4. 投資家の期待リターン(WACC)と社債運用のギャップ

40億円もの資産を年利5.5%で運用していると聞けば、多くの人は「銀行に預けておくより確実にお金が増えるのだから、良い経営判断ではないか」と思うかもしれません。

インタビュワーからそのような疑問が投げかけられると、泉田氏は株式市場の視点は全く異なると指摘します。

株式市場には「WACC(加重平均資本コスト)」という重要な概念があります。これは簡単に言えば、「投資家がその企業に対して最低限求めている利回り(期待リターン)」のことです。

「上場企業であればだいたい7から8%ぐらいは稼いでもらって当たり前と思っています。ところがこの会社は、5.5%のクーポンが出る社債を買っているんですよ」

株式投資家は、銀行預金や安全な国債よりも高いリスクを取って株式に投資しています。そのため、楽待という企業に対して「本業で20%以上のROEを出せるのだから、その資金を事業に再投資して、もっと大きな利益を生み出してほしい」と期待しています。

しかし、経営陣がその資金を自社の事業ではなく、利回り5.5%の社債に投じているという事実は、投資家の目にどのように映るのでしょうか。

「20%以上のリターンがある事業に投資をしないで5.5%の債券を買っているということは、ややもすると『もう成長機会がないんだ』と思われてしまうかもしれません」

泉田氏は、このWACC(7〜8%)と社債の利回り(5.5%)の逆転現象が、金融理論上は「企業価値の破壊」と見なされるリスクがあると解説します。

もちろん、将来のM&A(企業買収)などのために一時的に資金を社債でプールしている可能性もありますが、具体的な成長戦略が示されない限り、市場は「資金を持て余している」と評価してしまい、それが株価の重しになってしまうのです。

余剰資金があるのなら、配当を増やしたり、自社株買いを行ったりして株主に還元すればよいのではないかという意見もあります。しかし、ここにも楽待ならではのジレンマが存在します。

同社はまだ成長過程にある新興企業と見なされているため、過度な株主還元は「やはり成長を諦めたのか」という誤ったメッセージになりかねません。さらに深刻なのが、自社株買いによる副作用です。

「自社株買いをして市場から株を買い集めると、流動性がさらに少なくなってしまいます。そうなると機関投資家から見てさらに手が出しづらくなるという難しさがあります」

すでに創業者が株式の約67%を握っている状態で自社株買い(市場に出回っている株を会社が買い戻して消却する行為)を行うと、市場の浮動株がさらに減少し、創業者の持株比率が相対的に上がってしまいます。

これは、先述した「流動性の壁」をさらに高くすることになり、機関投資家を遠ざける結果を招いてしまうのです。

5. まとめ:ボトルネック解消で株価の見え方は一変する

泉田氏は楽待の現状について、本業のビジネス自体は非常に順調に伸びていると評価しています。

特に同社が運営するYouTubeチャンネルは登録者数が157万人(2026年6月時点)を超えており、投資に関心を持つ層との強力な顧客接点を持っています。

このプラットフォームを活用すれば、既存の不動産投資ポータルサイトにとどまらない、新しいビジネスモデルを展開する機会は十分に広がっています。

しかし、株価という側面から見ると、創業者の高い持株比率による流動性の低さと、稼いだ資金の配分(社債運用と期待リターンのギャップ)という明確なボトルネックが存在しています。

裏を返せば、これらは事業そのものの欠陥ではなく、資本政策上の課題にすぎません。

実質無借金で20%以上のROEを叩き出すという、企業としての基礎体力は本物です。今後、同社が抱える豊富な資金を活かして、ROE20%基準を満たすようなM&Aを実施したり、新たな成長事業への投資を本格化させたりするなど、明確な資本配分の道筋が示されればどうなるでしょうか。

市場が抱いている「流動性の懸念」や「成長機会の枯渇」という疑念が払拭された時、楽待の株価の見え方は一変するポテンシャルを秘めていると泉田氏は分析しています。

なお、本記事は決算情報をもとにした分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

参考資料

  • 楽待株式会社「2026年7月期 第3四半期 決算短信」(2026年6月12日)
  • 楽待株式会社「2026年7月期 第3四半期 決算説明会資料」(2026年6月12日)
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム