2. アナリスト不在と流動性の壁。機関投資家が手を出せない理由
一般的な上場企業の場合、決算発表時には証券会社のアナリストたちが予測した業績の平均値(コンセンサス)と、実際の決算数値を比較して株価が動きます。しかし、楽待の場合はこのコンセンサスが存在しません。
泉田氏が金融情報サービス「IFIS」のデータを確認したところ、大手の証券会社のアナリストが誰も楽待の業績を分析・予測していない状態(カバレッジ空白)であることがわかりました。
証券会社が調査レポートを出していないということは、プロの機関投資家が投資判断を下すための外部情報が不足していることを意味します。
なぜ証券会社は楽待を調査の対象から外しているのでしょうか。その最大の理由は「株式の流動性」にあると泉田氏は指摘します。
「創業者が約67%保有しているため、大手の機関投資家が買おうと思った時に流動性などを考慮するとなかなか手が出しづらい銘柄ではあります」
創業者(現・会長)が高い持株比率を維持していること自体は、経営へのコミットメントの強さを示すポジティブな側面もあります。
しかし、株式市場のメカニズムにおいては、特定の大株主が株式の大部分を保有していると、市場に出回る株式(浮動株)の数が極端に少なくなってしまいます。
例えば、楽待の時価総額が約200億円あったとしても、その3分の2を創業者が保有して売買しないとなれば、実際に市場で取引できるのは残りの約70億円分しかありません。
巨額の資金を運用する機関投資家にとって、自分が買いたい時に買えず、売りたい時に売れない「流動性リスク」は致命的です。
証券会社のビジネスモデルは、投資家に株式の売買(トレード)をしてもらうことで手数料を得る仕組みです。そのため、流動性が低くトレードが起きにくい銘柄は、調査の優先順位が下がってしまうのです。
結果として、楽待の株価形成は主に個人投資家の売買によって行われることになります。アナリストの予測がないため、個人投資家は会社が発表する業績予想だけを頼りに投資判断を下さざるを得ません。
だからこそ、会社が保守的な予想を出してしまうと、「もう成長が鈍化するのか」とネガティブに受け止められやすく、株価の伸び悩みに直結してしまう構造があるのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日