4. 財産を把握したら…銀行に「死亡届」を提出する前にお金を引き出すのはNG
財産の全体像が見えてきたとき、もう1点必ず知っておきたいことがあります。それが、銀行に死亡を連絡する前に預金を引き出してしまうリスクです。
「キャッシュカードも預かっているし、葬儀費用が必要だから先に引き出しておこう」と考える方もいるかもしれません。しかし、「引き出せる」ことと「引き出していい」ことは、まったく別の話です。
4.1 口座凍結のタイミングは「銀行が知った時」
「役所に死亡届を出したら口座が凍結される」と思っている方も多いのですが、これは誤解です。
口座が凍結されるのは、銀行が死亡の事実を知った時点です。市役所と金融機関の間で情報が自動的に共有される仕組みは、現時点では存在しません。
だからこそ、物理的には引き出せてしまう状況が生まれるのです。では、引き出してしまうと何が問題なのでしょうか。
4.2 借金も「すべて引き継ぐ意思表示」とみなされる可能性がある
故人の口座から預金を引き出す行為は、法律上「故人の財産も負債もすべて引き継ぐ意思表示(=単純承認)」とみなされる可能性があります。
相続には3つの選択肢があります。
- 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産(借金)も、すべて引き継ぐ
- 相続放棄:プラスもマイナスも、すべて放棄する
- 限定承認:プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスを引き継ぐ
問題は、引き出しによって「単純承認したもの」とみなされた場合、後から多額の借金の存在が発覚しても、相続放棄が認められなくなる可能性が非常に高くなることです。「うちの親にそんな借金はないはず」と思っていても、生前に誰にも言えなかった借入れが後から見つかるケースは少なくありません。
4.3 他にも知っておきたい2つのリスク
引き出しが招くリスクは、借金の相続だけではありません。
- 他の相続人から「使い込み」を疑われる:ATMの取引履歴は長期間保存されます。葬儀費用に充てたとしても、領収書などで使途を証明できなければ、他の相続人からトラブルに発展することがあります。
- 税務署の相続税調査で厳しく見られる:亡くなる直前や直後の高額な出金は、相続税調査で特に注目される項目です。生前の贈与を相続財産に加算する期間が「死亡前3年」から「死亡前7年」へと延長されており、以前より厳しく確認されるようになっています。