令和8年8月5日、政府は「給付付き税額控除」の制度導入に関する基本方針を閣議決定しました。

村岸理美

筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)ですが、家計相談でも、「扶養を外れないようにシフトを調整している」「これ以上働くと手取りが減って損をしてしまう」という切実なお悩みを伺うことがあります。

もっと働きたいという意欲があるのに、制度の壁によって働き方を制限せざるを得ないのは、大変もどかしいことですよね。こうした「働き控え」を緩和して就労を促進し、働いた分だけしっかりと手取りが増える新しい仕組み「所得に連動したきめ細かな給付」が、令和11年度に本格導入されることになりました。

ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、私たちの暮らしや働き方にどう影響するのかをわかりやすく解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  「106万・130万円の壁」を気にせず、働いた分だけ手取りが増える新制度の仕組み
  •  パートだけでなく、フリーランスや単身者、シニアも対象になる条件
  •  令和9年から先行して始まる「飲食料品の消費税1%化」などのつなぎ措置

 

2. もう「年収の壁」で悩まない!働いた分だけ手取りが

給付付き税額控除とは、納める税金から一定額を差し引き、引ききれなかった分を「現金」で受け取れる仕組みです。

税額控除=納税額から一定額を減らす1/3

税額控除=納税額から一定額を減らす

各種資料をもとにLIMO編集部作成

税金の負担軽減と給付の両方を行えるため、手取りが減りにくく働いた分だけ報われやすくなります。この「給付付き税額控除」の考え方を活かし、令和11年度から本格導入が予定されているのが以下の新制度です。

「所得に連動したきめ細かな給付」の本格導入のイメージ(中間とりまとめ(案) )2/3

「所得に連動したきめ細かな給付」の本格導入のイメージ(中間とりまとめ(案) )

出所:内閣官房「社会保障国民会議「給付付き税額控除」のイメージ(中間とりまとめ) 」

  • 増えていく(逓増)ステージ:勤労性の所得が一定水準に達するまで、所得の増加に合わせて給付額もアップします。
  • キープされる(定額)ステージ:所得が一定水準を超えると、給付額は一律の「定額」で安定します。
  • 減っていく(逓減・消失)ステージ:さらに所得が高くなると、公平性の観点から給付額が少しずつ減り、最終的には消失します。

さらに、「年収の壁」が解消されるまでの時限的な措置として、壁に直面する方へ手厚く上乗せする「年収の壁に配慮した一定の加算」も行われる予定です。また、子育て世帯には18歳以下のこどもの人数に応じた加算も検討されています。

2.1 「世帯」ではなく「個人」、単身者・フリーランス・シニアも対象!

これまでの支援制度は「世帯(家族の合計収入)」が基準になりがちでしたが、新制度は「個人単位」で設計されており、単身者も対象となります。また、会社員やパートだけでなく、以下のような多様な働き方をしている「中低所得の現役勤労者」が広く対象となる方針です。

  • 個人事業者・フリーランス(就労とみなせる一定額以上の「事業所得」がある方)
  • 副業や単発の仕事をしている方(就労とみなせる一定額以上の「業務に係る雑所得」がある方)
  • 働く中低所得の高齢者(就労し、純負担が現役世代並みの方)

すべての副業が無条件で対象になるわけではありませんが、雇用形態や年齢に縛られず、頑張って働いている人を広く応援する制度と言えます。