5. 【20歳代~70歳代以上】年代別データで読み解く「私たちのリアルな投資との付き合い方」

年代別にデータを追っていくと、私たちがライフステージの変化に合わせて、現金と有価証券(リスク資産)のバランスをどのように変化させているのか、リアルな実態が見えてきます。

年代別の平均貯蓄額と有価証券の保有状況(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)3/3

年代別の平均貯蓄額と有価証券の保有状況(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)

出所:総務省『家計調査(貯蓄・負債編) 二人以上の世帯(2025年)』(第8-5表)をもとに筆者作成

総務省の『家計調査(2025年)』によると、二人以上の世帯(勤労者世帯)における平均貯蓄額は1717万円であり、そのうち有価証券は370万円と、貯蓄全体の約21.5%を占めています。

年代別にデータを追っていくと、私たちがライフステージの変化に合わせて、現金と有価証券(リスク資産)のバランスをどのように変化させているのか、リアルな実態が見えてきます。

5.1 20歳代:投資のスタートダッシュ期

 

  • 平均貯蓄額:428万円
  • 有価証券保有額:121万円(約28.3%)

20歳代は、全年代の中で有価証券が貯蓄に占める割合が最も高いのが特徴です。

まだ住宅購入や教育費といった大きなライフイベントが少なく、資金を比較的自由に動かしやすい時期と言えます。SNSなどで投資情報を手軽に得られる世代でもあり、若い頃からNISAなどを活用して「まずは少額からでも積極的に投資を取り入れよう」という意欲の高さがうかがえます。

5.2 30歳代〜50歳代:ライフイベントと並行する「積み上げ期」

  • 30歳代:保有額 293万円(割合:約27.3%)
  • 40歳代:保有額 300万円(割合:約21.7%)
  • 50歳代:保有額 348万円(割合:約19.8%)

結婚、子育て、マイホーム購入など、人生の大きな出費が重なるのがこの世代です。

いざという時のために現金を手元に厚く残しておく必要性が高まるため、年代が上がるにつれて有価証券の割合は緩やかに低下していきます。

しかし注目すべきは、有価証券の保有「金額」自体は決して減っておらず、着実に積み上がっている点です。

日々の家計のやりくりに追われながらも、積立投資などでコツコツと資産形成を継続している堅実な姿が見て取れます。

5.3 60歳代:資産を再加速させる「リタイア直後期」

  • 平均貯蓄額:2843万円
  • 有価証券保有額:713万円(約25.1%)

60代を迎えると、退職金などの受け取りにより平均貯蓄額が一気に跳ね上がります。

それに伴い、有価証券の保有額も50代の348万円から713万円へと倍増し、割合も再び上昇に転じています。

まとまった退職金の一部を運用に回すことでインフレから資産を守り、老後の「資産寿命」を少しでも長く延ばそうとする防衛的な投資行動の表れと考えられます。

5.4 70歳代〜:資産寿命をコントロールする「運用継続期」

  • 平均貯蓄額:2471万円
  • 有価証券保有額:456万円(約18.5%)

70歳代以降になると、年金生活が中心となり貯蓄全体を取り崩しながら生活するフェーズに入ります。

平均貯蓄額や有価証券の保有額は60代に比べて低下しますが、それでも全資産の2割弱を有価証券として持ち続けています。

完全に現金化してしまうのではなく、運用を継続しながら計画的に取り崩すことで「長生きリスク」に備えていることがわかります。

このように、若いうちは「割合」を高くして資産を育てるエンジンをかけ、中高年は手元の現金を確保しつつ「積立」を継続し、リタイア前後で運用を再加速、その後は運用しながら取り崩すという、理にかなった行動をとっている人が多いことがデータからもわかります。

※本データにおける「有価証券」には、NISA口座以外(特定口座や一般口座、その他の非課税制度など)での運用分も含まれており、記載された金額すべてがNISA口座での運用額を示すものではありません。

熊谷 良子

データを見ると、若年層の段階から貯蓄の3割近くを積極的に投資に回す一方で、年代が上がるにつれて実際の保有「金額」がしっかりと積み上がっていることがわかります。

私自身も50歳代ですが、いざという時の生活防衛資金は現金でしっかり確保しつつ、インフレ対策として全資産の2割程度は投資信託などの有価証券で保有するようバランスを意識しています。

資産のすべてを投資に回す必要はまったくありません。「現金と有価証券の割合をどう保つか」というご自身のルールを持つことが、将来の安心につながる武器になりますよ。

6. 投資を始める前に知っておきたい「リスク許容度」とは

新NISAで積立投資を始める際に、必ず確認しておきたいのがご自身の「リスク許容度」です。

リスク許容度とは、投資している資産の価格が一時的に下落した場合に、家計の面でも精神面でも、どの程度のマイナスまでなら受け入れられるかを示す考え方です。 同じように資産が目減りしても、「長期運用が前提だから一時的な値下がりは気にならない」と考える人もいれば、不安で夜も眠れなくなる人もいます。

リスク許容度は、主に次のような要素によって異なります。

  • 年齢と運用期間: 運用できる期間が長い(年齢が若い)ほど、一時的に価格が下がっても相場の回復を待つ時間的な余裕があります。
  • 収入と余裕資金の有無: 日々の生活費や、緊急時に備えるための予備資金が十分に確保されているほど、リスクに対して冷静に対応しやすくなります。
  • 投資経験と性格: 価格変動に対する精神的な耐性や投資の経験値は、人によって大きく異なります。

たとえば、「もし資産が20%下落した場合でも、焦らずに運用を続けられるか」を考えてみることは、自分に合ったリスク許容度を知るための一つの有効な目安になります。

あらかじめ自分に合った運用スタイルとリスクの許容範囲を理解しておくことで、相場の下落時にパニックになって慌てて売却してしまうなどの失敗を防ぎやすくなります。

7. 【新NISA】始める前に確認したいデメリットと注意点を解説

新NISAを効果的に活用するためには、制度のメリットばかりに目を向けるのではなく、事前に知っておくべき注意点やデメリットを正しく理解しておくことが重要です。

長期にわたる積立投資の過程では、市場が大きく下落する局面に遭遇することが確実にあります。

実際に、世界の株式市場は長期的に見れば右肩上がりの成長を続けてきましたが、短期的には何度も急落や停滞を経験しています。

そのため、積立投資の特性や価格変動リスクを十分に理解し、「もし保有資産の価格が大きく下がったときにどう行動するか」をあらかじめ決めておくことが、冷静な判断につながります。

また、数ある中からどの金融商品を選ぶかも重要なポイントです。

金融庁が公表している『つみたて投資枠対象商品届出一覧』によれば、対象商品は300本を超えており、現在も定期的に見直しや商品の追加が行われています。

選択肢が豊富であるからこそ、「人気ランキングの上位だから」「SNSで話題だから」といった理由だけで安易に選ぶのではなく、長期間安心して保有できるか、自分のリスク許容度や運用方針に合っているかをしっかりと見極める必要があります。

さらに、NISA口座特有の税制上の制約として、「損益通算」ができない点も知っておく必要があります。

これは、NISA口座内で発生した損失を、他の課税口座(特定口座や一般口座)で得た利益と相殺して税金の負担を軽くすることができないというルールです。

加えて、損失を翌年以降に繰り越して利益から控除できる「繰越控除」の適用も受けられません。

NISAは利益が出て初めて恩恵を受けられる制度であるため、こうした税制面での制約についてもあらかじめ理解しておくことが求められます。

熊谷 良子

投資の世界に「絶対」はなく、リスクとリターンは表裏一体です。

ご自身のリスク許容度を知っておくことはとても大切です。

また、ライフステージや働き方が変わると家計状況も変動します。

いざという時に生活を守る「生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)」は投資とは別に現金で確保しておくことが鉄則です。

NISAは利益が出てこそ恩恵がある制度なので、無理のない範囲で、信託報酬などの手数料が低い商品を長期保有することなどを検討するのも一つの手ですね。

8. まとめ:年代に合わせて無理のない範囲で「長く続ける」ことを前提に

新NISAは「時間」を味方につけた資産形成を支援する制度です。

若年層は少額から、中高年層は余裕資金を活用するなど、世代に応じた運用が広がっています。

投資で最も重要なのは、いざという時の預貯金を確保し「余裕資金の範囲内で継続すること」です。インフレで預貯金だけでは資産価値の維持が難しい今、新NISAの知識を身につけ、将来の生活を守る選択肢を増やしましょう。

熊谷 良子

新NISAは非課税期間が無期限となり、使い勝手の良い制度に進化しました。

老後資金と聞くと「長期間引き出せないのでは?」と心配される方もいますが、iDeCo(個人型確定拠出年金)とは違い、NISAは必要な時にいつでも売却して現金化できるのが強みです。

働き方が多様化し、転職や独立などキャリアの選択肢も広がる現代、想定外の出費への備えとしても機能してくれます。

日々のデータ分析を通じても、早めにお金の知識を身につけることが将来の自分らしい生き方に直結すると実感しています。

まずは少額からでも、時間を味方に「長く続ける」一歩を踏み出してみませんか。

参考資料