8月は、2カ月に一度の年金の支給がある月です。公的年金は偶数月にまとめて振り込まれるため、この時期に通帳の残高を見て、あらためて自分の家計やこれからのお金を考える方もいるのではないでしょうか。
とくにひとりで暮らすおひとりさまは、家計を支えるのも、老後のお金の計画を立てるのも自分ひとりです。「同世代はどれくらい貯めているのだろう」「自分の蓄えで足りるだろうか」と気になる場面もあるかもしれません。
そこで今回は、60歳代・70歳代のおひとりさまについて、平均貯蓄額と中央値を確認したうえで、就業意識についてもみていきましょう。また、金融機関で勤務経験のある筆者が今から行いたい老後資金対策についても解説します。
1. 【60歳代・70歳代おひとりさまの平均貯蓄額】中央値はいくらか?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、おひとりさまの金融資産保有額(平均・中央値)は、年代ごとに次のとおりです。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
1.1 60歳代おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)
- 60歳代単身世帯:平均1364万円/中央値300万円
平均は1364万円ですが、金額順に並べたちょうど真ん中にあたる中央値は300万円で、両者には4倍以上の開きがあります。まとまった資産を持つ一部の世帯が平均を押し上げており、多くの世帯の実態により近いのは中央値のほうといえます。
分布をみると、金融資産を持たない世帯が30.4%で、およそ3世帯に1世帯。一方で「2000万円以上」の世帯も21.1%(2000〜3000万円が5.5%、3000万円以上が15.6%)と、およそ5世帯に1世帯あります。蓄えのある世帯とそうでない世帯が混在し、二極化のようすがうかがえます。
1.2 70歳代おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)
- 70歳代単身世帯:平均1489万円/中央値500万円
70歳代は平均1489万円、中央値は500万円で、平均は中央値の約3倍です。60歳代と同じく、平均は一部の世帯によって引き上げられており、目安として受け止めやすいのは中央値のほうといえます。
金融資産を持たない世帯は20.4%で、およそ5世帯に1世帯。「2000万円以上」の世帯は25.4%(2000〜3000万円が7.9%、3000万円以上が17.5%)と、およそ4世帯に1世帯です。70歳代のおひとりさまでも、蓄えの状況には世帯によって違いがみられます。
2. 何歳ごろまで働きたい?シニアの就業意欲は
貯蓄額とあわせて考えたいのが、これからの「働き方」です。内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)」によると、現在収入のある仕事をしている60歳以上の人に「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」をたずねた結果は、次のとおりです。
- 働けるうちはいつまでも:33.5%
- 70歳くらいまで:22.8%
- 75歳くらいまで:20.1%
- 65歳くらいまで:12.9%
- 80歳くらいまで:7.4%
もっとも多いのは「働けるうちはいつまでも」で、「70歳くらいまで」以上を希望する人(70歳・75歳・80歳くらいまでと「いつまでも」の合計)は約8割にのぼります。これは現在仕事をしている人の回答である点に注意が必要ですが、収入を得られる期間を長くとりたいと考える人が少なくないことがうかがえます。
おひとりさまの場合、家計を支える収入は基本的に自分ひとり分です。だからこそ、長く働いて収入を得られる期間を延ばすことは、貯蓄を取り崩すペースをゆるやかにする現実的な選択肢のひとつになります。中には、フルタイムではなく、短時間勤務や趣味を兼ねた仕事など、無理のない形で働き続けたいと考える方もいるでしょう。
もちろん、健康上の理由などで働き続けることが難しい場合もあります。働くことを前提にしすぎず、「働けるうちは収入を得て貯蓄の取り崩しを抑える」「働くのが難しくなったら貯蓄と年金でまかなう」という二段構えで考えておくと、これからの見通しが立てやすくなりそうです。
3. 仕事やお金の置き場所、使い方を考えよう
60歳代・70歳代おひとりさまの貯蓄は、60歳代で平均1364万円・中央値300万円、70歳代で平均1489万円・中央値500万円でした。いずれも平均と中央値には差があり、金融資産を持たない世帯と2000万円以上ある世帯があるなど、同じ年代でも状況は人によってさまざまです。
すでに年金を受け取る時期を迎えている、あるいは間近な世代だからこそ、これからは「貯蓄をどう守り、どう使うか」が大切になります。金融機関で勤務していた経験から、以下の検討をご提案します。
ひとつは、収入を得られる期間を意識することです。就業意欲のデータでみたように、長く働きたいと考える人は少なくありません。短時間でも収入があれば、その分だけ貯蓄の取り崩しをゆるやかにできます。無理のない範囲で「働けるうちは働く」ことも、立派な老後資金対策のひとつです。
二つ目としては、貯蓄の「使い方」を決めておくことです。どの口座から、毎月どのくらいを取り崩すのか、大まかな目安を持っておくと、必要以上に使いすぎることを防ぎやすくなります。
三つ目として、お金は置き場所によって資産額が変わるので、お金の置き場所についても考えましょう。たとえば預貯金では基本的にあまり変化がありませんが、資産運用を取り入れることで、損をするリスクもある一方で効率よく貯蓄を増やせる可能性もあります。
当面使う予定のないお金は、新NISAなどの制度を使って運用をする選択肢もありますが、その前提として、当面の生活費を「生活防衛資金」として預貯金で確保しておくことが欠かせません。また投資には元本割れのリスクがあり、金融商品や投資方法などによってリスクが異なるため、ご自身の家計や考え方、リスク許容度に合うものを、無理のない範囲で検討したいところです。
平均や中央値は、あくまで全体の目安のひとつにすぎません。数字とくらべて安心したり不安になったりするよりも、自分の年金額と貯蓄、これからの働き方を一度書き出して、これからの家計や貯蓄計画を考えてみるといいでしょう。

