2. 相続トラブルは富裕層だけではない 約8割が一般家庭で起きている現実
自分自身の老後資金を考える一方で、多くの人が向き合うことになるのが「親の相続」という見えにくい負担です。
「財産がそれほど多くないから、うちは相続でもめることはないだろう」と考える人もいますが、実際にはそうとは限りません。
最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)」によると、家庭裁判所で成立した遺産分割事件のうち、遺産総額5000万円以下のケースが全体のおよそ78%を占めています。
こうしたデータからも、相続トラブルは決して特別な家庭だけの問題ではなく、多くの家庭にとって身近なリスクであることがわかります。
つまり、多額の資産を持つ家庭だけでなく、「実家と少しの預貯金」といった一般的な財産構成であっても、分け方が難しくなり、争いへ発展する可能性があるということです。
親の財産を十分に把握しないまま相続を迎えると、遺産分割の話し合いが長引き、残された子どもである自分自身が精神的にも経済的にも大きな負担を抱えることになりかねません。
3. 親が元気な今だからこそ考えたい 相続について家族で話し合うタイミング
相続で困る原因は、財産が多いか少ないかだけではなく、預貯金や不動産、生命保険、重要書類の所在が家族間で共有されていないことにもあります。
親が元気な今のうちにこれらの情報を共有し、将来介護が必要になった際のお金の管理方法や家族それぞれの役割について話し合っておくことが、将来の負担軽減と円滑な相続手続きに直結します。
3.1 認知症によって財産管理が難しくなるケースも
高齢化が進むなかで、親が認知症になってから財産管理に悩む家庭も少なくありません。
厚生労働省の推計に基づくと、2025年時点ですでに65歳以上の約20%が認知症になっているとされています。
判断能力が低下すると、本人名義の口座凍結や契約手続きが困難になり、家族が介護費用の支払いや対応に苦労する事態を招きかねません。
さらに、一人の子どもが親の通帳を預かり介護費用を管理していた場合、他の家族にその経緯が共有されていないと、相続時に「お金を使い込んだのでは」と疑われるトラブルに発展する恐れがあります。
成年後見制度を利用する方法もありますが、最も重要なのは「親が元気なうちに財産の内容や管理方法について家族全員で話し合い、情報を共有しておくこと」です。
事前の説明や記録を徹底するなどの準備を進めておけば、介護から相続に至るまでの家族全体の負担を大きく軽減できるでしょう。
著者
二種外務員資格(証券外務員二種)記者/編集者/校閲者/
【保有資格】
ニ種外務員資格(証券外務員二種)・相続診断士・認知症介助士・終活ガイド資格1級保有。
【経歴】
二種外務員資格や相続診断士などの資格を保有し、「お金とくらし」にまつわる情報を専門的かつ丁寧に発信する金融メディア編集者・ライター。
早稲田大学第一文学部史学科卒。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務で15年以上の経験を持つ。また、大手人材派遣会社における採用管理業務などの実務経験もある。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』において、金融系メディアの編集者兼執筆者として、コンテンツ制作や編集を担当。
総務省「家計調査」・厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」などの一次資料に基づくデータ記事の執筆に強み。
専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも記事執筆をおこなう。紙媒体での経験に加え、家族の介護を通じて得た知見を生かしながら、「お金とくらし」にまつわる情報を丁寧に発信している。(2026年7月9日更新)
監修者
LIMO編集部貯蓄解説班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、大手証券会社やメガバンク等の金融機関にて勤務経験のある編集者が中心となり、金融庁や総務省など官公庁の公開情報等をもとにお金の課題に寄り添う専門チームです。
主なメンバーは野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか、地方自治体職員出身の太田彩子、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵、日本生命保険相互会社出身の村岸理美など。
編集者の多くは、金融機関にて個人リテール業務を経験。若年層からシニア層、富裕層に至るまで、幅広い顧客に対し、投資信託・保険を中心とした総合的なライフプランニングを実行してきた。なかには、リテール営業で社内トップの実績を持ち、行内で表彰された実力者も。人材育成や社内教育にも携わるなど、金融知識と実務経験の両面で信頼される編集者が在籍しています。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。(最新更新日:2026年6月17日)