日本銀行が2026年6月25日に発表した「資金循環統計(速報)(2026年第1四半期)」によると、2026年3月末時点における家計の金融資産残高は、全体で過去最高の2386兆円に到達しました。

このように投資への興味関心が高まる中、「周りがやっているから」「節税になるらしいから」と、制度の仕組みをよく理解しないままNISAやiDeCoに飛びつき、激しく後悔している人たちの声も耳にするようになりました。

元銀行員として、投資教育の現場で講師を務めてきた際にも、多くの相談を受けていました。

今回は、最新の金融資産データを紐解きつつ、現場で見てきた「新NISAやiDeCoをはじめる前に、もっと早く知っていれば…」と多くの人が陥りがちな落とし穴についてご紹介します。

1. 後悔(その1):新NISAとiDeCoを使い分ければ良かった…

新NISAのつみたて投資枠やiDeCoは、主に投資信託を活用した制度です。毎月一定金額を積み立てていきます。

1.1 非課税枠の違い

非課税枠は新NISAとiDeCoでは異なります。

新NISAのつみたて投資枠の非課税投資枠は毎年120万円で、すべてつみたて投資枠で行った場合には、合計1800万円まで投資をすることができます。

たとえば、つみたて投資枠で毎年120万円の投資を行った場合に、15年続けると1800万円の枠を使用することができます。

一方、iDeCoは働く職場や働き方によって、月々の掛金上限額が異なります。

1.2 手元にお金を戻す条件の違い

途中、手元にお金を戻す条件も異なります。

新NISAはいつでも途中で売却をすることが可能です。

対して、iDeCoは、原則60歳にならなければ受け取れません。年代にもよりますが、60歳まで原則引き出せないことを考えると、無理のない範囲で活用することが重要になるでしょう。

たとえば、リストラや離婚、病気になったり働けなくなったりすることを考えると、お金を引き出す必要に迫られることもあります。

そういった可能性を踏まえ、「新NISAは万が一のときでも売却できる資金・iDeCoは老後資金」と使い分けて、金融商品や積立金額を考えましょう。

2. 後悔(その2):家計の資産全体を見て商品を選べば良かった…

資産全体で考える1/3

アロケーションの図

出所:eamesBot/shutterstock.com

資産形成を考える際、「なるべくリスクを抑えたい」と、初心者ほど、より安定的な金融商品を選びがちです。

一般的には、リスクは「値下がりすること」「元本が減ること」「損をすること」と思われがちです。しかし、金融におけるリスクにとは「価格の振れ幅がある」ということです。価格が動くこと自体がリスクなのです。

2.1 金融商品でリスクを抑えるのではなく、資産全体

新NISAやiDeCo以外に貯蓄を保有している方も多いでしょう。

ご家庭の貯蓄全体からみると、新NISAやiDeCoをしているものの、場合によってはリスクを抑えすぎた運用になっている場合もあります。

したがって、個別の金融商品のリスクに目をやるばかりではなく、貯蓄全体で考えてみたいところです。

たとえば、預貯金が多い世帯は、投資する金融商品のリスクが高くてもよいのです。

2.2 リスクを分散するには投資タイミングを分散するという方法も

将来にかけて大きく資産を増やしていきたいのであれば、選ぶ金融商品でリスクを過剰に抑えるのではなく、成長が期待できる資産を毎月買付することでリスクを分散することもできます。

このようにタイミングの分散でリスクを抑えていくのも良いでしょう。

運用を考えるときはご家庭の貯蓄全体を見渡して、どれくらいのリスクが取れるかを考えましょう。

3. 後悔(その3):複数の金融機関で比較検討すれば良かった…

金融機関はどこも同じではない2/3

悩んでいる画像

出所:takasuu/istockphoto.com

新NISAやiDeCoは、証券会社や銀行などの金融機関で開設することが可能です。どこでも同じ金融商品を扱うわけではないので、事前に自分が投資したい商品を扱っているかを確認しましょう。

また、新NISAへの投資でポイントが付与されたり、ポイントを利用して投資できるなど、各社さまざまなサービスを行っています。

つみたて投資をするにあたって、証券会社ごとにポイントが利用できたり、利用できなかったりもするので、そのあたりもポイントに興味がある方はチェックしておきたいところです。

一度はじめれば長期間利用することになるので、投資をはじめる金融機関はしっかり比較して選びましょう。

4. 2026年3月末時点、家計の金融資産は過去最高水準に

いかがでしたでしょうか。今回は、銀行の元投資教育担当であった筆者が、新NISAやiDeCoをはじめる前に、「気付いておけばよかった」と後悔しがちなことをご紹介しました。

冒頭でご紹介した2026年3月末時点における家計の金融資産残高ですが、全体で過去最高の2386兆円に到達しました。その具体的な内訳は以下の通りです。※一部抜粋

  • 現金・預金: 1126兆円(全体の約半分を占める根強いベース)
  • 株式等: 398兆円(歴史的な株高の恩恵をダイレクトに受けて大きく増加)
  • 投資信託: 165兆円(新NISAなどの追い風を受けて存在感が急上昇)

ここで注目したいのは、資産残高全体が前年比で+7.1%伸びる中、「株式等」が前年比+28.6%、「投資信託」が同+25.7%という驚異的な伸び率を記録している点です。資産の半分近くを占める預金口座から「投資」へと資金がシフトしている傾向が読み取れます。

このような変化の中で、「投資をしなくては」と焦ってしまうあまり、制度への理解不足のままスタートしてしまう人も多いように感じます。

一度、我が家の家計全体の資産設計を検討した上で、必要に応じて制度を活用していくことが大切です。

参考資料

三石 由佳