いよいよ2026年も下半期に入りました。
これからの生活設計について考える際、老後の暮らしの基盤となる公的年金は大きな関心事ではないでしょうか。
「実際にいくら受け取れるのか」「年金だけで生活できるのか」といった不安をお持ちの方もいるでしょう。
筆者は現在、官公庁が公表する公開情報に基づき日々データ解説を行っておりますが、年金の仕組みは複雑で、受け取れる年金額は生涯の収入だけでなく、加入制度や働き方によって大きく異なるという実態があります。
この記事では公的データをもとに、「平均年収400万円」で会社員として40年間勤務した人の《将来の年金支給額》をシミュレーションします。
さらに、現在の高齢者の平均的な受給額や、年金から税金などが天引きされる「手取りの現実」についても掘り下げて解説し、老後資金のリアルなイメージをつかむお手伝いをします。
1. 日本の公的年金制度の基本。「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造を解説
たとえ生涯の平均年収が400万円だとしても、現役時代の40年間で厚生年金に加入していたか否かで、老後の生活は大きく変わってきます。
具体的な金額を試算する前に、まずは日本の公ic年金がどのような仕組みで成り立っているのかを見ていきましょう。
日本の公的年金制度は、しばしば「2階建て」構造に例えられます。
1階部分が基礎となる「国民年金(基礎年金)」で、その上に会社員や公務員などが加入する2階部分の「厚生年金」が乗る形です。
- 第1号被保険者:フリーランスや個人事業主、学生、無職の方などが対象です。
- 第2号被保険者:民間企業に勤める会社員や公務員が該当します。
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(専業主婦(主夫)など)を指します。
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務がある制度です。
納付する保険料は一律のため、満額納付すれば誰もがほぼ同じ額の基礎年金を受給できる仕組みになっています。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せされる形で支給され、主に会社員や公務員が加入対象です。
こちらは現役時代の給与や賞与(標準報酬)に応じて保険料が変わるため、将来の受給額に個人差が生まれやすい点が大きな特徴といえます。
次の章では、会社員としてこの2つの年金を受け取ることを前提に、「平均年収400万円・勤続40年」という条件で具体的な月額を試算します。
2. 「平均年収400万円」で会社員として40年間勤務した人、将来の年金支給額を試算
ここからは、生涯の平均年収が400万円で、会社員として40年間(480カ月)勤務したケースを想定し、将来の年金支給額を試算します。前提条件は下記のとおりです。
- 会社員として40年間(480カ月)厚生年金に加入。
- 20歳から60歳までの40年間(480カ月)、国民年金保険料を全期間納付済み。
- 配偶者や扶養家族がいない単身者と仮定。
2.1 2階部分にあたる「厚生年金」の支給額の計算方法
厚生年金の支給額は、現役時代の収入と加入期間に基づいた計算式で決まります。
年金受給額 = 報酬比例部分 + 経過的加算 + 加給年金額
「経過的加算」は、定額部分の計算額が老齢基礎年金を上回る場合にその差額を補うものです。また、「加給年金」は扶養する配偶者や子がいる場合に加算される家族手当のような制度です(いずれも受給には要件があります)。
今回の試算では、受給額の大部分を占める「報酬比例部分」に絞って計算するため、経過的加算と加給年金額は計算に含めません。
報酬比例部分は、加入時期に応じた以下の計算式を用いて算出されます。
報酬比例部分 = A + B
- A(2003年3月以前の加入期間):平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 2003年3月までの加入月数
- B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 2003年4月以降の加入月数
「平均標準報酬月額」とは、2003年3月以前の加入期間における、各月の標準報酬月額の合計を加入月数で割ったものです。
一方、「平均標準報酬額」は2003年4月以降の総報酬制が導入された後の期間が対象で、賞与を含めた総収入をもとに計算されます。
今回は、2003年4月以降に40年間(480カ月)厚生年金に加入し、生涯平均年収が400万円だったと仮定して計算を進めます。
賞与を含めた年収を12で割った約33万3000円を、平均標準報酬額の目安として使用します。
この条件で簡易的に試算すると、2階部分である厚生年金の支給額は月額で約7万3000円(年額約88万円)となります。
2.2 1階部分にあたる「国民年金」の支給額の目安
厚生年金に加入する会社員は「第2号被保険者」に分類されるため、将来は厚生年金とあわせて、基礎となる国民年金も受給できます。
ここでは、1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)の支給額を確認します。
国民年金の受給額を算出する基本的な数式は以下のとおりです。
基準となる満額の年金額(1956年4月2日以降生まれの方が対象)に、保険料を納付した月数を加入可能な月数で割った割合を掛けて算出します。
今回のモデルケースでは、20歳から60歳までの40年間(480カ月)保険料を全期間納付したと仮定するため、国民年金(老齢基礎年金)はほぼ満額を受給できます。その額は月額で約7万1000円(年額約85万円)です。
1階部分と2階部分を合計すると、「平均年収400万円で40年間勤務した会社員」が将来受け取る年金の総額は、月額で約14万4000円、年額では約173万円と試算できます。
3. 統計データで見る、現在の高齢者における年金支給額のリアルな分布
前の章のシミュレーションで、「年収400万円・勤続40年」のケースでは月々約14万4000円の年金が受け取れる目安がわかりました。
では、現在、実際に厚生年金と国民年金を受け取っている高齢者の支給額はどのくらいの水準なのでしょうか。
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータから、実際の受給者層の分布(額面)を見てみましょう。
- 月額10万円未満の受給者:19.0%
- 月額10万円以上の受給者:81.0%
- 月額15万円以上の受給者:49.8%
- 月額20万円以上の受給者:18.8%
- 月額20万円未満の受給者:81.2%
- 月額30万円を超える受給者:0.12%
基礎年金と厚生年金を両方受給している人のうち、月額15万円以上に達する割合は全体の約半数(49.8%)を占めています。
今回試算した「平均年収400万円・勤続40年」のケース(月額約14万4000円)を下回る、月額14万円未満の受給者の割合は全体の約44.4%です。
ただし、これらの金額は所得税などが天引きされる前の「額面」です。そのため、実際の生活を考えるうえでは「手取り額」を把握することが不可欠です。
4. 年金の手取り額はいくら?額面から天引きされる税金・社会保険料の内訳
これまで「平均年収400万円・勤続40年」の年金月額の目安や、高齢者の受給額の割合を解説しました。しかし、注意点として、この支給額が全額そのまま受け取れるわけではありません。
現役時代の給与と同様に、公的年金からも税金や社会保険料が「特別徴収(天引き)」されるため、実際に使える手取り額は額面よりも少なくなります。
年金の支給額から天引きされる主な項目は以下のとおりです。
- 所得税(国税)
- 住民税(地方税)
- 健康保険料(国民健康保険料または後期高齢者医療保険料)
- 介護保険料
実際に高齢の単身世帯の収支がどうなっているか、総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、単身無職世帯の平均的な家計状況を確認します。
- 実収入(額面):13万1456円
- 可処分所得(手取り):11万8465円
- 消費支出(生活費など):14万8445円
- 非消費支出(税金・保険料):1万2990円
この調査によると、月々の額面収入13万1456円に対し、税金や社会保険料などの非消費支出が1万2990円天引きされています。その結果、手元に残る可処分所得は11万8465円です。
実際に天引きされる金額は、住んでいる自治体や所得、世帯構成によって異なりますが、一般的に総支給額の10%~15%が目安とされています。
5. まとめ:老後資金計画は年金の仕組みと「手取り額」の把握が重要
今回は、日本の公的年金の仕組みを解説し、「生涯平均年収400万円・勤続40年」というモデルケースで年金額を試算しました。
シミュレーションの結果、国民年金と厚生年金をあわせて月額約14万4000円が支給される目安であることがわかりました。
しかし、実際の高齢者の受給状況を見ると、月額15万円以上を受け取る人が約半数いる一方、今回の試算額を下回る月額14万円未満の人も全体の約44.4%を占めています。現役時代の働き方によって受給額に差があることがわかります。
さらに、老後資金を現実的に考えるには、額面だけでなく、そこから10%~15%ほど税金や社会保険料が天引きされる「手取り額」を意識することが重要です。
ゆとりあるセカンドライフを送るためには、年金の見込み額だけでなく、制度の仕組みや実際に手元に残る金額を理解し、早めに計画的な資産形成を始めることが大切です。
※当記事は再編集記事です。




