有給休暇を取るのをためらってしまうことはありますか? 今年から有給休暇のうち5日間の取得が義務化となりましたが、「他の人に迷惑をかける」「希望を言い出しにくい」など、さまざまな事情で手放しに喜べないということもあるでしょう。

有給休暇義務化により何が変わったのか、どうしたら有給休暇に対する罪悪感をなくせるのかなどを見ていきます。

有給休暇の取得義務化の対象は?

2019年4月1日から有給休暇の取得義務化が始まりました。従来、有給休暇の取得は従業員の権利と捉えられていましたが、この制度により有給休暇を取得させることが会社の義務になり、守れなかった場合の罰則も定められています。

対象となるのはすべての事業所で、対象者は年次有給休暇を10日付与される人になります。会社に半年以上フルタイムで勤めて8割以上出勤した人に対して有給休暇が10日付与されるので、正社員として働く人のほとんどが対象になるでしょう。

また、パートタイマーでも、勤続3.5年以上で、週4日以上働くような人であれば最低10日付与となっているので、この基準にあてはまれば制度の対象となります。

取得が義務となる日数は5日間で、有給休暇が付与された日から1年以内に消化する必要があります。注意が必要なのは、この制度では会社が日を指定して休ませる形になること。

ただし、すでにこの制度とは別に自主的に5日以上取得している人や、計画年休制度で5日間付与されている場合は対象外となります。

有給休暇取得に罪悪感を持つ日本人

世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディアの日本語サイトであるエクスペディア・ジャパンは、毎年、有給休暇の国際比較調査を実施しています。

世界19カ国の18歳以上の男女計1万1,144人を対象にした2018年の調査によると、日本の有給休暇取得率は50%で、3年連続世界最下位という結果。また、59%の日本人が「有給休暇を取得することに罪悪感がある」と回答しています。

一方、取得率首位のブラジル・フランス・イタリアは30日の有給取得率が100%で、罪悪感を感じる人は20%弱。国民性の違いがあるとはいえ、日本人の仕事に対する生真面目さがうかがえる結果です。

部下が有給休暇を取りやすくなるための上司の役割

属人的な仕事を減らす

属人的な仕事とは、ある業務が特定の人のスキルに依存している状態をいいます。この属人的な仕事があると、自分が休むと仕事が回らなくなり、休むことのハードルが高くなってしまうのです。一方で属人的な仕事は、組織における「自分の存在価値」でもあります。

しかし、有給休暇取得義務化が始まった今、この属人的な仕事を減らしていくことが、みんなが罪悪感を感じずに有給休暇を取得するカギになるのです。そのためには、仕事の評価方法を変えることも重要になります。

上司は属人的な仕事以外でも部下を正当に評価することが求められるでしょう。また、進捗状況の管理シートを使ったり、マニュアルを作成したりして、誰もが誰かの仕事のフォローができる体制にしていくことも必要です。

上司も休みを取り、休みやすい雰囲気を作る

今の40代〜50代は仕事一筋で、会社を休まなくても苦ではない人も多いようです。そんな人達が管理職となり、会社を休まずに働いている姿を見ていると、部下たちも休みにくい雰囲気になってしまいます。

そのため、上司が意識的に休み、部下に対して休んで良いと明確に伝えることが大切です。たとえば、また、チームで共有するカレンダーに誰がいつ休むかを月の初めに書き込むようにして、お互いに「休むという意思表示」をするというのも一つの方法です。

有給期間中の給与計算はどうなっているのか