梅雨明けが待ち遠しい6月下旬、老後の生活設計について考える方もいらっしゃるかもしれません。
筆者はかつて地方銀行に入行し、リテール営業を通じて若年層から富裕層まで、幅広い世代のお客様のライフプランニングや資産形成をサポートしてまいりました。
その経験からも、多くの方が老後の生活資金に不安を抱えており「年金だけでは生活費が不足するかもしれない」といったお悩みが非常に多いと日々実感しています。
老後の暮らしを支える公的年金ですが、受け取れる金額は現役時代の働き方などによって一人ひとり異なります。
平均額だけを見ると安心してしまうかもしれませんが、実際には年金だけでは生活費が不足するケースも少なくありません。
そうした状況を支えるために「年金生活者支援給付金」という制度があります。
これは、所得などの条件を満たす場合に年金に上乗せして支給されるものですが、対象であっても申請しなければ受け取れません。
この記事では、公的年金の実態から年金生活者支援給付金の仕組み、具体的な申請方法までをわかりやすく解説します。
1. 「年金生活者支援給付金」はなぜ必要?公的年金の受給額に個人差がある実態
厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、公的年金の平均的な月額は、国民年金(老齢基礎年金)が約5万円、厚生年金(国民年金部分を含む)が約15万円です。
しかし、これはあくまで平均であり、実際の受給額には大きな幅があります。
例えば、厚生年金で月に30万円以上を受け取る方がいる一方で、国民年金や厚生年金の受給額が月3万円に満たない方もいるのが現状です。
このように年金の受給額は個人差が大きく、年金収入と他の所得を合計しても一定の基準額に満たない場合、「年金生活者支援給付金」の支給対象になる可能性があります。
2. 2026年度「年金生活者支援給付金」の支給額はいくら?4月からの改定内容を解説
年金生活者支援給付金は、年金やその他の所得が一定の基準を下回る方を経済的に支援するため、2019年から始まった制度です。
この給付金は2カ月分がまとめて、公的年金に上乗せする形で支給されます。
給付金は、受給している年金の種類によって、以下の3つに分類されます。
- 老齢年金を受給している方向けの「老齢年金生活者支援給付金」
- 障害年金を受給している方向けの「障害年金生活者支援給付金」
- 遺族年金を受給している方向けの「遺族年金生活者支援給付金」
2026年度における年金生活者支援給付金の額は、物価変動などを反映し、前年度と比較して3.2%の引き上げとなりました。
- 老齢年金生活者支援給付金の基準額(月額):5620円
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級は7025円、2級は5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
このうち老齢年金生活者支援給付金については、基準額を基に保険料を納めた期間などに応じて、個々の支給額が計算されます。
ここに記載されている金額はすべて月額です。
実際の支給は2カ月分がまとめて行われます。
もし基準額を満額受け取る場合、1回の支給で約1万1000円、年間では約6万7000円が上乗せされる計算になります。
また、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金で5228円という実績でした。
※2025年3月時点で認定されていた方の平均給付月額です。
3. 改定後の給付金はいつから支給?知っておきたい「反映タイミング」の仕組み
年金生活者支援給付金の基準額は、公的年金額の改定にあわせて見直されます。
しかし、改定後の新しい金額が実際に支給に反映されるのは、6月の支給分からです。
この給付金も公的年金と同じく2カ月分がまとめて支給されるため、4月に受け取る分(2月・3月分)には、まだ改定前の基準額が適用されています。
ですから、「4月から増額」と案内されても、すぐに増額分が支給されるわけではないという点を理解しておく必要があります。
6月に支給された4月・5月分で、初めて改定後の新しい金額が反映される仕組みです。
支給額を確認する際は、それがどの期間の分なのかをあわせて把握しておくことが大切です。
ご自身が実際に受け取る改定後の給付額については、毎年6月に日本年金機構から送られてくる「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認ができます。
この通知書には、6月から翌年4月までの各支給タイミングでの金額が明記されているため、今後の家計を管理する上での参考資料としても役立ちます。
4. 「年金生活者支援給付金」を受け取れる条件は?支給要件を詳しく確認
ここでは、年金生活者支援給付金の対象となるための具体的な条件を確認していきましょう。
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」については、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金の受給者であり、かつ前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。
この所得の判定には、障害年金や遺族年金のような非課税収入は含まれない点に注意が必要です。
また、扶養している親族の人数によって、所得基準額は上がります。
一方で、「老齢年金生活者支援給付金」の場合は、所得要件に加えて、他にもいくつかの条件をすべて満たす必要があります。
4.1 「老齢年金生活者支援給付金」の具体的な支給要件
老齢年金生活者支援給付金を受け取るためには、次の要件をすべて満たしている必要があります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- ご自身を含む同じ世帯の全員が、市町村民税の非課税者であること
- 前年の公的年金などの収入額と、給与所得や利子所得といった他の所得との合計額が、生年月日に応じて定められた基準額以下であること(昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下)
こちらの所得判定においても、障害年金や遺族年金といった非課税の収入は計算に含まれません。
さらに、所得が基準額をわずかに超えることで給付が受けられなくなる不公平をなくすため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みも用意されています。
補足的老齢年金生活者支援給付金
この制度は、所得基準を少しだけ上回る方を対象に、段階的に給付額を調整して支給するものです。
具体的には、昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得が80万9000円を超え90万9000円以下の場合や、昭和31年4月1日以前に生まれた方で所得が80万6700円を超え90万6700円以下の場合が対象です。
この範囲内では、所得額に応じて支給額が徐々に少なくなります。
5. 申請しないと受け取れない?年金生活者支援給付金の手続き方法と注意点
年金生活者支援給付金は、支給要件を満たしていても、ご自身で申請手続きをしない限り受け取ることはできません。
自動的に年金に上乗せされるわけではないため、注意が必要です。
すでに年金を受け取っている方で、新たに給付金の対象者となった場合には、毎年9月1日から順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が日本年金機構から送られてきます。
5.1 年金受給中の方へ「緑の封筒」が届いた場合の対応
※すでに年金を受給中の方でも、繰上げ受給を選択している場合は、送付される書類の様式が違うことがあります。
これから65歳を迎える方には、誕生日の3カ月前を目安に、老齢基礎年金の請求書とあわせて給付金の請求書が送付されます。
書類に必要事項を記入した上で、年金の請求書と一緒に提出する流れとなります。
5.2 年金生活者支援給付金の手続きは毎年必要なのか
この給付金は、一度申請手続きを行えば、支給要件を満たし続ける限り、翌年度以降に改めて手続きをする必要は原則としてありません。
支給が継続されるかどうかは前年の所得に基づいて自動的に判定され、その結果は毎年10月分(12月支給)から1年間にわたって適用されます。
もし所得の増加などで対象から外れた場合は、「年金生活者支援給付金不該当通知書」という書類が届きます。
なお、その年度に受け取れる具体的な支給額は、毎年6月上旬頃に届く「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」や「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認することが可能です。
6. 【ケース別】郵送・電子申請の手続き方法を解説
年金生活者支援給付金を受給するためには、請求手続きが不可欠です。
支給の条件を満たしていても、請求書を提出しない限り給付金は支給されません。
毎年9月の最初の営業日(2025年の場合は9月1日)から、すでに年金を受給中の方のうち、新たに給付金の対象となった方へ「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送付されます。
ただし、送られてくる書類の形式や届く時期は、その方の年金の受給状況によって変わります。
ここでは、代表的な3つのケースに分けて、手続きの流れを説明します。
6.1 ケース1:すでに年金を受給している方(うす緑の封筒)
基礎年金を受給中の方で、新たに給付金の支給対象となった場合、9月以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送で届きます。
はがきに必要事項を記入し、同封されている目隠しシールを貼り付けます。
その後、差出人欄にご自身の住所と氏名を書き、切手を貼って郵便ポストに投函してください。
※支給要件に該当するかどうか確認が必要な方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と、所得情報を確認するための「所得状況届」が送付される場合があります。
6.2 ケース2:これから老齢年金の受給を開始する方(緑の封筒)
これから老齢年金の受給を始める方の場合、65歳になる約3カ月前に送られてくる「年金請求書(事前送付用)」に、給付金の請求書も同封されています。
書類に必要事項を記入したら、受給を開始する年齢の誕生日前日以降に、年金の請求書とあわせてお近くの年金事務所に提出してください。
6.3 ケース3:老齢基礎年金を繰上げ受給中の方(うすだいだい色の封筒)
老齢基礎年金を繰上げ受給している方で、給付金の受給資格が発生すると見込まれる場合、65歳になる誕生月の初め頃(1日生まれの方はその前の月の初め頃)に、請求書(はがき型)が届きます。
はがきに必要事項を記入したあと、目隠しシールを貼り、ご自身の住所・氏名を書いて切手を貼付し、ポストに投函します。
※支給要件に該当するかどうか確認が必要な方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と、所得情報を確認するための「所得状況届」が送付される場合があります。
一度申請を済ませれば、支給の条件を満たしている間は、翌年度以降の再手続きは原則として必要ありません。
反対に、所得が増えるなどして要件を満たさなくなった際には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、給付金の支給は停止となります。
なお、2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が送付された方は、電子申請での提出も可能になりました。
電子申請を利用する際には、以下のものをご準備ください。
電子申請で手続きを完了した場合、郵送での提出は不要です。
- スマートフォン
- マイナンバーカード
- マイナンバーカード受け取りの際に設定した利用者証明用電子証明書の暗証番号(数字4桁)
- 署名用電子証明書の暗証番号(英数字6桁~16桁)
7. 公的年金の個人差を理解し、給付制度と手続きについて確認を
この記事では、年金生活者支援給付金の制度内容から申請手続きまでを解説しました。
公的年金の受給額は、平均額だけを見ていては実態を把握できず、実際には人によって大きな差があるのが特徴です。
このような個人差によって、年金収入だけでは生活の維持が困難な方もおり、そうした方々を支える制度として年金生活者支援給付金が設けられています。
2026年度は給付額が引き上げられましたが、特に老齢年金生活者支援給付金は保険料の納付状況によって支給額が変動するため、誰もが基準額を満額受け取れるわけではありません。
そして最も重要な点として、この制度は対象者であっても自ら申請しなければ支給されないことを覚えておく必要があります。
ご自身の年金額や所得の状況を把握し、支給対象の条件に当てはまるかを確認してみましょう。
もし日本年金機構から案内が届いた場合は、忘れずに手続きを進めることが大切です。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内(令和7年度版)」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 総務省「個人住民税」
- 日本年金機構「個人の方の電子申請(年金生活者支援給付金請求書)」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の電子申請のご案内リーフレット」
- LIMO「来月、6月15日(月)振込分から増額【申請しないとゼロ円のまま】継続的に受けられる公的支援「年金生活者支援給付金」はいくら年金に上乗せされる?」










