将来への不安や物価上昇への対策として、お金にも働いてもらう「資産運用」に関心を持つ人が増えています。

金利上昇への関心が高まる中、財務省が2026年6月25日に条件提示した「新型窓口販売国債(5年もの)」の利率は、年2.0%の大台に到達しました。

こうした金利の上昇により「安全な国債や普通預金だけで十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、長引くインフレを乗り越え、将来に備えるためには、国債のような安全資産の確保と並行して、税負担を合法的にゼロに抑え、さらなる複利効果を期待できる制度を組み合わせていくことが有効です。

数ある運用方法の中でも、少額から手軽に始められる「積立投資」は初心者にもおすすめのアプローチです。

さらに「NISA(少額投資非課税制度)」を活用すれば、通常なら運用益にかかる税金が非課税になるため、より効率的に資産を育てるプログラムが組めます。

積立投資の大きなメリットは、最初に「いつ・どの商品を・いくら購入するか」を設定すれば、基本的には「ほったらかし」の状態で自動的に運用を継続できる点です。

この記事では、新NISAを利用して毎月1万円と毎月3万円を積み立て、ほったらかしで長期運用を続けた場合のシミュレーション結果を分かりやすく解説します。

※投資信託は元本割れのリスクがあります。また運用成果は後にならなければわからないのであらかじめご留意ください。

1. この記事の3つのポイント

  •  毎月1万円でも40年間運用(年利5%想定)すると、元本480万円に対し約1,500万円まで成長。積立期間の長さが試算結果を左右する。
  •  新NISAで生じた売却損は他口座(特定口座)の利益と相殺できず、損益通算や繰越控除が使えない仕様に注意が必要。
  •  新NISAへの全振りを避け、目先の所得税・住民税を直接軽減できるiDeCoの所得控除や生活防衛資金を組み合わせることで、家計の資金繰りを守り抜く。
齊藤 慧
数多くの家計データを見て痛感するのは、『シミュレーション上は利益が出ているのに、生活の現場では資金繰りに苦しんでいる』という人が一定数存在する事実です。毎月1万円や3万円の積立は誰にとっても始めやすい一歩ですが、投資信託に回したお金は『今すぐ使える現金』ではありません。

突然の病気、減収、子どもの進学といった緊急時に、たまたま株式市場が暴落していた場合、元本割れの状態のまま泣く泣く解約せざるを得なくなります。ほったらかし積立を成功させる真の鍵は、運用商品の利回りではなく、手元にいくらの『生活防衛資金(即座に動かせる現金)』を残せているかという点にあります。表面的な数字に惑わされず、生活の足元を固める視点を持って本文を読み進めてみてください。

※本記事は、編集部が金融庁などが公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

2. そもそも「新NISA」とはどんな制度?仕組みを解説

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠が用意されており、これらは同時に併用することが可能です。

新NISA制度1/3

新NISA制度

出所:金融庁「NISAを知る」

2.1 つみたて投資枠の仕組み

  • 年間投資上限額:120万円
  • 投資対象となる商品:金融庁の基準を満たした一定の投資信託

2.2 成長投資枠の仕組み

  • 年間投資上限額:240万円
  • 投資対象となる商品:上場株式や投資信託など

2.3 両枠に共通する主な特徴

  • 非課税保有期間:無期限
  • 非課税保有限度額(生涯投資枠):全体で1800万円(うち成長投資枠は最大1200万円まで)※売却した場合は翌年以降に枠の再利用が可能

年間の投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円となっており、あわせて年間最大360万円までの投資が可能です。

生涯の非課税保有限度額は全体で1800万円に設定されていますが、保有している商品を売却すれば、その分の枠が翌年以降に復活して再利用できるようになりました。

また、非課税期間が無期限化されたことにより、旧制度に比べてより長期的な視点での運用のシミュレーションが組み立てやすくなっています。

3. 【新NISA】「ほったらかし運用」で毎月コツコツ1万円&3万円…20年から40年間の試算結果は?

毎月決まった金額を定期的に購入していく積立投資は、価格が下がったときには多くの量を、上がったときには少ない量を自動的に買い付ける仕組みです。

このアプローチにより、長期間にわたって継続することで購入単価が平準化され、価格変動リスクを抑える効果が期待できます。

実際の運用成果は将来の市場の動きによって変動しますが、あらかじめシミュレーションを確認しておくことで、将来に向けた資産形成の具体的なイメージが湧きやすくなるでしょう。

今回は、20年から40年間にわたって運用を続けた場合について、想定される利回り(年利3%〜6%)ごとの試算結果をまとめました。

3.1 毎月1万円を積み立てた場合の試算結果

毎月1万円をコツコツと積み立てた場合の、投資期間と利回りごとの運用成果(元本と運用益の合計)の目安は以下の通りです。

月1万円のシミュレーション結果一覧表2/3

月1万円のシミュレーション結果一覧表

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

20年間【元本:240万円】

  • 利回り 3%: 327万円
  • 利回り 4%: 364万円
  • 利回り 5%: 406万円
  • 利回り 6%: 453万円

25年間【元本:300万円】

  • 利回り 3%: 443万円
  • 利回り 4%: 509万円
  • 利回り 5%: 586万円
  • 利回り 6%: 676万円

30年間【元本:360万円】

  • 利回り 3%: 579万円
  • 利回り 4%: 685万円
  • 利回り 5%: 815万円
  • 利回り 6%: 975万円

35年間【元本:420万円】

  • 利回り 3%: 735万円
  • 利回り 4%: 900万円
  • 利回り 5%: 1108万円
  • 利回り 6%: 1374万円

40年間【元本:480万円】

  • 利回り 3%: 917万円
  • 利回り 4%: 1161万円
  • 利回り 5%: 1483万円
  • 利回り 6%: 1908万円

毎月1万円という少額の積立であっても、投資期間が25年になると元本300万円に対して、年利4%の運用で509万円まで増える計算となり、長期的な複利の効果が実感できます。

3.2 毎月3万円を積み立てた場合の試算結果

続いて、毎月の積立金額を3万円に引き上げた場合のシミュレーション結果を確認しましょう。

月3万円シミュレーション結果3/3

月3万円シミュレーション結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

20年間【元本:720万円】

  • 利回り 3%: 981万円
  • 利回り 4%: 1092万円
  • 利回り 5%: 1217万円
  • 利回り 6%: 1360万円

25年間【元本:900万円】

  • 利回り 3%: 1330万円
  • 利回り 4%: 1527万円
  • 利回り 5%: 1757万円
  • 利回り 6%: 2029万円

30年間【元本:1080万円】

  • 利回り 3%: 1736万円
  • 利回り 4%: 2056万円
  • 利回り 5%: 2446万円
  • 利回り 6%: 2924万円

35年間【元本:1260万円】

  • 利回り 3%: 2206万円
  • 利回り 4%: 2700万円
  • 利回り 5%: 3325万円
  • 利回り 6%: 4121万円

40年間【元本:1440万円】

  • 利回り 3%: 2752万円
  • 利回り 4%: 3483万円
  • 利回り 5%: 4448万円
  • 利回り 6%: 5723万円

毎月の投資額を3万円に増やすと、25年間の運用で年利4%の場合には1527万円にまで達する期待が持てます。

投資元本が大きくなるほど、得られた利益がさらに利益を生み出す「複利効果」がより強力に働き、資産形成のスピードが加速することが分かります。

※なお、これらの数値はあくまで過去のデータ等に基づいたシミュレーションであり、将来の運用成果を確約するものではありません。実際の投資では元本を割り込むリスクがある点にご留意ください。

4. 投資初心者が事前に押さえておくべき注意点:金融機関によって選べる投資信託の銘柄数やポイントの還元率などが異なる

新NISAは非常にメリットの多い制度ですが、実際に運用をスタートする前にいくつか把握しておくべき重要なポイントがあります。

4.1 金融機関ごとに取扱商品やサービス内容が異なる

NISA口座は1人につき1つの金融機関でしか開設できません。

金融機関によって選べる投資信託の銘柄数や、購入・保有時に付与されるポイントの還元率、サポート体制などが異なります。

所定の手続きすれば年単位で金融機関の変更は可能ですが、手続きに時間がかかるため、自分が使いやすいと感じ、長く付き合える金融機関を最初から選びましょう。

4.2 自分のリスク許容度に見合った運用設定を行う

新NISAでは投資上限額が拡大され、非課税期間も無期限になるなど自由度が大きく向上しました。

だからこそ、自分がどれだけの下落や値動きの幅に耐えられるかという「リスク許容度」を冷静に見極める必要があります。家計を圧迫しない、無理のない積立金額や商品選びを意識しましょう。

4.3 市場暴落時の対応ルールをあらかじめ決めておく

長期間の積立投資では、途中で世界的な株価暴落などの局面に直面することも考えらえます。

そうした際にパニックになって途中で売却してしまわないよう、「価格が下がっても淡々と自動積立を継続する」「目標金額に達するまでは動かさない」といったマイルールをはじめに決めておくと安心です。

4.4 他口座との損益通算や繰越控除の対象外となる

NISA口座内で生じた損失は、通常の課税口座(特定口座や一般口座)の利益と相殺(損益通算)することはできません。

また、その損失を翌年以降に繰り越して税金を軽減する「繰越控除」も適用できないため、制度独自の枠組みを正しく理解しておく必要があります。

5. シミュレーションを参考に、自分に合った資産形成を

新NISAを用いた積立投資は、初期設定を一度行えば、文字通り「ほったらかし」の状態で効率よく将来の資産を育てる強力なツールです。

今回の試算結果が示すように、毎月の積立額や投資に充てる期間、想定する利回りによって、将来手元に残る資産の規模は大きく変わってきます。

ただし、シミュレーションはあくまで目安に過ぎません。ご自身の目指すゴールや、家計に無理のない範囲での投資額を検討するための参考材料として活用してください。

将来に備えて一歩を踏み出したい方は、まずは毎月の家計の収支を確認し、少額からでもスタートできる準備を始めてみてはいかがでしょうか。

6. 監修者コメント:非課税の恩恵だけに狂奔せず、制度の合わせ技で手取りを増やす

齊藤 慧
行政取材や制度解説の経験を通じて一貫して感じるのは、国の用意した新NISAという仕組みは極めて優れている反面、それ単体では『税金を直接安くして手取りを増やす効果はない』という冷徹な事実です。

『NISAでほったらかしにすれば安心』という表面的な謳い文句に流されるのではなく、iDeCoの所得控除による即時節税、特定口座との税務上の切り分け、夫婦間での名義分散や社会保険料の壁など、多角的な視点を持って運用設計を行う必要があります。

数字の利回りだけに踊らされることなく、世帯全体の生きたキャッシュフローと純手取りを守り抜く賢明な資産防衛を実践していきましょう。

【免責事項】

  • 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
  • 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
  • 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。

参考資料

中井 里穂