も国民年金に任意で加入する方のこと。
3. 国民年金基金制度の活用
付加保険料と同じく、フリーランス(国民年金第1号被保険者など)が加入できるのが「国民年金基金」です。
これは、厚生年金に加入していない自営業者などが、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せできる公的な年金制度です。
65歳から生涯受け取る「終身年金」が基本となるため、長い老後の生活にしっかりと備えることができます。
万が一早期に亡くなった場合でも家族に遺族一時金が支給されるため、掛け捨てにならない点も安心です。
3.1 【国民年金基金の特徴】
- ライフプランに合わせ、年金額や受取期間を設定できる
- 加入後も年金・掛金の額を口数単位で増減できる
- 掛金を年度分前納すると割引がある
ただし、国民年金基金制度は国民年金の付加年金を代行していることから、付加年金との併用はできません。
また、一度加入すると自己都合での任意脱退や中途解約はできない点には注意が必要です。
4. 自分で作る年金「iDeCo(個人型確定拠出年金)」
「iDeCo」は、自分の年金を自分で準備するための制度です。最大のメリットは以下の3つの手厚い税制優遇にあります。とくに、自分で確定申告を行うフリーランスにとって、掛金が全額所得控除になる点は大きな節税効果を生みます。
4.1 【iDeCoの3つの税制優遇】
- 掛金が全額所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減される
- 運用益が非課税になる(通常約20%の税金がかかる運用益が非課税に)
- 受給年齢に到達して受け取る際にも所得控除が受けられる
メリットが多い一方で、「60歳までは原則お金を引き出せない」「開始年齢が遅くなると運用益が思うほど出ない」というデメリットもあります。
だからこそ、運用期間を長く確保できる30歳代・40歳代のうちに始めるのがおすすめです。
フリーランスの強い味方となるのが「付加保険料」「国民年金基金」「iDeCo」です。
とくにiDeCoは、掛金が全額所得控除になるため、毎年の税金負担を減らしながら老後資金を作れる一石二鳥の制度。
節税効果を実感しやすいフリーランスだからこそ、早めに取り入れてほしい仕組みです。
5. 国民年金基金」「iDeCo」の違いって?
本来受け取れる国民年金にプラスして、老後に備えることができる「国民年金基金」や「iDeCo」。
どちらの手段にしようか、悩んでいる方もいることでしょう。ここで、それぞれの違いやポイントを整理してみましょう。
5.1 国民年金基金
- 掛金は、加入時の年齢やプランによる
- 基本終身年金
- 開始年齢は原則65歳(プランによっては60歳から)
- 運用指示は不要
【ポイント】
- 有期年金もあるが、基本は終身年金。そのため、加入時の年齢やプランに応じた掛金を払うと、老後は一定の金額をずっと受け取ることが可能。
- 掛金は社会保険料控除として全額所得控除できる。
- 受け取る年金額が事前に把握できる。
5.2 iDeCo
- 掛金は、月額5000円以上1000円単位
- 基本有期年金
- 開始年齢は60〜65歳(加入期間によって異なる)
- 運用指示が必要
【ポイント】
- 自分で掛金を拠出し運用する制度であり、資産運用となる。
- 金融機関や商品は自分で選択する。
- 運用金額に応じて、60歳以降に給付を受け取れる。
- 普通の個人年金保険や資産運用と異なり、税制面で優遇される。(小規模企業共済等掛金控除として税金が優遇されるうえ、通常約20%かかる運用益が非課税になる)
なお、フリーランス(第1号被保険者)の場合、国民年金基金とiDeCoの併用は可能ですが、両方合わせて年額81万6000円(月額6万8000円)が掛金の上限となっています。
6. 【コラム】半数以上の高齢者世帯が「生活が苦しい」と実感
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査」で高齢者世帯の暮らし向きに関する意識を見ると、厳しい現実が浮かび上がります。
「大変苦しい」(25.2%)と「やや苦しい」(30.6%)を合わせると55.8%にのぼり、実に半数以上のシニアが日々の生活に経済的な厳しさを感じています。
一方で「ゆとりがある」と答えた世帯は合計でもわずか4.2%にとどまっており、経済的な余裕を持てているのはごく一握りというのが実態です。
物価高の影響が長引く中、フリーランスのように年金というベースの収入源が少ない世帯ほど、家計のやり繰りは困難になります。
7. さいごに
高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と感じる今、国民年金だけでゆとりある老後を送るのは厳しいのが現実です。
とくに、会社員のような手厚い退職金や厚生年金がないフリーランスにとって、自分自身の行動だけが将来の身を守る盾となります。
65歳はまだ先のことのように感じるかもしれません。しかし、「時間」は資産形成において最も強力な味方です。
インフレで単なる預貯金が目減りするリスクがある中、今回ご紹介した「付加年金」で手堅く増やす、「国民年金基金」で終身のベースを作る、あるいは「iDeCo」の税制優遇を生かして運用するなど、今のうちから「自分年金」づくりを始めることが不可欠です。
まずは無理のない金額から最初の一歩を踏み出してみましょう。自由な働き方をずっと続けていけるよう、今日からできる備えを始めていけると良いですね。



インフレで預貯金も目減りするリスクがある中、今回ご紹介した制度を使った「自分年金」づくりは強力な防衛策になります。まずは無理のない金額から、今日から第一歩を踏み出してみませんか?