年金収入から医療保険料が天引きされる後期高齢者の家計は、想像以上に余裕が少ないものです。その保険料は、2026年度・2027年度でさらに引き上げられます。
2026年4月10日、厚生労働省は75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」における2026年度・2027年度の保険料率を公表しました。被保険者一人あたりの保険料は、全国平均で月額7989円となる見通しで、2024年度・2025年度の7411円から578円の増加となります。
銀行員時代、75歳を超えたシニアのお客さまとお話しする機会がよくありました。
「年金だけで何とかやりくりできているけど、年々保険料は上がっていくし大変よ。あなたたちは若いうちにしっかり貯金しておいたほうがいいよ」と、口々におっしゃっていたことが今でも印象に残っています。
この記事では、最新の保険料が都道府県ごとにどのくらい違うのかを解説します。
また、2026年度から徴収が始まった「子ども・子育て支援金」の平均額についてもあわせて見ていきましょう。
1. 「後期高齢者医療制度」とは?75歳から加入する公的医療保険の基本を解説
日本は、すべての人がいずれかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」を採用しています。
75歳になると、それまで加入していた健康保険(協会けんぽ、共済組合、国民健康保険など)を脱退し、自動的に独立した「後期高齢者医療制度」に移行する仕組みです。
また、65歳以上75歳未満の方でも、障害年金1級・2級など一定の障害状態にあると認定された場合は、本人の希望によってこの制度に加入できます。
1.1 医療費の窓口負担は何割?所得に応じた自己負担割合(1〜3割)について
医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合は、現役世代との公平性を保つため、所得に応じて以下のように区分されています。
- 一般所得者等: 1割負担(課税所得28万円未満)
- 一定以上所得者: 2割負担(課税所得28万円以上145万円未満)
- 現役並み所得者: 3割負担(課税所得145万円以上)
2. 2026年度・2027年度の後期高齢者医療保険料はいくら?全国平均と計算方法
後期高齢者医療制度の保険料率は、2年ごとに見直されます。
2026年度(令和8年度)からは、これまでの「医療分」の保険料に、少子化対策の財源を確保するための「子ども・子育て支援金(子ども分)」が上乗せされ、徴収が始まっています。
厚生労働省の発表によると、被保険者1人あたりの全国平均保険料(月額)は以下のようになっています。
保険料の全国平均(月額)
- 医療分:7989円 前回比 +578円(7.8%増)
- 子ども分:194円(2026年度から新設された子ども・子育て支援金)
- 合計:8183円
医療分の保険料が引き上げられた主な理由として、医療技術の高度化や高齢化による医療費の増加が挙げられます。また、現役世代の負担増を緩和するため、高齢者と現役世代の負担の伸び率を均衡させる制度改正も影響しています。
もちろん、これは全国平均の金額です。実際の保険料は、以下の2つの要素を合算して決まります。
- 均等割額:加入者全員が同じ額を負担する部分
- 所得割額:加入者の前年の所得に応じて負担額が変わる部分
次の章では、厚生労働省『後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について』を基に、都道府県別の保険料の違いを具体的に見ていきましょう。
3. 都道府県別に見る後期高齢者医療保険料。保険料が高い順に並べると…
2026年度・2027年度の都道府県別保険料(医療分)を、保険料が高い順に並べると以下のようになります。
全国平均の7989円を基準に、お住まいの都道府県と比べてみてください。
- 東京都 1万352円
- 神奈川県 9842円
- 愛知県 9045円
- 大阪府 9010円
- 沖縄県 8731円
- 奈良県 8622円
- 福岡県 8330円
- 兵庫県 8301円
- 京都府 8280円
- 千葉県 8237円
- 埼玉県 8189円
- 佐賀県 8159円
- 石川県 8065円
- 滋賀県 8051円
- 岡山県 7891円
- 福井県 7840円
- 山口県 7836円
- 広島県 7831円
- 静岡県 7415円
- 香川県 7388円
- 岐阜県 7317円
- 富山県 7296円
- 北海道 7295円
- 大分県 7283円
- 三重県 7263円
- 鹿児島県 7174円
- 茨城県 7128円
- 熊本県 7088円
- 山梨県 7070円
- 宮城県 6933円
- 群馬県 6877円
- 徳島県 6829円
- 和歌山県 6771円
- 高知県 6747円
- 長野県 6745円
- 鳥取県 6568円
- 島根県 6561円
- 栃木県 6476円
- 長崎県 6192円
- 愛媛県 6186円
- 山形県 6014円
- 宮崎県 5875円
- 新潟県 5852円
- 秋田県 5847円
- 福島県 5744円
- 岩手県 5496円
- 青森県 4990円
- 全国平均 7989円
最も保険料が高いのは東京都の1万352円、最も低いのは青森県の4990円です。その差は月5362円、年間に換算すると約6万4000円にのぼります。同じ所得・同じ年齢でも、居住地によってこれほどの負担差が生じる点は見逃せません。
都市部ほど保険料が高い傾向があるのは、医療機関へのアクセスのしやすさや、専門的な医療サービスの利用頻度の高さが医療費に反映されているためと考えられます。
4. 年金収入84万円モデルケースで見る、都道府県別の後期高齢者医療保険料(月額)
次に、国民年金(基礎年金)のみを受給している方をモデルに、年金収入が年間84万円の場合の月額保険料を都道府県別に確認します。
2026年度の各都道府県の保険料(医療分)は以下のようになります。
- 北海道 1392円
- 青森県 1175円
- 岩手県 1133円
- 宮城県 1216円
- 秋田県 1300円
- 山形県 1225円
- 福島県 1143円
- 茨城県 1155円
- 栃木県 1146円
- 群馬県 1267円
- 埼玉県 1217円
- 千葉県 1183円
- 東京都 1242円
- 神奈川県 1225円
- 新潟県 1148円
- 富山県 1302円
- 石川県 1337円
- 福井県 1263円
- 山梨県 1228円
- 長野県 1139円
- 岐阜県 1292円
- 静岡県 1192円
- 愛知県 1308円
- 三重県 1280円
- 滋賀県 1292円
- 京都府 1390円
- 大阪府 1515円
- 兵庫県 1363円
- 奈良県 1325円
- 和歌山県 1371円
- 鳥取県 1217円
- 島根県 1334円
- 岡山県 1400円
- 広島県 1285円
- 山口県 1482円
- 徳島県 1423円
- 香川県 1353円
- 愛媛県 1298円
- 高知県 1409円
- 福岡県 1548円
- 佐賀県 1603円
- 長崎県 1308円
- 熊本県 1470円
- 大分県 1492円
- 宮崎県 1300円
- 鹿児島県 1625円
- 沖縄県 1423円
- 全国平均 1309円
このモデルケースでは、鹿児島県の1625円が最も高くなっています。年金収入の少ない方でも、均等割額(加入者全員が一律で負担する部分)が保険料の大半を占めるため、収入が低くても相応の保険料負担が生じることがわかります。
2026年度からは、この医療分の保険料に加えて「子ども・子育て支援金」も負担することになります。次の章では、後期高齢者が支払う子ども・子育て支援金の平均月額を詳しく見ていきます。
5. 2026年度から始まった「子ども・子育て支援金」、後期高齢者の負担額は月々いくら?
少子化対策の一環として2026年度から徴収が始まった「子ども・子育て支援金」について、後期高齢者が負担する平均月額を都道府県別に見ていきましょう。
- 東京都 265円
- 神奈川県 243円
- 愛知県 215円
- 千葉県 213円
- 埼玉県 210円
- 茨城県 204円
- 奈良県 203円
- 沖縄県 203円
- 静岡県 195円
- 広島県 194円
- 京都府 193円
- 大阪府 191円
- 福井県 190円
- 兵庫県 190円
- 三重県 186円
- 宮城県 185円
- 岐阜県 185円
- 滋賀県 184円
- 石川県 183円
- 長野県 183円
- 富山県 182円
- 山梨県 182円
- 香川県 182円
- 岡山県 179円
- 福岡県 176円
- 群馬県 174円
- 栃木県 173円
- 北海道 172円
- 新潟県 168円
- 山口県 167円
- 島根県 165円
- 佐賀県 163円
- 熊本県 161円
- 和歌山県 159円
- 岩手県 158円
- 鳥取県 158円
- 高知県 157円
- 大分県 156円
- 山形県 155円
- 福島県 154円
- 徳島県 154円
- 長崎県 154円
- 愛媛県 153円
- 鹿児島県 151円
- 宮崎県 145円
- 秋田県 144円
- 青森県 115円
- 全国平均 194円
6. まとめ:後期高齢者医療保険料は地域差が大きい。自治体の通知を確認しよう
本記事では、2026年4月10日に公表された厚生労働省の資料に基づき、後期高齢者医療制度の保険料について解説しました。
都道府県別に見ると、最高の東京都と最低の青森県では月額で5000円以上の差があります。同じ年金収入であっても、居住地によって手取りが変わってくるのは、見落とされがちなポイントです。
冒頭でご紹介した先輩シニアのお客さまの言葉のように、75歳を超えても保険料の負担は続きます。
2026年度からは「子ども・子育て支援金」も加わり、医療分と合わせた月額負担は全国平均で8183円となりました。
老後の資金計画を立てる際には、年金収入だけでなく、こうした社会保険料の負担も忘れずに織り込んでおくことが大切です。
実際の保険料は個人の所得やお住まいの地域によって異なりますので、正確な金額はお住まいの自治体から送付される保険料額決定通知書でご確認ください。
参考資料
和田 直子