8月から10月にかけては、年金にまつわる動きが続く時期です。8月に定期支払があり、9月ごろには年金生活者支援給付金の請求書が新たに対象となる人へ届き、次の支払日は10月15日にやってきます。
公的な給付金には、対象になれば自動的に案内が届くものもあれば、自分で申請しなければ1円も受け取れないものも数多くあります。しかも制度は現役世代向け・シニア向け・共通と多岐にわたり、すべてを把握している人はほとんどいません。
そこで本記事では、シニア世代が対象となる給付金のうち「申請しないと受け取れないもの」に絞って、老齢年金に上乗せされる2制度と、雇用保険に関連する3制度を整理します。あわせて、2028年4月に控える遺族年金の見直しについても確認していきます。
なお、シニア向けの公的給付金と老齢年金生活者支援給付金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 65~69歳の就業率は男性62.8%・女性44.7%。就労と公的年金が老後を支える2本柱になっている
- 加給年金は配偶者分が年24万3800円、これに最大17万9900円の特別加算が上乗せされる
- 雇用保険にも再就職手当・高年齢雇用継続給付・高年齢求職者給付金という3つの「要申請」制度がある
1. 長寿化社会におけるシニアの仕事と年金の重要性
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、65~69歳の就業率は男性62.8%・女性44.7%です。70~74歳でも男性43.8%・女性27.3%が仕事を続けています。
2014年と比べると、65~69歳は13.5ポイント、70~74歳は11.1ポイント上昇しており、年齢を重ねても働き続ける人は着実に増えています。
一方で、60歳以降は給料が下がるケースが多く見られます。また、現役時代のように希望どおりの仕事に就けなかったり、健康上の理由で働き続けることが難しくなったりすることもあるでしょう。
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.13年です。65歳時点の平均余命で見ると男性19.47年、女性24.38年となっており、65歳から20年前後の暮らしを支える必要があります。老齢年金世代にとって、「公的年金」と並んで「就労」が長い老後を支える重要な柱となっている理由がここにあります。
次の章以降では、シニアを対象とする給付金や手当のうち申請しないと受け取れない「公的年金に上乗せされるお金」と「雇用保険関連のお金」を、順に整理していきます。
2. 【要申請】老齢年金に上乗せで受け取れる2つの制度
老齢年金を受給している方が一定の要件を満たす場合に、本来の年金にプラスして受け取れる2つの制度について解説します。
2.1 制度1:加給年金
「加給年金」は、厚生年金に20年以上加入していた方が65歳になった際、生計を維持している「年下の配偶者」や「子ども」がいる場合に加算される制度です。いわば、年金版の「家族手当」のような役割を持っています。
加給年金の支給条件
次のタイミングで、「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合に、年金へ上乗せされます。
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)、退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受給する権利がある場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受給している場合、配偶者加給年金額は支給停止されます。受給する権利があれば、実際に受け取っていなくても支給停止の対象となる点には注意が必要です。
2026年度の加給年金額
2026年度の加給年金額(年額)は、次のとおりです。
- 配偶者:24万3800円
- 1人目・2人目の子:各24万3800円
- 3人目以降の子:各8万1300円
出所:【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
さらに、老齢厚生年金を受給している人の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に3万6000円から17万9900円の特別加算額が上乗せされます。最も手厚いのは昭和18年4月2日以後生まれの方で、特別加算額は17万9900円です。
振替加算の仕組み
配偶者が65歳になると加給年金は終了しますが、一定の要件を満たせば、今度は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」という形で一定額が引き継がれます。加給年金が打ち切られて終わりではない、という点は覚えておきたいところです。
2.2 制度2:老齢年金生活者支援給付金
「老齢年金生活者支援給付金」は、老齢基礎年金を受給している方のうち、所得や世帯収入が一定基準以下の場合に、生活の底上げを目的として支給されるものです。年金本体とは別の法律に基づいて支給される「給付金」という位置づけになります。
老齢年金生活者支援給付金の支給条件
支給の対象となるのは、次の条件をすべて満たす人です。このうち1つ目と2つ目については、LIMOの記事「年金に上乗せでもらえる「年金生活者支援給付金」とは?対象者・給付額・申請方法を解説」で次のように整理されています。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
出所:年金に上乗せでもらえる「年金生活者支援給付金」とは?対象者・給付額・申請方法を解説
3つ目は前年の収入に関する条件です。日本年金機構によると、前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であることが要件となります。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
老齢年金生活者支援給付金の基準額
2026年度、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円で、前年度より3.2%増額されました。この基準額をもとに、保険料の納付状況などにより給付金額が算出されます(下記①と②の合計額)。
老齢年金生活者支援給付金の計算式
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額)= 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額)= 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
※保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わります。
2.3 【シミュレーション】加給年金は、夫婦の年齢差でいくら変わるのか
加給年金は「配偶者が65歳になるまで」という期限つきの制度なので、夫婦の年齢差がそのまま受け取れる総額を左右します。配偶者加給年金額24万3800円に、特別加算の最大額17万9900円(昭和18年4月2日以後生まれ)を加えた年額42万3700円を受け取れると仮定して、年齢差ごとの総額を試算してみます(受給額が改定されないと仮定した、一定の前提を置いた試算です)。
- 年齢差3歳(夫65歳・妻62歳):42万3700円×3年=約127万1000円
- 年齢差5歳(夫65歳・妻60歳):42万3700円×5年=約211万8000円
- 年齢差10歳(夫65歳・妻55歳):42万3700円×10年=約423万7000円
年齢差が5歳あれば、加給年金だけで累計200万円を超える計算になります。それでいて、この制度は自動的に支給されるものではありません。年齢差のあるご夫婦ほど取りこぼしたときの損失が大きくなるということです。なお、配偶者にご自身の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)の受給権がある場合は支給停止となるため、事前の確認が欠かせません。
3. 【要申請】雇用保険に関連する3つの給付金
次に、働き続けるシニアが知っておきたい、就労に関連する給付金や手当を見ていきます。
シニアの就労を支援する制度は整いつつありますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があります。また、就職活動や就労の継続が、若い頃のようにスムーズに進む人ばかりではないでしょう。ここでは、雇用保険に関連する制度を3種類紹介します。
3.1 制度1:再就職手当(65歳未満対象)
再就職手当は、早期の再就職を促進するための手当です。「失業から再就職まで」「失業から事業開始まで」の期間が短いほど、支給額が多くなる仕組みになっています。
再就職手当の支給条件
- 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
再就職手当の給付率について
手当の額は、就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数によって、給付率が変わります(1円未満の端数は切り捨て)。
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の70%」
出所:【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
なお、再就職手当を受け取り再就職先で6カ月以上雇用され、かつ再就職先での6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも少ない場合は「就業促進定着手当」の対象となります。
3.2 制度2:高年齢雇用継続給付(60歳~65歳未満対象)
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の人が就労を続ける際、賃金が60歳到達時よりも減少した場合に支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付の支給条件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
高年齢雇用継続給付の支給率について
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%
老齢年金を受給しながら、厚生年金に加入して「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合には注意が必要です。在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する金額が支給停止となります。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%
3.3 制度3:高年齢求職者給付金(65歳以上対象)
高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が失業した際に支給される給付金です。
高年齢求職者給付金の支給条件
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記のすべての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
高年齢求職者給付金の給付額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
出所:【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
なお、65歳未満が受け取る「失業手当」は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されるのに対し、この高年齢求職者給付金は一括で支給されます。







