いまから10年ほど前、筆者が銀行員時代は「変動にするか固定にするかで悩んでいます」というお客さまは、実はあまり多くありませんでした。

当時は超低金利が続いており、「変動でいいですよね?」とほぼ決め打ちで来られる方がほとんど。金利が上がる気配は全く感じられず、固定との差も大きかったため、悩む余地すらなかったのかもしれません。

でも、今は違います。金利は上昇傾向が続き、変動金利でローンを組んでいる方は「このままで大丈夫かな」と不安になり始めているのではないでしょうか。

さらに、これから住宅購入を検討している方にとっては、建築資材の高騰で物件価格自体が上がり、金利も上がりつつあるという厳しい状況が重なっています。「本当に今、家を買っていいのだろうか」と悩まれるのも無理はありません。

この記事では、ローン残高3000万円・残り返済期間20年・現在の適用金利0.4%という条件から、変動金利が0.5%上昇した場合の返済額の変化をシミュレーションします。

変動金利の仕組みと合わせて、現在の状況を整理していきましょう。借入を検討している方も、今後のマネープランの参考にご覧ください。

1. 変動金利に先行する固定金利(フラット35)の最新動向

住宅ローンの借り換えや見直しを考えるとき、まず参考になるのが固定金利の動きです。

一般的に、固定金利は変動金利より先に市場金利を反映する傾向があります。

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フラット35金利推移

出所:住宅金融支援機構「フラット35 金利推移」をもとにLIMO編集部作成

代表的な固定金利商品「フラット35」の直近の金利水準は、最低3.14%・最高5.4%。グラフを見ると、明確な上昇傾向が読み取れます。

固定金利がここまで上がっている状況は、変動金利の今後を考える上でも無視できないシグナルといえます。

2. 金利が0.5%上がると、月々の返済額はどう変わる?

シミュレーション結果2/2

シミュレーション結果

LIMO編集部作成

今回のシミュレーション条件は以下の通りです(元利均等返済)。

  • ローン残高:3,000万円
  • 残り返済期間:20年
  • 現在の金利:0.4%
  • 金利上昇幅:+0.5%

結果は以下のようになりました。

  • 現在の月々返済額:13万87円
  • 上昇後の月々返済額:13万6634円
  • 月々の負担増:6547円(返済額の5.0%アップ)

月6547円というと「それほど大きくない」と感じるかもしれません。

しかし残り20年という長期で見ると、総返済額への影響は決して小さくはありません。

また、今後さらに金利が上昇する局面が来た場合、この負担はさらに積み重なっていきます。

3. 変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」:守ってくれる仕組みとその落とし穴

変動金利には、急激な金利上昇から返済者を守るための2つのルールがあります。

  • 5年ルール:金利が変動しても、5年間は月々の返済額を据え置く
  • 125%ルール:返済額の見直しが行われる場合でも、変更後の返済額を従来の1.25倍までに抑える

これらのルールがあることで、金利が急上昇しても毎月の支払いが突然跳ね上がることはなく、家計の急激な変化を防ぎやすくなります。教育費などで出費が重なる時期でも、計画を立てやすいのは大きなメリットです。

ただし、注意が必要です。返済額が据え置かれても、利息負担そのものは減りません。金利が大幅に上昇すると、毎月の返済額がすべて利息に充てられ、元金がまったく減らなくなることがあります。支払いきれなかった利息は「未払利息」として積み上がり、最終返済日に一括請求されるリスクがあります。これが家計を直撃し、老後資金を失ったり、最悪の場合は自宅を手放さなければならない事態につながることも考えられます。

また、このルールは「元利均等返済」を選択した場合にのみ適用されます。「元金均等返済」には適用されません。さらに、金融機関によってはそもそもこのルールを採用していないケースもあります。ルールがない場合は金利上昇が即座に返済額に反映されますが、未払利息が積み上がるリスクはありません。契約前に必ず借入先に確認しておきましょう。

4. まとめ:元銀行員が伝えたい「住宅ローン見直し」の考え方

今回のシミュレーション(ローン残高3000万円・残り20年・現在の金利0.4%)では、変動金利が0.5%上昇すると月々の返済額は6547円増加します。

数字だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、金利がさらに上昇した場合に備えた「余力」を、今のうちに確認しておくことが大切です。

銀行員時代の経験から、住宅ローンの見直しを考えるときに意識してほしいポイントをお伝えします。

  • 「固定に切り替えるべきか」は家計の余力次第:固定金利は一般的に変動より高いため、切り替えれば月々の負担は増えます。ただし返済額が確定することで、将来の金利変動に左右されない安定した家計管理が可能になります。「多少の負担増でも先が読める方が安心」という方には、固定への切り替えが合う場合があります
  • シミュレーションを「現実の数字」でやり直す:記事内のシミュレーションはあくまでモデルケースです。ご自身のローン残高・残り期間・現在の金利で計算し直し、1〜2%上昇した場合の月額を確認しておきましょう。それが家計を圧迫しない水準かどうかが、判断の基準になります
  • これから購入を検討している方へ:建築資材の高騰で物件価格が上がり、金利も上昇局面という状況は、ローンを組む上で以前より厳しい環境です。「借りられる額」と「無理なく返せる額」は別物。物件価格に目を奪われず、月々の返済が収入の25〜30%以内に収まるかどうかを確認することをおすすめします

住宅ローンの選択に「絶対の正解」はありません。今の金利水準、自分の家計の余力、これからのライフプランを総合的に見て、判断していきましょう。

【免責事項】

本記事に掲載されている情報やシミュレーション結果は、試算条件に基づく一例であり、将来の金利動向や特定の金融商品の勧誘を保証・目的とするものではありません。実際の融資条件、金利、および返済額は金融機関や個人の契約状況によって異なります。住宅ローンの選択や契約に際しては、必ず各金融機関の最新の規定や情報を確認し、ご自身の責任においてご判断ください。

参考資料

和田 直子