2. 何歳ごろまで働きたい?シニアの就業意欲は
貯蓄額とあわせて考えたいのが、これからの「働き方」です。内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)」によると、現在収入のある仕事をしている60歳以上の人に「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」をたずねた結果は、次のとおりです。
- 働けるうちはいつまでも:33.5%
- 70歳くらいまで:22.8%
- 75歳くらいまで:20.1%
- 65歳くらいまで:12.9%
- 80歳くらいまで:7.4%
もっとも多いのは「働けるうちはいつまでも」で、「70歳くらいまで」以上を希望する人(70歳・75歳・80歳くらいまでと「いつまでも」の合計)は約8割にのぼります。これは現在仕事をしている人の回答である点に注意が必要ですが、収入を得られる期間を長くとりたいと考える人が少なくないことがうかがえます。
おひとりさまの場合、家計を支える収入は基本的に自分ひとり分です。だからこそ、長く働いて収入を得られる期間を延ばすことは、貯蓄を取り崩すペースをゆるやかにする現実的な選択肢のひとつになります。中には、フルタイムではなく、短時間勤務や趣味を兼ねた仕事など、無理のない形で働き続けたいと考える方もいるでしょう。
もちろん、健康上の理由などで働き続けることが難しい場合もあります。働くことを前提にしすぎず、「働けるうちは収入を得て貯蓄の取り崩しを抑える」「働くのが難しくなったら貯蓄と年金でまかなう」という二段構えで考えておくと、これからの見通しが立てやすくなりそうです。
3. 仕事やお金の置き場所、使い方を考えよう
60歳代・70歳代おひとりさまの貯蓄は、60歳代で平均1364万円・中央値300万円、70歳代で平均1489万円・中央値500万円でした。いずれも平均と中央値には差があり、金融資産を持たない世帯と2000万円以上ある世帯があるなど、同じ年代でも状況は人によってさまざまです。
すでに年金を受け取る時期を迎えている、あるいは間近な世代だからこそ、これからは「貯蓄をどう守り、どう使うか」が大切になります。金融機関で勤務していた経験から、以下の検討をご提案します。
ひとつは、収入を得られる期間を意識することです。就業意欲のデータでみたように、長く働きたいと考える人は少なくありません。短時間でも収入があれば、その分だけ貯蓄の取り崩しをゆるやかにできます。無理のない範囲で「働けるうちは働く」ことも、立派な老後資金対策のひとつです。
二つ目としては、貯蓄の「使い方」を決めておくことです。どの口座から、毎月どのくらいを取り崩すのか、大まかな目安を持っておくと、必要以上に使いすぎることを防ぎやすくなります。
三つ目として、お金は置き場所によって資産額が変わるので、お金の置き場所についても考えましょう。たとえば預貯金では基本的にあまり変化がありませんが、資産運用を取り入れることで、損をするリスクもある一方で効率よく貯蓄を増やせる可能性もあります。
当面使う予定のないお金は、新NISAなどの制度を使って運用をする選択肢もありますが、その前提として、当面の生活費を「生活防衛資金」として預貯金で確保しておくことが欠かせません。また投資には元本割れのリスクがあり、金融商品や投資方法などによってリスクが異なるため、ご自身の家計や考え方、リスク許容度に合うものを、無理のない範囲で検討したいところです。
平均や中央値は、あくまで全体の目安のひとつにすぎません。数字とくらべて安心したり不安になったりするよりも、自分の年金額と貯蓄、これからの働き方を一度書き出して、これからの家計や貯蓄計画を考えてみるといいでしょう。
参考資料
宮野 茉莉子