今年もあっという間に折り返し地点を過ぎ、夏のボーナスが支給された方も多いのではないでしょうか。
手元に入ったまとまったお金を前に、ふと「我が家の貯蓄は世間と比べてどうなのか」と気になり始めた時期かもしれません。
2026年5月、総務省統計局が最新の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果」を公表しました。
これによると、二人以上世帯の平均貯蓄額は2059万円となり、比較可能な2002年以降で初めて2000万円を超えました。
さらに注目すべきは、この調査の貯蓄分布において最も高い階級に設定されている「貯蓄4000万円以上」の世帯が、全体の15.2%にも上っているという事実です。
「これだけの貯蓄がある世帯は、さぞ年収も高いのだろう」と推測されがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。
本記事では、最新データをもとに「貯蓄4000万円」を保有する世帯のリアルな年収や、現役世代がそこへ到達するための高い“壁”、そして「新たな富裕層」の台頭について紐解いていきます。
1. 実は約6世帯に1世帯!「貯蓄4000万円以上」の割合
まずは、総務省のデータから世帯区分ごとの貯蓄残高の偏りを見てみましょう。
「貯蓄4000万円以上」を保有する世帯の割合は、以下のようになっています。
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二人以上世帯(全体): 15.2%
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勤労者世帯(働く世帯): 10.9%
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世帯主が65歳以上のシニア世帯: 21.1%
二人以上世帯全体で見ると約6世帯に1世帯(15.2%)、世帯主が65歳以上のシニア世帯に限定すると約5世帯に1世帯(21.1%)が、4000万円以上の貯蓄を持っていることが分かります。
勤労者世帯では10.9%にとどまっており、世帯類型により差があります。
2. 「貯蓄4000万円」世帯の平均年収は意外と高くない?
では、これだけ高額の貯蓄を持つ世帯は、やはり年収もずば抜けて高いのでしょうか。
同調査をもとに、「二人以上世帯全体」と「勤労者世帯(働く世帯)」に分けて貯蓄額ごとの平均年収を見てみると、意外な事実が分かります。
貯蓄と年収の関係は?5/7
出所:総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編-2025年(令和7年)-第8-11表<貯蓄・負債>貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(二人以上の世帯・勤労者世帯)」を元に筆者作成
2.1 二人以上世帯全体の貯蓄額別・平均年収
- 貯蓄1000~1200万円: 平均年収 681万円
- 貯蓄2000~2500万円: 平均年収 688万円
- 貯蓄4000万円以上: 平均年収 837万円
2.2 二人以上世帯のうち勤労者世帯の貯蓄額別・平均年収
- 貯蓄1000~1200万円: 平均年収 835万円
- 貯蓄2000~2500万円: 平均年収 863万円
- 貯蓄4000万円以上: 平均年収 1107万円
4000万円以上の貯蓄を持つ「勤労者世帯」の平均年収は1107万円と大台を超えますが、「全体」で見ると837万円にとどまっています。
先述の通り、世帯主が65歳以上のシニア世帯の多くが4000万円以上の貯蓄を保有していることから、定年退職時の退職金や相続など、毎年の「年収」には反映されない資産の増加要因が大きく影響していると考えられます。
貯蓄額は年収だけで決まるものではないことが、データからも見て取れます。
3. 現役世代が「貯蓄4000万円」を目指す高い壁…「物価高」と「負債」
シニア世代を中心に貯蓄残高が積み上がる一方で、これから「貯蓄4000万円」を目指す現役世代には、厳しい壁が立ちはだかっています。
2026年夏のボーナス&お小遣い事情6/7
出所:ソニー損害保険株式会社「【ソニー損保 2026年夏のボーナス&お小遣い事情を調査】夏のボーナス水準は5年連続で上昇するも、約84%がお小遣い増加せず、お小遣い平均は前年比マイナスに値上げ実感ランキング第1位は「ガソリン」
ソニー損害保険株式会社が公表した「2026年夏のボーナス&お小遣い事情」に関する調査によると、夏のボーナス水準は5年連続で上昇しているにもかかわらず、約84%もの人が「お小遣いは増加していない」と回答しています。
給与やボーナスが上がっても、日々の物価高やガソリン代の上昇によって生活費の補填に消えてしまい、個人の手元に残るお金や将来のための貯蓄に回す余裕がないのが実態です。
3.1 50歳代未満は「負債超過の世代?」
さらに目を向けるべきは「負債(借金)」の存在です。
先述の家計調査によると、世帯主が50歳以上の年齢階級では貯蓄額が負債額を上回る「貯蓄超過」に。
さらに「50歳未満の各年齢階級では負債超過(負債現在高が貯蓄現在高を上回っている)」ことがはっきりと示されています。
実際の数値(2025年平均・二人以上の世帯)を見ると、その差は歴然としています。
【負債超過の世代(50歳未満)】
- 40歳未満:貯蓄994万円に対し、負債1882万円(純貯蓄額:マイナス888万円)
- 40〜49歳:貯蓄1381万円に対し、負債1483万円(純貯蓄額:マイナス102万円)
【貯蓄超過の世代(50歳以上)】
- 50〜59歳:貯蓄1756万円に対し、負債743万円(純貯蓄額:プラス1013万円)
- 60〜69歳:貯蓄2843万円に対し、負債234万円(純貯蓄額:プラス2609万円)
- 70歳以上:貯蓄2471万円に対し、負債81万円(純貯蓄額:プラス2390万円)
多くの現役世代は、物価高による生活費の圧迫に加え、住宅ローンなどの負債により「実質マイナス」からのスタートを余儀なくされており、ただ真面目に働いて節約するだけでは、4000万円という大台に到達するのは至難の業と言えそうです。
4. 運用で増やす!「いつの間にか富裕層」の台頭
年収やこれまでの常識だけでは貯蓄を増やしにくい時代ですが、希望になりそうなデータも。
野村総合研究所が公表した富裕層に関する推計(2025年2月リリース)によると、純金融資産1億円以上を保有する富裕層以上の世帯は長期的には増加傾向にあります。
純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移7/7
出所:株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
とくに近年は、株価上昇や円安の影響により資産価値が押し上げられ、自らの収入と「資産運用」によって富裕層に到達する新たな層の存在が示されています。
たとえば、株式市場の上昇を背景に運用資産が1億円を超えた「いつの間にか富裕層」(主に40歳代後半~50歳代の会社員が中心)や、都市部の高収入な大企業・共働き世帯が資産を急速に増やす「スーパーパワーファミリー」などが注目されています。
親からの贈与や相続に頼らず、現役時代からの計画的な資産運用によって大台を突破する機会が広がっている点は、現役世代にとっての大きなヒントになりそうです。
5. まとめにかえて
夏のボーナス時期である今は、ご自身の家計のバランスシートを冷静に見直す絶好のタイミングです。
今回の最新データから見えてきたのは、「貯蓄4000万円=高年収」という単純な構図はもはや通用せず、資産運用の有無や「負債」の状況によって、同じ年収帯であっても大きな二極化が進行しているという現実でした。
家計の本当の体力を測るには、表面的な貯蓄額だけでなく、住宅ローンなどの負債を差し引いた純貯蓄額や、持ち家などの実物資産を含めて総合的に判断することが不可欠です。
まずはご自身の現在の資産と負債を正確に把握すること。
その上で、ボーナスの一部を投資や貯蓄に回すなど、自分に合った無理のない資産形成戦略を練ることが、「貯蓄4000万円」への着実な第一歩となるでしょう。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」
- 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編-2025年(令和7年)-第8-11表<貯蓄・負債>貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(二人以上の世帯・勤労者世帯)」
- ソニー損害保険株式会社「2026年夏のボーナス&お小遣い事情」(2026年)
- 株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
6.1 【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
6.2 【ご参考】年間収入とは
総務省統計局の「家計調査」における「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の収入(税込み収入)です。以下1~6の収入の合計金額となっています。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与等)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費等を除く。)
3. 内職年間収入(材料費等を除く。)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具等の材料費、営業上の諸経費等を除く。)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入等)
6. 現物消費の見積り額