衣替えの季節を迎え、初夏の風が心地よい2026年6月。ビジネスパーソンにとっては、上半期の振り返りとこれからの資産運用戦略をアップデートする絶好のタイミングです。いま、日本全体の家計が持つ金融資産には、ドラスティックな変化が起きつつあります。

今回は、日本銀行が発表した資金循環統計や国税庁の確定申告データ、さらに最新の富裕層調査をもとに、過去最高を更新した家計資産の行方と、それを牽引する新富裕層の実像について解説します。

1. 【日銀速報】家計の金融資産は過去最高「2386兆円」に!預金から投資へシフト!

日本銀行が本日6月25日に発表した「資金循環統計(速報)(2026年第1四半期)」によると、日本の家計が保有する金融資産は急拡大を遂げ、過去最高を更新していることが分かります。

2026年3月末時点における家計の金融資産残高は、全体で過去最高の2386兆円に到達しました。その具体的な内訳は以下の通りです。※一部抜粋

  • 現金・預金:1126兆円(全体の約半分を占める不動のベース)
  • 株式等:398兆円(歴史的な株高の恩恵をダイレクトに受けて膨張)
  • 投資信託:165兆円(新NISAなどの追い風を受けて存在感を拡大)

特筆すべきは、資産残高全体が前年比で+7.1%伸びる中、「株式等」が前年比+28.6%、「投資信託」が同+25.7%という驚異的な伸び率を記録している点です。資産の半分近くを占める預金口座から「投資」へと資金がシフトしている傾向が窺えます。そして、このマクロな動きをリードしているのが、高いインカムを背景に資産形成を進める「新富裕層」の存在です。

2. 【年収3000万円の壁】半数が資産1億円に。年収が高い人が選ぶ分散投資の実態

株式会社博報堂の博報堂富裕層マーケティングラボ(HAML)が発表する「新富裕層調査2025」では、高所得なインカムリッチのウェルスリッチ(資産富裕層)化と、投資対象の拡大が明らかになりました。

世帯年収別での「金融資産1億円以上」世帯/「同5億円以上」世帯の構成比」2/5

世帯年収別での「金融資産1億円以上」世帯/「同5億円以上」世帯の構成比」

出所:博報堂富裕層マーケティングラボ(HAML)「新富裕層調査2025」

世帯年収3000万円以上の層では、金融資産1億円以上の富裕層世帯が51.6%と半数を上回りました。世帯年収5,000万円以上になると、金融資産1億円以上の世帯は68.6%に達します。さらに、この5000万円以上の層では金融資産5億円以上の超富裕層世帯も50.7%と半数を超えており、高いインカム(フロー)が確実に個人の資産形成(ストック)へと結びついている実態が窺えます。

2.1 世帯年収別の保有資産(金融資産・現物資産)

世帯年収別の保有資産(金融資産・現物資産)3/5

世帯年収別の保有資産(金融資産・現物資産)

出所:博報堂富裕層マーケティングラボ(HAML)「新富裕層調査2025」

株式やNISAはインカムリッチ全体で保有率が高い一方、世帯年収3000万円以上になるとアクティブファンドや暗号資産(仮想通貨)、REIT(不動産投資信託)などの保有が増加します。

さらに年収5000万円以上では、FXやプライベートエクイティ(PE)などのオルタナティブ資産の保有が大きく拡大します。同時に、時計・宝飾やアンティーク、金、アート(絵画・彫刻)といった現物資産への投資意欲が高まる傾向も見られます。

3. 【確定申告2353万人】所得総額54.9兆円!年々増加傾向

国税庁が発表した「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」からは、申告人員の増加とともに、納税額の確実な伸びが確認できます。

令和7年分の所得税等の確定申告書の申告人員は2353万人(対前年比+0.6%)と、平成28年分以降緩やかな増加傾向で推移しています。このうち、申告納税額がある方(納税人員)は628万人(同+21.3%)でした。

その所得金額は54兆9617億円(同+7.4%)、申告納税額は4兆6897億円(同+6.6%)といずれも前年から増加しています。

3.1 株式等の譲渡所得の申告状況

一方で、株式等の譲渡所得の申告人員は115万人(対前年比▲2.5%)となりました。そのうち所得金額がある方(有所得人員)は74万人(同+0.2%)と微増傾向にあります。しかし、その所得金額の合計自体は6兆8603億円(同▲15.2%)と減少する結果となっており、市場が活況を呈する一方で、利益確定のタイミングや損益通算の動向が数字に影響を与えている可能性も窺えます。

4. まとめにかえて

今回は、日本銀行や国税庁の最新データをもとに、過去最高を更新した家計金融資産の現状と新富裕層の投資トレンドについて解説しました。株高を背景にリスク資産が増加する中、年収3000万円を超える層は株式やNISAに留まらず、暗号資産や現物資産へと賢く分散しています。

経済環境が大きく変わる今だからこそ、他人事ではなくご自身の未来のために主体的な運用戦略を考えてみてはいかがでしょうか。まずは現在の預金と投資のバランスを客観的にチェックすることから始めてみましょう。小さな一歩を踏み出すことで、変化の激しい時代でも安定した資産形成への道が拓けるはずです。

参考資料

村岸 理美